革新的技術を備えた「クロスヘルメットX1」既製品への疑問から生まれた新しい試み
バイクのニュース / 2020年7月3日 13時0分
あたらしものや体験を応援購入できる「Makuake」で5月20日より応募を開始した「CrossHelmet(クロスヘルメット)X1」が目標金額を大きく上回る応援購入総額を記しています。開発者はどのような意図でこの製品を創り上げたのでしょうか。
■「クロスヘルメットX1」実現までの道のりとは
日本のベンチャー企業「Borderless」が開発したスマートヘルメット「CrossHelmet(クロスヘルメット)X1」が、応援購入サービスを展開する「Makuake(マクアケ)」で目標金額を大きく上回り、1500%を上回る達成率を見せています。
一部四輪車などで採用されているヘッドアップディスプレイ(HUD)と帽体後方にカメラを備えることで視線の動きを最小限にしつつ360度の視界を確保したクロスヘルメットX1は、既存の製品には無い斬新なデザインと機能性を持つ画期的な製品です。
すでに海外のクラウドファンデイングで展開し、量産化に成功しているクロスヘルメットX1はどのようなコンセプトや経緯で生まれたのでしょうか。開発リーダーの大野新さんに話しを伺ってみました。
―――ヘルメットを開発される以前はどのようなことをやられていたのでしょうか。
2006年から2012年にかけて主にヤマハのバイクをデザインする「GKダイナミクス」に所属し、ブラジル向けの250ccモデル「YS250」のデザインや、FJR1300、MT-09、TRACER(トレーサー)などのモデルを担当、お手伝いさせていただきました。
―――バイク用ヘルメットでHUDを採用することは画期的なことだと思いますが、反響はいかがですか。
GKダイナミクス在籍時に手掛けたMT-09は、色々とチャンレンジさせて頂いた結果、それまでのヤマハのバイクとは大きく趣の異なるデザインでしたので賛否両論ありましたが、今回のヘルメットも同じく、新しい試みですので様々な意見を頂いています。
―――日本には優れたヘルメットを製造するメーカーもありますが、なぜ新たにヘルメットを開発したのでしょうか。
あくまでも個人的な意見ですが、ヘルメットを探しに量販店に行ってもピンとくるものがなく、また、既存のフルフェイスなどの窮屈感や視界の狭さ、ただ頭を守っているだけのものというところに長年、疑問を抱いていたため開発することにしました。
これは私自身が事故経験がほとんどないからかもしれませんが、既存の製品は走っている距離に対しての「保険」が強すぎる感じも否めませんでした。もちろん、頭を守るというのはヘルメットに求められる必須条件ですから、クロスヘルメットX1はそうした点も踏まえ、すでに北米向け安全規格であるDOT規格に準拠していますし、現在欧州と日本向けの規格認証も進行中です。また、FCC・ISEDC・VCCI・TELEC(技適)など、各国電波法令に基づく認証も合わせて取得しています。
帽体の後方にカメラを搭載するクロスヘルメットX1。少ない視線の移動で後方の様子が確認できます
2007年にはアップル社からiPhone 3Gが発売されましたが、当時はこんな小さなデバイスにスマートな機能が備わる時代になったんだなと感銘を受けました。その頃から「ウェアラブル」(身につけられる)というワードが認識されるようになりましたが、同時にそうしたデバイスに備えられた部品をヘルメットに内蔵していけばいいんじゃないかなと思うようになりましたね。ヘルメットには十分なスペースもありますし。
GKダイナミクスから独立後、何かにチャレンジする時間ができたため、2014年あたりからこのプロジェクトをスタートしましたが、デザインについては独立前から温めていたものを採用しています。
―――GKダイナミクス在籍時はバイク以外のデザインはされていたのでしょうか。
GKダイナミクスは乗り物を中心にデザインする会社でしたので、6年半くらいの期間でバイクを5台ほどデザインしました。デザインのランクは上からA、B、Cと別れていて、Cは簡単な部品の変更、Aはフルモデルチェンジといった感じです。在籍時、一番大きなプロジェクトがやはりMT-09ですね。あのモデルが出来るまでは結構時間もかかっていて、「3気筒にしたいね」くらいのところからスタートし、4年近くかかっていました。
―――「人間が身につける」という上でのデザインの難しさはありましたか?
バイクに人を載せたスケッチをする時に、わざと未来的なヘルメットにして描いたりしていたので、そこまで苦労せずにデザインできました。また、クロスヘルメットX1は自分の欲しかったものを形にしたものなので、私自身の使用用途のメインである街乗り、ショートツーリングに主眼を置いたものとなっています。ですので、「レースでの使用は可能ですか?」とお問い合わせもいただきますが、オススメはしていません。
―――クロスヘルメットX1は今後も進化していくのでしょうか。
メーカーとしてあまり正しい意見ではないかもしれませんが、クロスヘルメットX1は今も並行してテストを行っていますし、重量などまだまだ改善点があるのが正直なところです。また、クロスヘルメットX1の場合、部品の一部だけを変えるというのも難しい場合があるので、改良も慎重に進める必要があります。
ダイソンやテスラなど、いまでは高い品質のものを製造しているメーカーもベンチャー企業として立ち上がったばかりの時代には賛否両論あったわけですが、クロスヘルメットX1も同じように評価が二分されることは覚悟しています。これはMT-09をデザインして世に送り出したときにも体感しているわけですし。
今のユーザーさんは目が肥えているので、それに応えるように品質を高めて行ければと思います」。
※ ※ ※
開発リーダーの大野新さんを中心に、一流メーカーでの経験を持つスタッフにより創り挙げられたクロスヘルメットX1。マクアケでの受付は7月20日までとなっていますが、革新的な技術を備えた新しい試みが今後どのように進化していくのか、期待がかかります。
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