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岩場も公道も走るオフロード競技 「エンデューロ」バイクの特徴とは?

バイクのニュース / 2020年5月3日 11時0分

“オフロードバイク”というカテゴリーのなかで、岩場や林間、急坂も駆け抜け、公道も走ることができる「エンデューロ」バイク。どのような特徴があるのでしょうか?

■オフロードを速く、楽に、快適に走れる!? エンデューロバイクの特徴とは

“オフロードバイク”と言うと、多くはモトクロスの競技車両であるモトクロッサーをイメージするかもしれません。そのモトクロスのことも「崖を登ったりする競技(=トライアル)」と認識している人が多いのも現実。そして世間ではあまり知られていない「エンデューロバイク」の世界もあります。なかには公道も走れる車両もあり、それでいて岩場も林間も急坂も走破してしまう、究極のオフロードバイクです。近年の進化が目覚ましいエンデューロモデルをご紹介しましょう。

 エンデューロバイクの分かりやすい特徴としては「長距離、長時間を走行するため燃料タンク容量がモトクロッサーよりも多い」「林間など低速域やガレ場、登り、下りなどを走るため、扱いやすいエンジン特性となっている」「大きな衝撃よりも、細かい衝撃を吸収するための、柔らかめのサスペンションが好まれる傾向にある」などが挙げられます。

 と、その前に、エンデューロ用バイクを説明するには競技内容を説明したほうが分かりやすいですね。外観はモトクロッサーと似ているのに、何が違うのでしょうか?

 1913年に『インターナショナル・シックスデイズ・トライアル(ISDT)』がイギリスで始まり、以後トライアル競技と区別するため、1980年から『インターナショナル・シックスデイズ・エンデューロ(ISDE)』と呼称を変え、現在も世界を代表するオフロードバイクレースとして開催されています。これはいわゆる「オンタイムエンデューロ」と呼ばれるカテゴリーです。

 このISDE会場では、各国から様々なバイクが集結します。欧州ではKTM(オーストリア)、ハスクバーナ(起源はスウェーデン、現KTMグループ傘下)、GASGAS(起源はスペイン、現KTMグループ傘下)、ベータ(イタリア)、tm(イタリア)、シェルコ(フランス)などが代表的なメーカーです。

 一方、日本メーカーではホンダ、ヤマハ、カワサキがエンデューロ&クロスカントリー・ファンモデルの現行型をラインナップしています。

国内で唯一現行の2ストロークモデルをラインナップするヤマハの「YZ125X」は、フレームやキャブレターは最新型ではないものの、扱いやすく人気の車種

 レースには、ゲレンデなどで一斉にスタートして順位を競う「クロスカントリー」と、1周の長大なコースの中で、タイムを競う区間の「テスト」(ラリーで言う“SS”)、移動区間の「ルート」(ラリーで言う“リエゾン”)が設けられ、自分に課せられた時間通りに走る「オンタイムエンデューロ」が2大カテゴリーとなっています。

 近年大人気の、過激なセクションでの走破性を競う「ハードエンデューロ」も注目が集まっています。また、モトクロスコースを流用した、比較的セクションが優しく、耐久モトクロス的な「サーキットエンデューロ」などもあります。

 オンタイムエンデューロの中には、一部公道を使うレースもあるので、ヘッドライトやウインカーなどの保安部品を装備する車両もあります。現在公道走行可能なモデルは欧州メーカーに多く存在しますが、国内メーカーには、残念ながらありません。

 またタイヤも、オンタイムエンデューロは公道走行可能な、ブロック高13mm以下のものを義務付けられることが多く、これは路面へのダメージを最小限にとどめるというFIMの規定にのっとったものです。

 1990年代に日本でブームを築いたエンデューロは、アメリカで言うところのクロスカントリーやヘアスクランブルレースのように、一斉にスタートして順位を決めるものです。南から北まで、全国各地のゲレンデや特設、常設コースで様々なレースイベントが開催されました。

 そのなかでも、現在日本で最大人気を誇るのが『ジャパン・ナショナル・クロスカントリー(JNCC)』です。これはアメリカで開催されている『グランド・ナショナル・クロスカントリー(GNCC)』の日本版とも言えるクロスカントリーレースです。

近年開催されているエンデューロレースでは、往年のトレールモデルやレーサーで出場するライダーの姿も。ヤマハ「DT」やホンダ「XR」、ヤマハ「セロー225」、スズキ「RMX」など現役レーサーに負けず劣らない激走を見せている

 分かりやすく言えば、欧州で始まったエンデューロは、オンタイムルールを課すことでマシンの耐久力、整備力、ライダーのライディングスキル、管理能力や体力などを試す競技として成長してきました。

 長年の伝統がありますが、伝統が全てというわけではなく、レギュレーションは時代に合わせて変わってきています。

 一方、アメリカで発祥したクロスカントリー、ヘアスクランブルは「オフロードコースで誰が一番速いか決めようぜ!」的な、一斉スタート方式のレースです。ベース車両は同じでも、走るフィールドに合わせてセッティングやアフターパーツが変わってくるわけです。

 面白いのは、モトクロス=短距離、エンデューロ=長距離とは一概に言えないことです。

 長距離、長時間走行することに違いないのですが、オンタイムエンデューロ、つまりヨーロッパで行なわれるエンデューロは、決められた区間内のテストでのタイムアタックによる順位付けを行なうことから、日本人が一般的にエンデューロと認識しているクロスカントリーよりも、スプリント色が強いのです。

 そのため、海外のトップライダーはモトクロッサー並みの硬いサスペンションを好み、コンフォート性(疲れないこと)よりも、一発のタイムを求める傾向にあります。また、それを実現するライディングスキルがあるということでもあります。

 国内も同様で、JNCC(クロスカントリー)とJEC(オンタイムエンデューロ)で、セッティングを変えるトップライダーも少なくありません。

KTM「300EXC」は排気量300ccの2ストロークエンジンを搭載するエンデューロバイク。ハイパワーで大トルクを発生し、低速の粘りもあるエンジンはハードエンデューロで大人気

 1990年代のエンデューロブームでは、カワサキ「KDX」やスズキ「RMX」、ヤマハ「DT」、ホンダ「CRM」など、トレールモデルに保安部品を加え改良したモデルや、モトクロッサーにガード類を装着した車両が主流でした。

 エンデューロ専用モデル自体が少ない状況で、今でこそKTMは国内外のオフロードシーンでメジャーなメーカーですが、90年代半ばまでは、まだ一部の趣味人達の乗り物というイメージでした。現在は、前述したように、色々なメーカーから、優れたマシンが毎年発売されており、中古市場も合わせると非常に恵まれている時代と言えるでしょう。

 これからエンデューロやクロスカントリーをはじめたいという人は、JNCCなどレース会場に観戦に行くのも良いですし(レース前日の土曜日にはメーカーやショップが試乗会を開催していることが多い)、毎年開催されている「オフロードバイク大試乗会」などに参加してみるのも手かもしれません。

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