MotoGP ゼッケンナンバーよもやま話 その1 見かけなくなった栄光のゼッケン“1”
バイクのニュース / 2020年8月5日 13時0分
ロードレース世界選手権(MotoGP)で栄光のゼッケン“1”を見かけなくなり8年。チャンピオン獲得後にゼッケン“1”をつけなくなった理由を最高峰クラスに絞り考察します。
■チャンピオンの証ゼッケン“1”をつけない理由とは?
ロードレース世界選手権(MotoGP)で栄光のゼッケン“1”を見かけなってからしばらく時が経つ。“1”がつけられた往年の王者のマシンには、確かに特別な風格が漂っていた。チャンピオンライダーが“1”を使わなくなってきた理由や各ライダーのパーソナルナンバーの由来を最高峰クラスに絞って考察してみよう。
■“1”をつけないチャンピオンの先駆けはスズキの英雄バリー・シーン
チャンピオンになっても自分のパーソナルナンバーを使用するライダーの先駆けは、1976年、RG500を駆ってスズキに初の500ccタイトルをもたらしたバリー・シーンだとされている。2連覇し、1977年・1978年と2年連続で“1”をつける権利を得た訳だが、いずれの年もドナルドダックが描かれたヘルメットと共に強いこだわりがあったトレードマークのゼッケン“7”で通している。グランプリ界のロックスターは、ゼッケンナンバーだけでなく、宿泊するホテルの部屋番号など、サーキット以外の場所でも“7”にこだわっていた。
スポーティングレギュレーションを確認すると「前年のチャンピオンはゼッケン“1”をつける」という明確な規定はなく、「選手権参戦を許可された各ライダーは、全選手権期間にわたって有効な特定の出走番号を割り当てられる。一般にこの出走番号は、前年度選手権もしくは類似イベントでの結果に基づくものとする」とのみ記され、慣例的にランキング順に番号を割り振っていたものの、そこまでの強制力はないことが理解できる。
■バレンティーノ・ロッシ登場。パーソナルナンバー全盛の時代に突入
2002年にMotoGPクラス初のチャンピオンを獲得したバレンティーノ・ロッシは、翌年もパーソナルナンバー“46”をつけてMotoGPに参戦
シーン以降、それから20年ほどはチャンピオンナンバー“1”を使うライダーが続いたが、バレンティーノ・ロッシがホンダで500ccクラス最後のタイトルを獲得した翌年もMotoGPクラスで栄冠を手にする。ヤマハに移籍後の2004年から2006年まで、引き続き、2009年・2010年とディフェンディングチャンピオンでありながらパーソナルナンバーの“46”をつけた。それをきっかけに同じくヤマハのホルヘ・ロレンソが“99”(初タイトル翌年の2011年のみゼッケン“1”を使用)でタイトル獲得の翌年を走り、現在は4連覇中のマルク・マルケスが“93”で戦っている。
最高峰クラスでロッシが初めてチャンピオンを獲得してから20年弱、その間に栄光のゼッケン“1”をつけて走ったのは、2007年のニッキー・ヘイデン、2008年と2012年のケーシー・ストーナー、2011年のロレンソの計4年のみでパーソナルナンバー全盛の時代へと突入している。
ケビン・シュワンツやヘイデン、ストーナーなどのように“1”の中にパーソナルナンバーをデザインし、強いこだわりを見せるライダーはいたものの、多くの歴代王者がゼッケン“1”を選択したのには「チャンピオンにのみ許される特権」という理由があっただろう。ロレンソも「MotoGPクラスで初めてチャンピオンになって、ゼッケン“1”を使えるのが嬉しかった」と当時の心境を語っている。それに加え、ポスターやカタログなどにマシンの写真を使用する際のユーザーへの訴求効果も“1”のほうが大きいという商業的な理由も少なからずあったのではないだろうか。
多くのオフィシャルグッツを販売するバレンティーノ・ロッシ
近年はロッシを筆頭とする多くのライダーが、オリジナルデザインのゼッケンを活用したオフィシャルグッスを販売するなどのビジネスを展開している。“1”を選ばないチャンピオンが多い理由としては、それらを売るには“キャラが立っている”パーソナルナンバーのアイテムのほうが売りやすいというマーケティング的な事情が、大きく関係しているのかもしれない。そのように考えると、ただ“1”を目指してしのぎを削った、かつてのグランプリサーカスが少し懐かしいような気もしてくる。
ただ、ウィニングラップでのパフォーマンスを含め、マーケティング時代の先陣を切り、ひた走ってきたロッシは、レースでの実績はもちろんのこと、エンターテインメントやビジネスの観点からもMotoGPを変えた革命児といえることは確かだろう。
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