クレイジーを超越してリスペクト!! 知られざるレーシングサイドカーの世界 ~木下隆之の、またがっちゃいましたVol.49~
バイクのニュース / 2020年6月10日 17時0分
レーシングドライバーとラリードライバー、どちらも命がけでレースに挑むクレイジーな感覚を持ち合わせていますが、ドライバーよりもライダー、さらにはレーシングサイドカーの世界は、それを超越したリスペクトすら感じると言います。
■命がけの勝負の世界で、相手を信じることができるのか……
ライダーの“クレイジー度”議論は、侃侃諤々止まることを知らない。もともとはレーシングドライバーとラリーストのどちらが命知らずなのか、といった酒宴の最中の話だったのだが、ライダーに勝るものはないとの結論に達した。
それがさらに発展して、地上数センチで疾走し、ハンドルやスロットル操作をライダーに預けるサイドカーのパッセンジャーこそ勇者だ、となった。
だが、その後も様々な意見が届いた。なかには自らサイドカーのパッセンジャーを経験した者の話から、現実を知ることになったのだ。サイドカー未経験でありながらに執筆した自分を恥じたのである。
聞けば、ライダーも命がけだと言う。というのも、ライダーもパッセンジャーも同様に、お互いの息が一瞬でもずれると即クラッシュ、と言うのだ。
ライダーが操縦するタイミングを見計らって体重移動をする。時には路面スレスレをかすめることもある。ヘルメットを地面に擦り付けるようにして200km/hオーバーで疾走する。
ライダーにすべてを委ねるパッセンジャーこそクレイジーだと思っていたら、じつはライダーもパッセンジャーにすがっているのだと言う。
パッセンジャーが意図したタイミングで荷重移動してくれるであろうと信じて、コーナーに飛び込んでいく、と言うのだ。
レーシングサイドカーは、ライダーとパッセンジャーが一心同体となってマシンを走らせる(2019年マン島TTレース)
マシンは3輪で2輪のバイクのようにバンクしない。コーナリングの際はパッセンジャーが体重をイン側に移動させることで、ギリギリのバランスが保たれる。パッセンジャーがそのタイミングで体重移動してくれることを信じてコーナーに挑むというのだから、パッセンジャーもライダーも一心同体。危険度も同様なのである。
一瞬でも間違えばバランスを失い、とんでもないことになるのは目に見えている。クラッシュを覚悟で攻めるのだから、どっちもどっちである。
そう考えたら、僕(筆者:木下隆之)のようなレーシングドライバーなど甘いと言わざるをえない。たった1人でのドライブだから、全ては自己責任である。
もともと他人が信用できないからレーシングドライバーになった。相手を信じることのできるサイドカー乗りには頭が上がらない。
相手を尊重するという意味で、レーシングドライバーよりも格段に人格者なのだろうと思う。
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