159kgの車体はいかにして生まれたのか? ロードスポーツを追求した超ド級のストリートバイク!! ドゥカティ「スーパーレッジェーラV4」とは
バイクのニュース / 2020年10月16日 15時0分
世界最高峰ロードレースで戦い続けるドゥカティは、その技術を市販車でも実現したいという思いから「スーパーレッジェーラ(=超軽量)」の名を持つスーパースポーツモデルを世に送り出しています。世界限定500台、価格1000万円超となる2020年型の「スーパーレッジェーラV4」を紐解きます。
■素材の置換で驚異の軽量化を実現
ドゥカティ史上最強のスーパースポーツ「Superleggerra V4(スーパーレッジェーラ・ブイ・フォー)」の魅力に迫るべく、ドゥカティジャパンの広報・マーケティングダイレクターを務める五条秀巳さんに話を伺いました。今回は、スーパーレッジェーラ・シリーズ最大の特徴と言うべき軽量化についてです。
まずは歴代「スーパーレッジェーラ」の乾燥重量を、当時のベースモデルとともに振り返ってみましょう。
2014年型「1199スーパーレッジェーラ」155kg/「1199パニガーレ」170.5kg
2017年型「1299スーパーレッジェーラ」156kg/「1299パニガーレ」175.5kg
これらと比較すれば、じつはわずかに重くなっていますが、2020年6月に生産が開始された3代目となる「スーパーレッジェーラV4」の159kgという乾燥重量は、現行リッタースーパースポーツの中ではダントツの最軽量です。ちなみにベースモデルとなる「パニガーレV4S」は175kg、「パニガーレV4R」は172kgです。果たしてこの軽量化は、いかにして実現したのでしょうか。
五条さん(以下、敬称略)「軽量化の主な手法は、基本的には既存の1199スーパーレッジェーラ、1299スーパーレッジェーラと同じく素材の置換です。
レギュラーモデルでABS樹脂の外装部品は、すべてドライカーボンに変更し、骨格となるフレーム、シートレール、スイングアーム、ホイールも、アルミからドライカーボンに刷新しています。
なおフレームとスイングアームは、素材を置換するにあたって、基本形状を大きく変えることなく、各部の構成を見直していることも、スーパーレッジェーラV4ならではの特徴でしょう。ドゥカティ独自のフロントフレームの場合、アルミとカーボンでは、理想とする形が変わってきますからね。
もちろんカーボン製の骨格を採用するにあたって、コンピュータによる断面撮影や超音波探傷技術のフェーズドアレイ、サーモグラフィを用いた非破壊検査など、製造品質のチェックはユーロ4に準拠する形で、徹底的に行っています」
■“魅せるパーツ”としての効能
ドゥカティの資料によると、レギュラーモデルに対する軽量化の主な内訳は次の通りです。
軽量化を追求した結果、フルカーボンファイバー製シャシを備えた世界で唯一の公道走行可能なバイクとなった
●フレーム:-1.2kg
●シートレール:-1.2kg
●スイングアーム:-0.9kg
●ホイール:-3.4kg
●フロントフォーク+リアショック:-0.6kg
●リアスプロケット+ナット+チェーン:-1.4kg
●フットレスト:-0.3kg
●エンジン:-2.8kg
●マフラー:-2.5kg
これら以外にも、スーパーレッジェーラV4で行なわれた軽量化は多岐に及んでいますが、最も数値が大きいホイールですら、レギュラーモデルとの差は3.4kgしかありません。逆に言うなら、その差16kgや13kgの軽量化は、グラム単位にまでこだわった、ありとあらゆる部品の見直しで実現したのです。
五条「開発陣の軽量化に対するこだわりは、塗料にも及んでいます。明るめのレッドを基調として、暗めの赤を縦方向、白いラインを横方向に配置したカラーリングは、デスモセディチGP19がベースになっているのですが、最終的な配色は、カーボン地を活かした無塗装の面積を増やしつつ、重ね塗りをできるだけ避けることを念頭に置いて決定しました」
3色の塗り分け、および“塗らない部分”によって軽量化の追求と「GPライン」を表現
また、前述の部品は軽量化だけではなく“魅せるパーツ”としての効能も備えています。なかでも、現在のストリートバイクでは唯一にして、ひと目で素材が理解できるカーボンフレームや(1199スーパーレッジェーラはマグネシウムフレーム、1299スーパーレッジェーラはカーボンフレームを採用。外観からは素材が判別できない)、シルバーのチタンスプリングを採用したオーリンズのリアショック、アクラポビッチと共同開発したチタンマフラーなどは、オーナーの満足度に大いに貢献するはずです。
もちろん、裏面に大胆な肉抜きを施したシリアルナンバー入りのトップブリッジや、マシニング加工が施されたレバー、製法を鋳造から削り出しに変更したフロントフォークのボトムケースとリアサスペンションのリンクなどにも、同様のことが言えるでしょう。
■最もMotoGPレーサーに近いエンジン
スーパーレッジェーラV4が搭載するV型4気筒エンジンは、パニガーレV4R用として開発された、排気量998ccの“デスモセディチストラダーレ”がベースで、2.5kgの軽量化と3psのパワーアップを実現しています。
ドゥカティジャパンの広報・マーケティングダイレクターを務める五条秀巳さん(写真左)に話を伺った(インタビュー/筆者:中村友彦)
五条「エンジンの特徴として公表している要素は、カムシャフト/ミッションのシフトドラム/オイルポンプの軽量化、数多くのチタンボルトの採用くらいですが、実際には42%の構成部品を刷新しています。
3psのパワーアップは、各部品の軽量化と吸排気系の変更によって実現した数値で、レーシングエグゾーストを装着して専用マッピングをインストールすると、最高出力は224psから234psに向上します。もっともエンジンに関しては、一昔前よりレギュラーモデルの性能が大幅に上がったため、既存の1199/1299スーパーレッジェーラほどの差は感じづらいかもしれませんが、気合いの入り方という意味では、スーパーレッジェーラV4も、負けず劣らずだと思いますよ」
パニガーレV4シリーズ用として開発されたデスモセディチストラダーレは、現行車の中ではMotoGPレーサーに最も近いエンジンで、ドゥカティならではのデスモドロミック機構を採用した動弁系は言うまでもなく、90度のシリンダー挟み角や、81mmのボアサイズ、0度/90度/290度/380度の不等間隔爆発、逆回転するクランクシャフトなども、近年のMotoGPに参戦しているデスモセディチGPシリーズと同じと言われています。そのチューニング仕様となるエンジンがストリートバイクに搭載されるという事実は、改めて考えると、とんでもないことなのかもしれません。
※ ※ ※
次回はスーパーレッジェーラV4専用の、ドゥカティならではの設定が隠されたメーターや特別な付属部品、またスーパーレッジェーラV4が誕生した経緯をご紹介します。
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