気温差が原因で体調不良に?寒暖差アレルギーの対処法について医師に聞きました!
美人百花デジタル / 2021年10月21日 20時0分
寒い外とあたたかい部屋を行き来しているうちになんだか鼻炎のような反応が……。これは寒暖差アレルギーかもしれません。治療法や、危険性について「うるおい皮ふ科クリニック」院長の豊田雅彦先生に話を聞きました。
寒暖差アレルギーとはどのような症状か教えて下さい
温度差が刺激となって鼻の粘膜の血管が広がり、粘膜が腫れることで引き起こされる症状です。鼻水、くしゃみ、鼻づまりのように花粉症を含むアレルギー性鼻炎に類似した鼻の症状が代表的です。他にも、皮膚や喉のかゆみを感じることもあります。
その他、不眠、イライラ感、倦怠感、食欲低下などの自律神経失調症や体調不良に似た症状が伴います。寒暖差アレルギーではアレルギー性鼻炎と異なり、眼のかゆみ、充血、涙などの眼症状を伴いません。アレルギーと言われますが、正式病名は「血管運動性鼻炎」といい、アレルギーの原因となるアレルゲンによるものではないので、正確にはアレルギーの病気ではありません。
寒暖差アレルギーの原因を教えて下さい
寒冷刺激に伴う自律神経のバランスの乱れにより、鼻の神経が過敏になり、鼻粘膜の血管が誤作動を起こすことが原因です。内臓機能や血管の働きは、交感神経と副交感神経に分けられる自律神経のバランスによりコントロールされています。寒暖差アレルギーの症状は、温度差が7度以上になると出やすいと言われています。季節の変わり目で朝晩と日中の気温差が大きい季節や、室温と外気温の差が大きい環境で生じやすいと思われます。
鼻の粘膜にある血管の収縮・拡張も自律神経によってバランスが保たれていますが、寒暖差が大きいと鼻の粘膜の血管がその環境に対応できなくなり症状があらわれます。鼻症状はアレルギー性鼻炎や風邪でも起こり得ますので類似点も多くあります。しかしアレルギー性鼻炎では花粉、ダニ、ホコリ、カビなどの、症状の原因となり得るアレルゲンによる免疫反応、風邪ではウイルスによる感染とそれぞれはっきりした原因がありますが、寒暖差アレルギーにはアレルゲンやウイルスは関与していません。
寒暖差アレルギーの治療法を教えて下さい
(1)体感する温度差をできるだけ小さくする
外出時などは、羽織れる衣類などを持ち歩き、暑い時は薄着に、寒いと感じれば防寒対策を取ることが必要です。室内でのエアコン対策にはひざ掛けの利用も有効です。
(2)首・手首・足首をあたためる
血流の低下は鼻粘膜の過敏性を増長させるので、皮膚表面に比較的太い血管が通っている、いわゆる「3首」の保温に留意して下さい。「首」はスカーフやマフラーで、「手首」は手袋、「足首」は靴下など、身につけるものを工夫しましょう。
(3)マスクを着用する
鼻腔に冷気を吸い込んでの寒暖差を抑制するので効果的です。
(4)自律神経のバランスの乱れを治すおよび乱れる原因を避ける
不規則な生活などで自律神経のバランスの乱れを引き起こす要因を避けましょう。38~40度のお風呂にゆっくり入浴したり、適度な有酸素運動やストレッチにより体をほぐして自律神経のバランスを整えましょう。不規則な生活習慣を見直して十分な睡眠を取る、ストレスを溜め込まないようにするなどを心がけましょう。他にも食生活を見直すことが大事です。血行を促進させるショウガやニンニク、ビタミンEを多く含む食物(ナッツ類、アボカド、うなぎ、かぼちゃなど)は積極的に摂取していきましょう。
(5)アレルギー性鼻炎の治療を行う
アレルギー性鼻炎の方は鼻の知覚神経が過敏になりやすい状態にあるため、寒暖差アレルギーも起こりやすくなります。季節性や通年性を問わず、アレルギー性鼻炎の治療を併せて行うことも大切な場合があります。
(6)改善が見られない場合は医療機関へ
先ほどまで紹介した方法を試しても改善が見られない場合は医療機関へ。重症の方に対して、レーザー治療、神経切断手術などが行われる場合もあります。直接医療機関を受診して説明をよく聞き、メリットデメリットを慎重に天秤にかけて決定してください。
寒暖差アレルギーの危険性を教えて下さい
最近は喘息やアレルギー性鼻炎の方が寒暖差アレルギーを併発することも多く、空気の乾燥が進むことで症状が悪化することがあるので、症状がおさまらず、日に日にひどくなる重症例が増えています。また、季節の変わり目の度など、1年に何回も症状を繰り返す例も増えています。鼻症状を繰り返すことで、症状が悪化する可能性もあります。
寒暖差アレルギーは自律神経の乱れによることが主原因なので、いわゆる「自律神経失調症」の予兆であるともいえます。自律神経は全身に分布しているので、自律神経失調症の症状は非常に多く、しかも原因がすぐには分かりにくかったり、複数の症状が出ることがあります。自律神経失調症の症状が伴う場合には寒暖差アレルギーも重症化する危険性があります。
その他、何かアドバイスがございましたら教えてください
寒暖差アレルギーの症状は、温度差がほとんどない季節や環境であれば自然と落ち着く場合がほとんどです。寒暖差アレルギーは人にうつるものではなく、よほど重篤な症状ではない限りすぐに病院へ行く必要はありません。栄養バランスのとれた食事や適度な運動、十分な睡眠といった健康的な生活で自律神経のバランスを整え、寒暖差による刺激に左右されない症状が出にくい代謝の良い自律神経のバランスのとれた体づくりを目指しましょう。
教えてくれたのは
「うるおい皮ふ科クリニック」院長 豊田雅彦先生
1964年、長野県生まれ。
1990年、富山医科薬科大学(現・富山大学)医学部卒業。同大学皮膚科学講座に入局・研修医。
1996年、米国ワシントンDCで開かれた国際会議である研究皮膚科学会議年次総会で「色素細胞と神経の接着」にて最優秀研究賞を共同受賞。
2002年、パリで開かれた国際皮膚科学会で「アトピー性皮膚炎のシクロスポリンによるかゆみの抑止効果機序」の発表にて臨床部門最優秀賞を単独受賞。
2004年、米国マイアミで開かれた国際皮膚科学会で「抗アレルギー剤がかゆみを抑える新たなメカニズム」の発表にて研究部門最優秀賞を単独受賞。
2005年、うるおい皮ふ科クリニックを開業。
かゆみをなくすことをライフワークに掲げ、患者さんが希望を持てる診療に日々尽力。現在までに2,000以上の医学論文・医学専門書を執筆。また、国内外で年間最多250以上の講演会・学会発表・保健所指導を行う。受診患者の99%(年間約3万人)の症状を軽減〜消失に導いた、世界有数の皮膚病・かゆみのスペシャリスト。
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