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スポーティで上質 ヤマハのATスポーツモデル「TMAX560」が作り上げた独特の世界観とは?

バイクのニュース / 2020年6月12日 11時0分

2020年にモデルチェンジとなったヤマハのオートマチックスポーツ「TMAX560」はどのような走りを見せてくれるのでしょうか。

■「TMAX」シリーズの世界観、走りもスタイリングも唯一無二の存在に

 ウエッジシェイプを基調にしたヤマハ「TMAX(ティー・マックス)」のカタチは、世界中のファンが、プレミアムでスポーティ、見ただけでうっとりする、2000年の登場以来代々「TMAX」が持っていたものです。期待の新型「TMAX560 ABS」(2020年型)は、日本の道でどんな走りを見せてくれるのでしょうか。

 予習として、「TMAX」が誇る高い人気の源泉が、ATスポーツとしてデザインされた車体レイアウトにあると言って過言ではありません。車体中央にエンジン、燃料タンクなど重量物を配置することで、スポーツバイクとして欠かせない理想的な前後重量バランスを手に入れています。

 また「TMAX」のフロントフォークは、通常のモーターサイクル同様、アッパーブラケット、ロアブラケットを介して車体に支持することで、高い速度域までしっかりした剛性感を持ち、まさにスポーツバイクのそれを目指しています。移動速度の高いヨーロッパでその走りに魅了されたライダーが多くいるのも頷ける話なのです。

 前置きはこれくらいにして「TMAX560」を見てみましょう。まずは外観デザインです。先代(TMAX530)のイメージを引き継ぎながら、フロントのウインカーや、フロントのボディ周りのシャープさが印象的です。T字デザインのテールライトも新型の特徴です。

ヤマハ「TMAX560 ABS」(2020年型)カラー:マットグレー

 シートに跨がると、数値的には800mmのシート高ですが、燃料タンク、エンジンが収まる太めのボディの影響で、足付き性は良好とは言えません。しかし、これはネガティブポイントではなく、自転車で言えばロードバイクのように、スポーツ優先の車体造りの結果です。シートに跨がり腕を伸ばすと、やや低めのハンドルグリップ位置と相まって、上体が軽く前傾するようなライディングポジションも高速度移動を予感させるもの。跨がるだけで躍動感があるのです。

 2020年型になって先代より排気量が30cc増えた並列2気筒エンジンは、スムーズなアイドリングを刻みます。そして静か。アクセルをじわりと開け、走り出しの瞬間、回転計の針はせいぜい2000rpm。「TMAX560」はそれが当たり前のようにスムーズに走り出します。スクーターの多くが採用する無段変速ミッションでありながら、アクセルと駆動力、加速感の一致が見事。ライダーとしてとても気持ちが良いのです。

 その後、スーっと車速が伸びるあたりは、大排気量バイクらしい余裕と安心感、そして良い物に乗っているという満足感を与えてくれます。右手の動きのシンクロした動きが新しい「TMAX」ではさらに洗練されています。

走行フィーリングに寄与する2次駆動ベルトには25mm幅のカーボン系繊維を採用

 走りだして100メートル、「TMAX」は乗り心地の良さで満たしてくれます。スポーティなのにゴツゴツしない。市街地に多いアスファルトの補修跡、継ぎ目、工事跡など段差を綺麗に吸収していきます。これは快適。

 高速道路の料金所を通過して一気に本線へと加速します。アクセルに対する加速感のシンクロはここでも完璧に同調します。どこにも不足はなく、スムーズで分厚いトルクで加速します。しかもそれは素早いのに乱暴ではない。あくまでスムーズで気持ち良い加速。これぞ「TMAX」以外では味わえない加速です。

 巡航速度まで瞬時に増速した後は、右手ひとつでその速度を維持しやすいエンジン特性にも助けられ、リラックスした移動が続きます。もちろん、このときも乗り心地は上質です。どこまでも走りたい気分です。

 高速道路を降りてアップダウンのあるツーリングルートにやってきました。車重218kgにもなる「TMAX560」のハンドリングは加速同様、ライダーの意思とシンクロし、曲がる手応えをほどよく伝えながら充実した走りを提供します。

 カーブへとアプローチする時、ブレーキを使っての速度調整も、リアブレーキを主軸にしたいほど信頼できるコントロール性と制動力を持っています。フロントに装備したダブルディスクをリアブレーキに付け足す感じで不満がありません。その時、姿勢もフロントサスペンションだけが沈むのではなく、車体全体が路面に吸い付くように安定します。まったく不安無くこのATスポーツを楽しめました。

ヤマハ「TMAX560 ABS」(2020年型)に試乗する筆者(松井勉)

 市街地でゆとりと快適さに、高速道路は加速の充実感、ツーリングでもコントロールに集中する悦び、どんな場面でもライダーを満たす上質さ……。これぞ唯一無二の「TMAX」ワールドだと言えるでしょう。

※ ※ ※

 ヤマハのオートマチックスポーツモデル「TMAX560 ABS」(2020年型)の価格(消費税10%込み)は127万6000円、カラーバリエーションはマットグレーのみの設定です。

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