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フランス人のヴィンチが認めた暴走族最高のヒットとは!? ~木下隆之の、またがっちゃいましたVol.42~

バイクのニュース / 2020年4月15日 17時0分

日本人の父とフランス人の母を持つ、フランス生まれフランス育ち、1度も日本に来日したことがないハーフの友達がいる。彼の日本製スクーターには、字面としては決して悪くはないステッカーが貼られている。

■クールでかっこいい日本語の文字とは!?

 古くからの、フランス人の友人の名は「田中敏知」という。国籍はフランス。日本人の父とフランス人の母を持つ。フランス生まれフランス育ちのハーフだ。

 DNA的には日本色が濃い。背は低く、黒髪で彫りも浅い。目だけがギョロっとしているけれど、漫才師のボケ担当が似合いそうな風貌なのだ。そんな日本的風態で和名であり。さらには流暢に日本語を操るから、パスポートを見なければ、誰も彼がハーフとは思わないだろう。

 名前がコテコテの日本名なのは、両親ともにパリにアトリエを持つ画家であることと関係がある。父親は若い頃、画家を目指して渡仏した。そこで画家の母親と知り合い結婚。フランスに永住した。息子には日本人の精神を知っていてほしいと願い、「田中敏知」と名付けた。パリの日本人学校に通わせ、家庭内では100%日本語を貫き通したという。

「田中敏知」は「たなか・びんち」ではなく、「タナカ・ヴィンチ」。「レオナルド・ダ・ヴィンチ」の「ヴィンチ」である。芸術に造詣が深い「ダ・ヴィンチ」から拝借したに違いない。「敏感」の「敏」に「知る」としたのはおそらく当て字だろう。そう言うと敏知くんは気色ばんだ。

「いえいえ、知に対して敏感になれという気持ちを込めて名付けてくれました」

 それでも、一度も来日したことがないという。日本語は流暢なのに、魂はフランスにある。時には日本とフランスの優劣をめぐって口論になることもあった。僕が初めて知り合った、プライドが高い傲慢なフランス人は敏知くんであった。ついぞ英語は使わなかった。

相撲の番付表に用いられる江戸文字根岸流がお気に入り

 ちなみに敏知くんとは、僕がフランスにレース遠征した時、通訳件コーディネーターとして帯同してくれたことが縁で友達になった。敏知くんと気心が知れたのは、彼がバイクマニアだったからだ。日本製のスクーターを乗り回しており、ペタペタと日本のステッカーを貼っていた。そのほとんどが、右翼か暴走族が好む漢字のメッセージであり、書体も相撲の番付表に用いられる江戸文字根岸流である。

「極悪非道」

「夜露死苦」

「極悪」

「悪趣味だね~」

 僕がそういうと、不思議そうに首を傾げた。

 敏知くんは暴走族などではない。高学歴で日本語を器用に操る通訳件コーディネーターである。だが、父親の血を受け継いでいるから、アートセンスは際立っている。そんな彼からすれば、暴走族の文字はアートそのものなのだ。そういえば、タトゥーで奇怪な漢字を彫り込むフランス人も少なくない。

「ひどい文字だったことは知っているよ。でもこっちではカッコいいとされている。“台所”とか、“右折”なんて彫っているやつよりはマシだろ?」

 そういって笑った。

「しかも都合がいいことに、フランス人の母親は「夜露死苦」の意味を理解できないからね。とがめられないんだよ」

 ヴィンチが認めた暴走族センス。字面としてはたしかに悪くはない。

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