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究極のスーパースポーツは次のステージへ ホンダ「CBR1000RR-R FIREBLADE SP」試乗……全開走行はサーキットで!!

バイクのニュース / 2020年9月12日 11時0分

ホンダのスーパースポーツマシン「CBR1000RR-R FIREBLADE SP」は、「R」の数が示す通りレーシングでのパフォーマンスに振り切った市販バイクです。サーキットで磨かれたピュアスポーツに、松井勉さんが試乗します。

■これはただ者ではない! オーラが漂う最高峰の存在感

 2020年、注目の1台と言えるホンダのスーパースポーツマシン「CBR1000RR-R FIREBLADE SP」(以下、RR-R SP)です。30年の歴史を持つ「FIREBLADE(ファイアーブレード)」)シリーズの特徴は、その名前、排気量のあとにつく2つの「R」でした。それが「RR-R」へ、まさに名は体を表すの言葉通り、その中身も大きく進化を遂げます。

 開発コンセプトは“Total Control for the Track”というもの。先代までは“Total Control”だったので、ワインディングとサーキットで実力を楽しむ、というものから「トラック」、つまりサーキットです。レース最速を狙って開発がされたのが大きな違いなのです。

 手短に紹介すると、クラス最高となる218PS/14500rpmという高出力高回転性能、先代よりも50mmホイールベースを伸ばし、重量バランスとハンドリング性能を磨いたシャーシ、MotoGPでは当たり前になった空力デバイスを装備するのもニュースです。

 なかでも直列4気筒エンジンは、MotoGPマシン「RC213V」と同じボア×ストローク(内径×行程mm)を持ち、バルブ周りのレイアウトも刷新。「吸排気(マフラー交換レベル)を少しいじるだけでパワーはまだまだ上がる」と、開発者が語るほど伸び代が隠されています。

 エンジン内部パーツの加工精度やコーティング技術にもMotoGPで得た技術が盛り込まれているのも、そうした理由によるものです。

ホンダ「CBR1000RR-R FIREBLADE SP」(2020年型)カラー:グランプリレッド

 今回はRR-R SPを試乗しましたが、価格はスタンダードのRR-Rが242万円に対し、SPは278万3000円となっています。内容を見れば差額は納得、まずスタンダードに対し、前後にオーリンズ製電子制御セミアクティブサスペンションを装備、ブレンボ製ブレーキシステムの搭載、クイックシフターを標準装備するなど、輸入車の上級グレードと同等の装備、とも言えます。価格も同等ですが。

 グランプリレッドと呼ばれるカラーに身を纏ったテスト車、そのフェアリング横にある縦3連ウイングや、各部に使われた素材、手間の掛かったスイングアームの製法、軽そうなホイールとワイドタイヤなどなど、オーラはただ者ではありません。

 またがると、低いながらも広めのスタンスのセパレートハンドルバと「バックステップか?」というほど後方にあるステップ位置で、基本的に強めの前傾姿勢が特徴です。

 シートは後部が幅広で高く、前部は細く絞られた形状でタンク、フェアリングやフレームなど、ライダーとコンタクトする部分とのつながりも良好、ゴツゴツ感がありません。

 スマートキーを使ったイグニッションを入れて起動させると、TFTメーターの中央にはアナログ式の回転計が表示されます。重めに回るスターターで目覚めたエンジンは、標準装備されるアクラポビッチ製サイレンサーから気持ちを昂ぶらせる音を奏でます。

 豊富な電子制御技術のひとつ、ライディングモードをマイルドなパワー特性にして市街地へと走りだします。低速トルクが潤沢、という感じではありません。自動的にスロットルバルブをコントロールしてくれる助けもあり、エンストする予感はありません。しっかり蹴り出します。

5インチのフルカラーTFT液晶ディスプレイには走行状況や電子制御の状態など多くの情報が表示される。タコメーターはアナログタイプのほか好みに応じて変更可能

 動き出してしまえばさすが4気筒、市街地でも素早い加速を求めなければ、6速まで使えてギクシャクもしません。ブレーキのタッチも良い意味でマイルド、しかも電子制御のオーリンズ製サスペンションの上質な作動性により、ブレーキング初期のノーズダイブ感も極めて自然で、路面の荒れた箇所をスムーズに乗り越えます。

 前傾姿勢が強いので、前方視界は前走車のウインドウ越しに見るようになりますが、市街地もリラックスして走れました。

 高速道路も同様。制限速度を6速クルーズすることは余裕で、シフトダウンしなくてもバシっと追い越し加速を見せてくれます。高性能ながら性能の裾野が広い印象です。前傾姿勢で腕に掛かる重みも100km/hの風圧がバランスして少し楽になります。とは言え、やはり長距離ツーリング向きだとは言いませんが。

 峠道も走りましたが、公道の速度域はやはりRR-R SPには不足、というか手応えが無いほどスルリと曲がり終えてしまいます。やはりその本領はトラックにありました。クローズドコースにRR-R SPを解き放つと、ブレーキングから旋回に入る時の身のこなしが安定しているのに軽く、狙ったラインが描きやすいのです。複合コーナーからの切り返しも同様で、素早さと安心感で攻めるのが楽しくなります。

 デフォルト設定では荒れた路面をもろに食らうこともありましたが、時間を掛けてセッティングをすれば、さらに走りやすくなることでしょう(そのための電子制御サスペンション、パワー特性、トラクションコントロールですから)。

 今回は「これが空力デバイスの威力か!」という場面を感じるほどの速度域ではありませんでしたが、一般道レベルの速度域全般でRR-Rを楽しめて、ただ者ではないオーラ、新しさをしっかり味わえたのは大きな収穫でした。

開発コンセプトのとおり、トラックでこそ本領を発揮する

 レースをしないけど、大丈夫? というライダーにもしっかりオススメできます。でも、全開走行はサーキットで!

取材・撮影協力/南千葉サーキット

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