70年代に栄華を誇ったカスタム「ディガースタイル」 その成り立ちと日本に与えた影響とは
バイクのニュース / 2020年5月25日 11時0分
米国のカスタム・シーンで生み出されたスタイルのひとつには「ディガー」というものが存在しています。いったいどのようにして生み出されたカスタム・スタイルなのでしょうか。
■レース用バイクをルーツに持つディガー
ひと昔前、「かつての電話帳ほどのブ厚さのカスタムパーツカタログ」が毎年のように複数のメーカーから発行され、その気になりさえすればベースマシンが無くても一台のバイクを創り上げることが出来るハーレーダビッドソン・カスタムの世界ですが、大まかに分けても様々なスタイルのバリエーションが存在します。
1969年に公開され、世界中でヒットした映画「イージーライダー」のイメージもあり、ハーレーのカスタムといえば多くの方が「チョッパー」を思い浮かべるのでしょうが、その後、当時として「新たな概念」から生まれたカスタム・スタイルが「ディガー」です。
ステム位置が低いロー&ロング・スタイルの、このカスタムは0-400m(1/4マイル)の直線で競われる「ドラッグレース」のレース用バイクが、もともとのモチーフとなっており、スタート時にリアタイヤを空転させ、タイヤを溶かし、グリップを向上させる「バーンナウト」という動作がカスタム・ジャンル名の由来となっています。リアタイヤが路面をDig(ディグ)する、つまり“掘る”ことから「ディガー」という名がつけられたワケです。
とはいえ、この「ディガー」。まるっきりレース用バイクのような姿ではなく、60~70年代に装飾性を高め、絢爛豪華かつスタイリッシュになった一連のロングフォーク・チョッパーの流れを汲むものとなっています。
■ディガースタイルの特徴は?
スタイルの特徴としては先ほど述べさせて頂いたとおり、低く長いシルエットに美しいペイントワークやロケットタンクやカットスポーツスタータンク、フリスコフェンダーなどで車体の装飾を施し、ターボやスーパーチャージャーなど「当時として未来志向」な装備を取り付けることも一つの特徴となっています。
1970年代、“ベイエリア”を舞台にしのぎを削ったA・ネス氏とR・シムズ氏。当時の最先端の技術を注ぎ込んだ彼らが生み出したカスタムが日本のビルダーたちにも多大な影響を与えます。昨年、残念ながらA・ネス氏は闘病の末、お亡くなりになりましたが、間違いなくカスタム史に刻まれる偉大な功績を残した人物です
「ディガー」というカスタム・ジャンルを語る上で欠かすことの出来ない人物に「アーレン・ネス」と「ロン・シムズ」という二人のカスタムビルダーがいますが、その彼らは1960年代後半から1970年代後半にかけ、北カルフォルニアのサンフランシスコ、そこにあるサンフランシスコ湾の対岸にあたる「オークランド」という街で競い合うように「ディガー」を製作しました。
火花を散らすかの如く、次々と作品を生み出していったことが70年代後半から80年代のカスタム・シーンの牽引に繋がったといっても過言ではありません。
ちなみにアーレン・ネスの店「アーレンズ・モーターサイクルアクセサリーズ(現在はアーレン・ネスモーターサイクル)」とロン・シムズの店「ベイエリア・カスタムサイクルズ」(現在はシムズ・カスタムサイクルズ)は現在でも12マイルほどしか離れていません。
以前にネスの店がサンレアンドロという街にあった時代はヘイワードという街のシムズの店と5マイルほどの距離だったので、まさしく「隣町」にあるカスタム・ショップ同士の「しのぎ合い」がアメリカン・カスタムシーンの中心であったことが分かります。ちなみに彼らが生み出した「ディガー」というカスタム・ジャンルは別名で「イーストベイ・スタイル」とも云われています。
そのディガーですがベースとしてハーレーのスポーツスターが用いられることが多く、フロントフォークはあくまでも短め。リアセクションはサスペンションの無いリジッドかスイングアームにリジッドバーを装着したものが多いのですが、やはりここら辺はドラッグレース用バイクが元ネタゆえ。それにプラスしてチョッパーの装飾性を取り込んだものと考えれば、あながち的外れではない論評だと思います。
ともかく既存の価値観に囚われない、同じ感覚を持つ「好敵手」が互いに刺激を与え、生み出していったものが「ディガースタイル」です。その絢爛豪華さや、当時として最先端の技術を注ぎ込んだギミックの数々は並みいるカスタム・スタイルの中でも「派手さ」において随一といっても過言ではありません。
またアーレン・ネスとロン・シムズというビルダーたちが生み出したカスタムは、ここ日本のビルダーたちにも大いに影響を与え、それが今のカスタム・シーンに繋がっているのですが、ともすれば日本のカスタムの源流を遡れば80年代の「ベイエリア」に行き着くのかもしれません。
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