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バイクとは大違い!? 自動車レース専用ヘルメットの仕込みがすごい ~木下隆之の、またがっちゃいましたVol.65~

バイクのニュース / 2020年10月7日 17時0分

レーシングドライバー木下隆之さんが使用するレース専用ヘルメットには特殊な加工が施されています。そのため空港の検査で引っ掛かってしまいました。どういうことなのでしょうか?

■空港の手荷物検査で、引っ掛かっちゃいました

 僕(筆者:木下隆之)らレーシングドライバーは、フルフェイスのヘルメットをかぶって4輪に乗る、地球上でも稀な人種だと言えなくもない。

 クルマに乗るときに、わざわざ開口部の狭いフルフェイスをかぶる。いやその前に、難燃性素材のフェイスマスクを被り、そのまま夜道を歩けば確実に職質に合うに決まっている姿になる。

 耳には無線用のイヤープラグを挿入し、口には怪しい管をくわえる。車載のドリンクで補水しながらレースを戦うわけだ。まったくどうして、大袈裟である。そして珍妙である。

 それにもまして、最近ではレース用エアコンが充実しはじめた。電気コンプレッサーが生み出す冷気を、ヘルメットに被せたお椀型のケースに導く。

 あらかじめヘルメットには小さな穴が開けられている。冷気をその小穴から導き、頭を冷やすのである。「頭を冷やせ」とは子供の頃に頻繁に叱られたが、大人になってから「頭を冷やす」とは情けない。そう、その、いわば頭部強制冷却エアコン用の管がヘルメットには組み込まれているのだ。

 クラッシュ時に、頸椎を損傷させないためのハンスシステムを組み込む。シートベルトで固定されたプレートからロープが伸びており、ヘルメットに組み込んだ金具と結合させる。すると、万が一正面からタイヤバリヤなりコンクリートフェンスに体当たりしても、首がビヨ~ンと伸びるのを防げるのだ。そう、レースの安全性が高まり、命を落とすケースがめっきり少なくなったのは、そんな安全デバイスの効果でもあるのだ。

 だがじつはこれが、厄介な事件の引き金になった。海外レース参戦のため、羽田空港に向かった。カウンターでチケットを発券してもらい、手荷物検査を受ければ、フライトまでラウンジでくつろげる。おかわり自由のカレーや飲み放題のビールは、無料だからという理由で大好物だ。だからいつも離陸2時間前には空港に着く。

 いつもヘルメットは機内持ち込みにしている。ロストが心配だからだ。ヘルメットがロストすればレースに出場できない。

『BMW Team Studie』のレーシングドライバーを務める筆者(木下隆之)。安全性に加え快適性や機能性を高めた専用のヘルメットを着用する

 ところが、その日はセキュリティに引っ掛かった。手持ちのバッグに納めていたヘルメットがX線探知機で御用となったのだ。それも道理である。バッグの中に、まるで爆弾かのような丸い塊がある。それには金属が埋め込まれており、エアコン用の挿入口が組み込まれている。ドリンクチューブは不審な液体とつながっているようにも映る。まして無線用コードは、時限爆弾の起爆装置にも見えなくもない。

 現物を見せても、なかなか納得してもらえない。だって、ヘルメットにそんなコードやホースや金属を埋め込むことなど、レース関係者でなければ理解できないからである。

 それから30分。別室に隔離され、不審者扱いされたことは言うまでもない。バイクでそんな珍妙なヘルメットは無かろうとも思うが、海外でのバイク旅行を計画中の方、ご注意を!

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