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世界初のスーパーチャージドエンジン搭載!! カワサキ「Ninja H2」とはいかにして登場したのか?

バイクのニュース / 2020年4月25日 11時0分

スーパーチャージドエンジンを搭載するカワサキ「Ninja H2」は、川崎重工がグループの技術を結集して作り上げた、カワサキ独自の新開発バイクです。登場と同時にオーナーとなった小林ゆきさんが、当時の様子を語ります。

■「次世代Ninja」の登場、かつてないジャンルを作ったカワサキ

 2014年9月1日、カワサキは突如としてYouTube上に謎のティーザー動画を公開しました。わずか38秒の動画は、全世界のバイクシーンを震撼させるものでした。

『Ninja H2: Vol.1 BUILT BEYOND BELIEF(信念を超えて造る)』、そうタイトルが付けられた第1弾の動画は、黒い画面にぼんやりと流線型の何かが見える、ただそれだけの思わせぶりなものでした。

 どうやらモデル名は「Ninja H2(ニンジャ・エイチ・ツー)」となるらしい……。発表は9月30日のドイツ・ケルンで行なわれる国際バイクショー「INTERMOT(インターモト)」らしい……。

 たったそれだけの情報しかないティーザー動画は、1989年にシルエットだけの雑誌広告でセンセーショナルに登場した「ZEPHYER(ゼファー)」のティーザー広告を彷彿とさせました。

 ゼファーはのちに大ベストセラーとなっただけでなく、レーサーレプリカ全盛の時代に、あえてスペック至上主義ではなく「ネイキッド」というジャンルを再定義させました。

 こうしたゼファー登場のやり方を踏襲するニューモデル、カワサキが並々ならぬ力を入れていることは“ティーザー”という手法をとったということからも感じ取れました。

 カワサキが何やらスペシャルマシンを開発している“らしい”という噂は、それまでも何度となく流れていました。

 カワサキには1982年発売の「750TURBO」という実績があることから、エンジンはターボなのではないか? ネーミング的に「H2(エイチ・ツー)」とは1968年に発売された「500SSマッハIII(H1)」の流れをくむことから3気筒なのではないか? など……。

 実際には、2013年の東京モーターショーで、ひっそりスーパーチャージャーのエンジンが発表されていたのです。しかし当時、それほど話題にならなかったと記憶しています。

 スーパーチャージャーを積んだバイクを市販なんかできるわけがない、と誰もが思い込んでいたのではないでしょうか。どちらかと言うと、実車の走行シーンの映像もないコンセプトモデル、3輪電動ビークル「J」の方が話題になっていました。

2013年当時は電動バイクに多くの注目が集まった。写真は三輪電動ビークル「J」を眺めるTESRA(テスラ)の関係者たち

 さて、H2の公式ティーザー動画の公開は、2014年9月1日から断続的にチラ見せしながらvol.24まで続きました。

 H2のティーザー動画第1弾でうっすら見せた「流線型の何か」とは、いま見ればタンクの上部とわかります。しかし、H2の全容が明らかになる前はそれがどこの部位なのかすら、わかりませんでした。それほど、H2のデザインは独創的でした。

 ティーザーで徐々に明らかになったことは、エンジンが新設計のスーパーチャージャー付きエンジンであること、フレームも新設計のトラスフレームであること、そして何より衝撃的だったのは、2014年9月30日からドイツ・ケルンで始まる国際バイクショー「INTERMOT(インターモト)」で先駆けてデビューするのが、クローズドコース専用モデル「Ninja H2R」から、ということでした。

 思い出してみてください。2014年以前のニューモデル界隈はどんな雰囲気だったのかを……。

 2000年ごろからのスーパースポーツブームは一段落していました。モタードやストリートファイター系のブームも一段落、ツアラー系はパッとせず、カワサキは「GTR」をどうするのか、「ZZ-R1400/ZX-14」をどうするのか、判然とせず。

 2014年の「INTERMOT」と、それに続くイタリア・ミラノで開催の国際バイクショー「EICMA(エイクマ)」で発表されたニューモデル群をあらためて振り返ってみると、アドベンチャー系とネオクラシック系のブームの兆しがありました。

 また、「ブラフシューペリア」や「マチレス」など、かつてあったブランドによる超高級スペシャルモデル系の発売が注目されつつある時代でした。

 H2もホンダ「RC213V」もそのジャンルに入るかもしれませんが、RC213Vは既存のレーサーを公道仕様にしたモデルなので、そもそもH2と存在意義が異なります。

 そのような時代背景の中で、突如として登場したオール新設計のニューモデル「Ninja H2」と「H2R」。とくにH2Rは、クローズドコース専用モデルだがレース向けではない、という情報に大いに頭が混乱したものです。

2014年のEICMA会場で公開された「Ninja H2R」のストリップ

 だって、大排気量のスポーツモデルなのに、レースしないけどサーキットを走るためのニューモデルをわざわざ大企業が量産するだなんて、これまでどのメーカーも取り組んだことのないジャンルだったのですから。

 ティーザーやネットに溢れた事前リーク情報を眺めるにつけ、これは私(小林ゆき)が長いこと探し求めていた「次世代Ninja」そのものなのではないか? と思い至るようになりました。

 そして、来るべき市販公道モデルH2の登場をひと目見ようと、予定にはなかった2014年11月のミラノ行きチケットを予約したのです。

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