カワサキ「Ninja」ロゴに隠された謎 輪郭がギザギザなのはFAX送信の“ビロビロ”から生まれた!?
バイクのニュース / 2020年5月13日 11時0分
カワサキ「Ninja」と言えば、いまやカワサキのスポーツモデルの代名詞であり、現在はカワサキの多くのフルカウルをまとったスポーツモデルに冠付けられています。
■カワサキ「Ninja」ロゴの輪郭がギザギザな理由とは……
カワサキ「Ninja」と言えば、いまやカワサキのスポーツモデルの代名詞であり、現在はカワサキの多くのフルカウルをまとったスポーツモデルに冠付けられています。
この「Ninja」のネーミングは当初「GPZ900R」(1984年)の“ペットネーム(愛称)”として名付けられた、として知られています。しかし、アメリカではれっきとした正式な車両名として使われていました。北米ではGPZ900Rではなく「NINJA」が正式名称だったのです。
最初に「NINJA」のロゴがアメリカで商標登録されたのは、GPZ900Rが発売される少し前の1983年8月でした。
出願は1982年8月、商標登録出願年から考察すると、フラッグシップではなく軽快なスポーツモデルとして次世代の“ザッパー(Z1)”を目指したというGPZ900Rの開発当初から「NINJA」のネーミングが検討されていたことがわかります。
カワサキ「GPZ900R」(1992年 ZX900-A9)は日本仕様として最初から「Ninja」ロゴがついている
当時の背景には、アメリカで沸き起こっていた「忍者」ブームがあったようです。Ninja(=忍者)のキャラクターは、ショーン・コネリー主演の映画『007は二度死ぬ』(1967年)によって世界に知らしめられ、ショー・コスギ主演の映画『燃えよNinja』(1981年)からはじまる一連の忍者映画を発端として、1980年代初頭、アメリカに一大「Ninja」ブームを巻き起こします。
実際、最初に出願された「NINJA」のロゴを見ると、どことなくアメコミ風のコミカルな雰囲気があります。もし、この初代ロゴのままだったとしたら、カワサキを代表するスポーツモデルの総称として使い続けられたかどうか……。
最初に商標登録された「NINJA」のロゴ。現在とは大きく異なっている(米国特許商標局のTESS検索結果より。2020年5月7日閲覧)
ところで、現在使われているNinjaのロゴは、エッジ(輪郭)がギザギザした筆文字が特徴となっていますよね。このギザギザ、じつは国際FAX送信によって“ビロビロ~”と伸びてしまったのが発端なのだそうです。
以前、筆者(小林ゆき)がGPZ900Rの開発ライダーである衣笠明男さんにインタビューをしたときに、その顛末をうかがいました。
「USにニンジャのネーミングでいくぞゆうて、こちらの方からファックスしたらしいんですけどね。ファックスすると、昔ですから、こう字がずれるじゃないですか(笑)。そのときに、こっちの方がええじゃないか、というような話しで……」
当時の広報の青木さんも次のように語っています。
「日本からカッチリしたものを送ったら、ビロビロっと伸びてこういう感じになってしまったと……(笑)。
それがかえって好評だったということで、こういう字体になった」(雑誌『Clubman Ninja浪漫』P38より、1996年ネコ・パブリッシング刊)
初代ビロビロ「Ninja」ロゴは立体的に見せる影のような線が付いていた(米国特許商標局のTESS検索結果より。2020年5月7日閲覧)
この“ビロビロ「Ninja」ロゴ”そのものがアメリカで商標登録されたのは、GPZ900Rが発売されてからずっとあとのこと。1997年1月に申請、1998年6月に登録となっています。このときのロゴは立体的に見せる影のような線が加わっています。
2015年2月(2012年9月出願)の登録では、ロゴに付いていた影の線がなくなり、シンプルになりました。
商標登録されている現在の「Ninja」ロゴ (米国特許商標局のTESS検索結果より。2020年5月7日閲覧)
また「Ninja」のロゴは、バイクだけでなくありとあらゆるモノに対して商標登録がされています。
たとえば、ウォータークラフト(カワサキ的にはジェットスキー)、ボート、自転車、スクーター、ジュエリー、時計、腕時計、キーホルダー、傘、カバン、杖、アパレル、運動器具、クリスマスツリー、釣り竿、スキー、野球グローブ、スゴロク、サイコロ、花札、ラジコン……などなど。
このように、カワサキのブランドイメージを牽引する「Ninja」の冠を与えられたバイクのラインナップを見ると、次のモデルをはじめバージョン違いまで含め16機種にもなります(2020年5月時点)。
Ninja H2R
Ninja H2 CARBON
Ninja H2 SX SE+
Ninja H2 SX SE
Ninja ZX-10RR
Ninja ZX-10R SE
Ninja 1000SX
Ninja 1000SX
Ninja ZX-6R
Ninja 650
Ninja 400
Ninja 250
初代ニンジャGPZ900R乗りとしては「ニンジャのどれに乗ってるんですか?」なんて聞かれると複雑な気分になったりもしますが、バイク乗りなら誰もが知っているカワサキを代表するスポーツバイクの概念に昇華したというのは、誇らしいことだとも感じています。
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