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当時のワークスマシンを思わせるスズキのスポーツアドベンチャー「Vストローム1050XT」 海外人気も納得のキャラクターとは

バイクのニュース / 2020年7月4日 11時0分

スズキの2020年新型「Vストローム1050XT」は、1988年に発売されたメーカー初のアドベンチャーモデル「DR750S」をデザインモチーフとしています。海外でも人気の「Vストローム」シリーズ、そのフラッグシップに試乗します。

■スズキのアドベンチャーマシン、その歴史を繋いでいる

「すごいな」最初にスズキの新型「V-STROM(ブイストローム)1050XT」を見た時、正直そう思いました。かつてスズキが参戦したダカールラリーのワークスマシンを思わせるスタイルだからです。

スズキ「V-STROM 1050XT」(2020年型)に試乗する筆者(松井勉)

 1988年にスズキがダカールラリーへ送りこんだワークスチーム、ライダーのガストン・ライエは、過去スズキとともにモトクロス世界選手権125クラスで3度の世界タイトルを取得した名手にして、2度のダカールラリーウイナーです。

 マシンは大排気量単気筒エンジンを搭載した「DR-Z(ディー・アール・ジータ)」。タバコメーカーの配色のそれは、日本でも六本木のディスコ(今で言えばクラブですね)を借り切って公開されました。白と蛍光レッドの塗り分けが眩しかった記憶があります。市販車「DR750」その愛称「DR-BIG」がリリースされたのもわずかに前で、両車のデザインは見事に同期していました。

 ワークス参戦後期には、より空気抵抗に配慮したスタイルに進化します。その時のカラーリングは、スズキオフロードカラーとも言えるイエローでした。つまり「Vストローム1050XT」のカタログカラー2色は、当時のラリーマシンそのもの。

 ただ、スズキにVツインマシンでダカールの歴史はあったっけ? と、ネットをひもとくと、ありました。ワークスではないようですが、2002年にロードバイク「SV650」に搭載されていた水冷Vツインエンジン(後に「V-STROM650」に搭載されるエンジンのベース)をパワーユニットにしたプロトタイプで参戦しています。走らせたのは、後にダカールラリーを2輪部門で5度制覇することになる、スペインのマルク・コマ。なるほど! 時代考証もバッチリですね。

スズキ「DR-BIG」(1988年)

 そんな「Vストローム1050XT」は、装備面を含めスズキ・アドベンチャーモデルの最上位に位置付けられるモデルです。ライト周りやノーズセクションにかつての「DR-BIG」の印象が被ります。

 跨がると、シート高が850mmあるもののスリムな車体で足付き性は悪くありません。XT専用装備のひとつでもある20mmの高さ調整が可能なシートや、手動により50mm幅で高さを変えられるフロントスクリーン、専用ミラー、メーターパネルの配色、ナックルカバー、クルーズコントロールなどなど、多くのアイテムが装備されています。

 もちろん、スポークホイールもそのひとつ。標準モデルの「Vストローム1050」比でプラス8.8万円の価格は高いですが、正直、欲しい装備だらけ。

 そのほかABSと慣性センサーを活用したヒルホールドコントロール、下り坂でブレーキ力配分を行なってくれるスロープディペンディングコントロール、荷重や減速度をモニターして前後ブレーキ配分を調整するロードディペントコントロールなど、電子制御のアップデイトで追加された機能も少なくありません。

 アクセルレスポンスやパワー感を調整可能なスズキ・ドライブ・モード・セレクター(SDMS)も継続装備されますが、電子制御スロットルの採用で、そのモードマップの作り込みもさらに進化しています。

スズキ「V-STROM 1050XT」(2020年型)カラー:チャンピオンイエロー

 エンジンとシャーシは先代から熟成され、搭載されているのですが、走り始めてすぐに感じるのは、エンジンのフィーリング、サスペンションの印象が上質になっていることです。

 排気量1036ccの水冷Vツインエンジンは低速から扱いやすく、市街地でのわずかなアクセル開度でもフレキシブルにバイクを走らせます。そこから少しアクセルを開けていっても必要なだけパワーとトルクを生み出す印象で、SDMSを最もレスポンスのシャープなA(Bが中間、Cがマイルド)を選択しても扱いに苦慮しません。

 低い回転数、高めのギアでもスムーズで穏やかな走りを提供するのはもちろん、ライダーが楽しもう! と積極的なコントロールをすれば、エンジンはしっかり応えてくれます。

 またハンドリングも特徴的で、郊外のツーリング路や高速道路を一定のスロットル開度で流すような場面では、カーブに対して車体はゆったりとしたハンドリングで対応し、ここでもライダーが積極的なコントロールで、車体を寝かす速度を早めるとシャキっと反応してくれます。鋭いハンドリングではなく、V-STROMというアドベンチャーバイクをワインディングで果敢にライディングする、という意思に応えるタイプです。コーナリングへの手応えをあと少し軽くすると、さらに楽しめるかも知れません。

 こんな場面でもエンジンはアクセルを開ける量、開け方に応えて穏やかにも鋭くもなり、路面の状況、天候の状況にも合わせやすいものでした。乗る度に思いますが、V-STROMが2002年に発売以来、海外では高い人気なのが解ります。

スズキ「V-STROM 1050 XT」に試乗する筆者(松井勉)

 前後のブレーキも上質なチューニングです。フロントは鋭さよりもコントロール性が印象的。リアは低速走行からツーリング時、おそらくタンデム時にも幅広くライダーの減速をアシストするタイプです。また、荷重や減速度によって前後ブレーキの配分を調整してくれる機能もあり、長期、長距離でもライダーをしっかりアシストしてくれるはず。

 そして、豊富に用意されたパニアケースなどのオプションを全部選んでも、ライバルに対して魅力的な価格で収まる部分も、スズキが持つの大きな魅力ではないでしょうか。

※ ※ ※

 チャンピオンイエローのほか、ブリリアントホワイト/グラスブレイズオレンジ、グラススパークルブラックの3色設定となるスズキ「Vストローム1050XT」の価格(消費税10%込み)は151万8000円です。

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