軽量化と最高の空力性能!! ロードスポーツを追求した超ド級のストリートバイク!! ドゥカティ「スーパーレッジェーラV4」とは
バイクのニュース / 2020年10月15日 15時0分
世界最高峰ロードレースで戦い続けるドゥカティは、その技術を市販車でも実現したいという思いから「スーパーレッジェーラ(=超軽量)」の名を持つスーパースポーツモデルを世に送り出しています。世界限定500台、価格1000万円超となる2020年型の「スーパーレッジェーラV4」を紐解きます。
■軽さ以外の、大きな魅力とは?
現行車(モーターサイクル)で世界最高峰のストリートバイク、ドゥカティ「Superleggerra V4(スーパーレッジェーラ・ブイ・フォー)」の実情に迫ります。指南役はドゥカティジャパンの広報・マーケティングダイレクターを務める五条秀巳さん。今回はメカニズムの詳細に迫ってみましょう。
スーパーレッジェーラV4の最大の特徴は、その名が示す通り、車体が“超軽量”なことです。159kgの乾燥重量はベースモデルである「パニガーレV4/V4R」のレギュラーモデルを13kgから16kgも下回るだけではなく、現行リッタスーパースポーツでトップの軽さなのですから。ただし五条さんによると、スーパーレッジェーラV4の特徴は、それだけではないようです。
■「デスモセディチGP16」の技術を転用
五条さん(以下、敬称略)「スーパーレッジェーラ・シリーズにとって、素材の置換による軽量化は欠かせない要素で、2014年の初代と2017年の2代目では、その点を強調しました。ただし3代目(2020年モデル)は、エアロダイナミクスも、軽さと同じくらい重要です。
ドゥカティジャパンの広報・マーケティングダイレクターを務める五条秀巳さんに話を伺った(インタビュー/筆者:中村友彦)
パッと見では、レギュラーモデルのパニガーレV4シリーズより、大きなバイプレイン・ウイングを装着しているだけと思えますが、じつはこのウイングを採用するにあたって、フェアリングは全面新設計になっていますし、空力シミュレーションと実走テストも、ゼロから構築する形で行いました。さらに言うなら、エンジンマッピングや前後サスペンションのセッティング、車体のディメンションなども、専用設計となっています。
どうしてそういう要素を盛り込んだかと言うと、レースの世界でエアロダイナミクスの新境地を切り開いて来たドゥカティとしては、MotoGPで空力性能が頂点に達した、デスモセディチGP16の技術を転用したかったからでしょう。
2017年以降のMotoGPとスーパーバイクでは、ウイングレットに関するさまざまな規制が設けられて、ドゥカティは自社の強みの何割かを失うことになったのですが、せっかく培った技術をそのままにしておくのはもったいない。そこでスーパーレッジェーラの3代目に、GP16の技術を活かした、最高の空力性能を与えようという展開になったわけです」
ドゥカティが公表したデータによると、スーパーレッジェーラV4が発生するダウンフォースは、パニガーレV4のレギュラーモデルを完全に凌駕しています。具体的な数値を示すなら、270km/hでの走行中は、レギュラーモデルの約1.67倍のダウンフォースが発生するのです。
もちろん車体の揚力を抑えるダウンフォースは、超高速域での安定性だけではなく、コーナーの立ち上がりにおけるウイリーの抑制にも有効で、ムジェロサーキットで行った比較テストでは、初代と2代目のスーパーレッジェーラより約2秒速く、2020年型パニガーレV4Rのファクトリーレーサーに約2秒まで迫る、1分52秒45を記録しました。
■空力性能に合わせて、すべてを最適化
五条「2輪のエアロダイナミクスは非常に奥深い世界で、直進安定性だけを追求すると、曲がりづらいバイクになってしまうし、走行風の流し方や渦の巻かせ方で、コーナリングの印象が大きく変わってきます。
見た目の印象では大きなバイプレイン・ウイングの装着が際立つ
もっともスーパーレッジェーラV4では、レースレギュレーションを気にすることなく、理想の空力性能を徹底追及できたわけですから、開発陣としては非常にやりがいのある仕事だったでしょう。なおムジェロにおけるラップタイムには、エアロダイナミクス性能だけではなく、先ほど述べたエンジンマッピングや前後サスペンションのセッティング、車体のディメンションなども影響を及ぼしています。
エンジンマッピングに関しては、低いギアからフルパワーが引き出しせるようになりました。レギュラーモデルのパニガーレV4の場合は、乗り手の不安につながるウイリーを抑制するため、1速、2速はパワーがかなり控えめ、3速でもまだ少し控えめにしていたのですが、バイプレインウイングを採用したスーパーレッジェーラV4は、2速のマッピングがレギュラーモデルの3速と同様で、3速からフルパワーが味わえる設定になっています。
ディメンションで興味深い要素は、スイングアームの延長でホイールベースを1469mm(パニガーレV4/V4S)や1471mm(パニガーレV4R)から1480mmに伸ばしていることでしょう。
スーパースポーツにとって、ホイールベースの延長は必ずしもプラス要素にはなりませんが、1480mmという数値は、スーパーバイクを戦うV4Rのファクトリーレーサーからのフィードバックですから、マイナス要素はないと思います。
前後サスペンションのセッティングについては、レギュラーモデルとは別物になった空力性能や重量、エンジンマッピングに合わせて、スプリングとダンパーの最適化が図られています」
■ドゥカティ史上、最強の性能
前述したムジェロに加えて、ドゥカティではヘレスサーキットの最終コーナーからゴールライン付近を舞台として、次の4台の比較テストも行なっています。
2019年型パニガーレV4を基準にすると、2020年型パニガーレV4は4.5m、2020年型パニガーレV4にスーパーレッジェーラV4用+バイプレインウイング+フェアリングを装着したエアロパック車は6m、それぞれ前方を走行することが確認できたのですが、いずれも最高速は意外に伸びていません。
その一方で、一新した外装に合わせて、各部を最適化したスーパーレッジェーラV4は9mものリードを築き、最高速は5km/h以上も向上したのです。
軽量化のみならず理想の空力性能を徹底的に追求 ※画像は走行時の空気の流れを可視化したイメージ図
もっとも、このテストで使用したスーパーレッジェーラV4はレーシングキット装着車ですから、出荷状態ではここまでの速さは発揮できないはずです。とはいえ、徹底的な軽量化と空力性能の向上に加えて、さまざまな部分の最適化を図ったスーパーレッジェーラV4が、ドゥカティ史上最強の性能を備えていることに、異論を述べる人はいないのではないでしょうか。
※ ※ ※
次回は、スーパーレッジェーラ・シリーズ3代目となる「スーパーレッジェーラV4」にどれほどの軽量化が図られているのか、詳しくお伝えします。
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