V・ロッシがペトロナス・ヤマハ・SRTと正式契約! 契約期間1年は2022年シーズンへの布石か?
バイクのニュース / 2020年10月4日 13時0分
バレンティーノ・ロッシとヤマハは、6カ月にわたる長い交渉を経ての1年間の契約を締結し、2021年シーズンをペトロナス・ヤマハ・セパン・レーシング・チームからMotoGPクラスに参戦すると発表された。
■交渉が長引いたふたつの大きな理由
9度世界チャンピオンに輝くバレンティーノ・ロッシが、ヤマハとのファクトリー・ライダー契約を1年間更新し、2021年シーズンをペトロナス・ヤマハ・セパン・レーシング・チームから戦うことが、先日のカタルニアGPのレースウィークに正式発表された。サテライト・チームへの移籍とはなるが、これまで通り、ロッシには最新スペックのYZR-M1が与えられ、ヤマハからの全面的な技術サポートも受けられる。
シーズンがまだ始まる前の今年1月末には、ファクトリー・チームのモンスターエナジー・ヤマハ・MotoGPから異例の早さでマーベリック・ビニャーレスとファビオ・クアルタラロのコンビで2021~2022年シーズンに参戦することが発表され、ロッシが現役続行を決断した場合のペトロナス入りはほぼ確実視されていた状況だったが、6カ月にわたる長い交渉を経ての契約締結となった。
当初から“THE DOCTOR”は、自身が信頼するチームを一緒に連れていくことを契約条件に求めていたが、ペトロナスのチーム代表を務めるラズラン・ラザリは、体制が大きく変わることに懸念を抱いており、そこが契約に至るまでの障害と見られていた。だが、ミック・ドゥーハンの5年連続での500ccタイトル獲得に貢献し、ロッシをホンダ時代からサポートするオーストラリア人メカニックのアレックス・ブリッグス、ヤマハ加入初年度からロッシを支えるニュージーランド人メカニックのブレント・スティーブンスがチームに加わらず、クルーチーフのダビド・ムニョス、データ分析エンジニアのマッテオ・フラミーニ、パフォーマンストレーナーのイダリオ・マヌエル・ダビラの3人のみが加入することでお互い妥協点を見つけたようだ。ちなみに今シーズンからクルーチーフを担当するムニョスは、ロッシがオーナーのVR46チームで仕事をした経験を持ち、2018年にはフランチェスコ・バニャイアをMoto2クラスのチャンピオンに導いた。
ロッシと長年共に戦ったメカニックたちを連れての移籍にペテロナスが懸念
「チーム全員を集めるためにタフな交渉を重ねてきたけど、時にはうまくいかないこともある。全てが僕にとって完璧になる訳ではないのは普通のこと。今回は残念ながらアレックスとブレントは連れていくことができなかった。悲しいけどね」と“MotoGP界の生ける伝説”はコメント。「でも走り続けることができてとてもうれしい。MotoGPでトップに立つには、毎日トレーニングを行い、“アスリートの生活”を送るために多くの努力をする必要があるけど、僕はそれが好きで、まだ走りたいと思っている。フランコ(モルビデリ)がチームメイトになるのも素晴らしいこと。彼はVR46アカデミーのライダーなので、きっとクールなことになるだろう。協力して素晴らしいことを実現できると思う」と移籍を喜んだ。
また、ラザリが「バレンティーノは普通のライダーではありません。特別な商品なんです」と語るように、ロッシが展開する『VR46』のマーケティングビジネス、肖像権や商標権等の権利関係の調整にもかなりの時間が費やされた。「多くの権利が関係しており、日本、マレーシア、イタリアと各国に関係者がおり、簡単な取引ではありませんでしたよ」とペトロナスのボスは振り返っている。
■契約期間1年は2022年への布石か?
2001年、完全なファクトリー・チームではないナストロ・アズーロ・ホンダで、最初で最後の500cc王者に就いたロッシにとって、来季の体制は納得できるものだと思われるが、更新された契約期間が予想された1年+1年のオプションではなく、1年という点に少しだけ疑問が残る。
2021年2月に42歳となるロッシ、1年契約の真意はどこにあるのか
今シーズン開幕前にも「何戦か走ってみて、自分にまだ競争力があるかを確かめてから判断したい」と2021年以降の去就について語っており、来年2月に42歳を迎えるロッシが“1年1年が勝負”と考え、期間を判断したことは理解できる。それに加え、マネージングディレクターのリン・ジャービスは、ヤマハが通常5年単位で結ばれる2022年からのMotoGP参戦契約を現時点で締結していないことを理由に挙げるが、ビニャーレスとクアルタラロの2人とは2年契約を交わしており、ヤマハ側が来シーズン以降も上位を争うパフォーマンスを示し続けられるかどうかに一抹の不安を感じていることもまた事実だろう。
VR 46チームがMotoGPクラスに進出する駆け引き開始?
ここで頭をもたげてくるのは、これまでもたびたび話題になっているロッシ率いるVR46チームのMotoGPクラスへの進出話だ。以前、「そこまでのお金はないよ(笑)」と資金面を理由にロッシは否定していたが、環境さえ整えば実現の可能性は十分だ。同じくMotoGPクラス進出を目指すレオパード・レーシングと参戦枠を巡った駆け引きをすでに水面下で繰り広げているという話も出ている。
モルビデリがペトロナスと2021年シーズンからの2年契約を結び、バニャイアのドゥカティ・ファクトリー入りも発表されたため、これら愛弟子の参加は当面難しいが、Moto2クラスのチャンピオンシップをリードする、異父弟のルカ・マリーニのMotoGP昇格は俄然現実味を帯びてきており、チームがMotoGPクラスへと進出した場合のライダー候補筆頭だ。「面倒なライバルがまたひとり増えてしまうから2021年には昇格して欲しくない。兄としてはMoto2にとどまることをお勧めするよ」と冗談めかしたコメントを発しているが、VR46サイドがエスポンソマラ・レーシング・ドゥカティ(旧Reale Avintia Racing Ducati)のチームマネージャー、ルーベン・チャウスに接触し、マリー二にシートを提供してもらえないかと交渉したのは確かだと見られ、少しでも早くパワフルなMotoGPマシンに慣れ、2022年の自身のチームでの活躍を実は想定しているのかもしれない。
2021年、VR46チームのMotoGPクラスのマシンは、スズキ製を使用? またはペトロナスがヤマハを離脱か?(写真:スズキ GSX-RR)
VR46チームがMotoGPクラスに参戦する際、問題となるのはマシンだ。ヤマハとしてはファクトリー・チームとペトロナスの計4台以上を供給するのは難しいようで、その場合、2004年から2010年までヤマハで共に戦ったダビデ・ブリビオがチームマネージャーを務めるスズキから協力を仰ぐ可能性もある。ブリビオはかねてよりサテライトチーム設立を望んでいるとされ、GSX-RRの戦闘力も今や他メーカーのマシンに引けを取らない。一方で2022年にはヤマハとペトロナスが袂を分かつという噂も一部で囁かれており、もし実際にそうなればVR46チームがその受け皿となるだろう。
様々な情報があふれ、先のことはまだまだ見通せないが、2022年、MotoGPのアイコンは果たして何をしているのだろうか? 現役ライダーなのか、監督兼ライダーのプレイングマネージャーなのか、はたまた引退し、監督やアンバサダーになっているのか、行方が気になるところだ。
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