【バイクのミライ!Vol.3】電動化が進むクルマ、バイクもこのまま電動化へ?
バイクのニュース / 2020年10月21日 15時0分
ハイブリッド(HV)や電気自動車(EV)が増えつつあるのがクルマの世界ですが、バイクもこのまま電動化の一途をたどっていくのでしょうか?
■クルマとバイクの歴史は、規制対応の歴史でもあった
クルマの世界では、「電動車」と総称されるハイブリッドカー(HV)、プラグインハイブリッドカー(PHV)、そして電気自動車(EV)が年々販売台数を増やしています。日本自動車会議所のデータによると、2019年に日本で販売された新車のうち電動車は過去最高の35%にもおよびます。
電動車の魅力は、伸びやかな走りやその先進的なイメージなどさまざまですが、なんといってもエコロジーで経済的であることでしょう。充電時間や航続距離といった部分が課題とも言われますが、技術の進歩により年を追うごとに改善しています。
では、自動車メーカーが電動車を積極的に販売するのは、単にユーザーがそれを求めているからなのでしょうか?もちろん、そういった面も否定はしませんが、正確に言うと「電動車をつくらなければならない」という切羽詰まった事情があるのです。
クルマの歴史は、規制対応の歴史でもあります。北米や欧州、そして日本など各地域ごとに有害ガスの排出量などに対して厳しい環境基準が設けられていますが、その基準値は数年おきに厳格化されていきます。そして、自動車メーカーは、そうした基準に適合するようなクルマを開発します。しかし、2020年以降の基準値は、もはや従来型のガソリンエンジンでは達成できないほどに厳しくなりつつあることから、各メーカーは電動車の開発を進めざるを得ない状況です。
そして、この環境規制の影響を受けるのはバイクの世界も同様です。クルマとバイクの規制は必ずしもリンクしていませんが、仕組み自体は近いものがあります。
2ストロークモデルは排ガス規制のため、現在では数が少なくなりました(写真:ホンダ「NSR250R」)
最も顕著な例でいうと、1999年の排出ガス規制が挙げられます。これにより、250ccクラスの2ストロークエンジンをもったモデルは基準値の達成が難しくなり、ほぼ消滅することになります。最近では、2016年に施行された規制で、燃費の測定方法などがグローバル基準に統一されたことから、ヤマハ「ドラッグスター」やホンダ「モンキー」といったほぼ日本専用モデルが規制対応できず販売終了となりました。
このように、惜しまれながらも販売終了となるモデルの多くが、技術面やコスト面で規制対応ができないという事情があります。また、販売が継続されるモデルや新しく登場するモデルも規制の内容に大きく左右されるのです。
■今後、バイクに関する環境規制はどうなる?
バイクの環境規制は、おおよそ4年おきに更新されており、2020年もその年にあたります。12月から施行される新環境規制では、「ユーロ5』と呼ばれる欧州基準の環境規制とほぼ同等の内容になるとされています。この新環境規制では、有害ガスの排出量をより低減させることに加えて、「OBDII」と呼ばれる走行データや排出ガス情報を記録するデバイスを搭載することがメインです。
ただし、この新環境基準は既存の技術の延長で対応できると言われており、影響を受けて販売終了するモデルはほとんどないようです。しかし、問題はさらに4年後に施行されると思われる「ユーロ6」と、それに合わせた日本の環境規制です。内容はまだ発表されていませんが、これまで以上に厳しい数値目標が設定されると言われており、大排気量の高性能マシンなどが規制対応が難しくなり、販売終了するモデルが続出すると予想されています。
電動スクーターは、原付の代替えになり得るのか!
また、施行時期に差はあるものの、原付のような小型のバイクにもその規制は及びます。しかし、すでに技術は到達点にあり、なおかつ開発費を価格に反映させにくい原付は、もはや規制対応は難しいという意見もあります。
一方で、趣味性の高い大型バイクと比べて、地域の日常の足として活躍している原付が軒並み販売終了してしまうと、その影響は計り知れません。とはいえ、規制が緩和されることは考えにくく、メーカーにとっては頭を悩ませる事態となるでしょう。
ホンダ「PCX ハイブリッド」は排ガス規制をクリアする鍵となるのか
こうした規制への対応の解決策として期待されているのが、電動バイクです。電気モーターのみで走行する電動バイクであれば、当然のことながら有害物質を含んだガスの排出はありません。また、これまでハイブリッド仕様のバイクはほとんどありませんでしたが、ホンダ「PCX ハイブリッド」のようなモデルも登場しており、こちらも規制対応のカギとして期待されています。
もちろんまだまだ課題もあります。最大の課題は航続距離、次にコストです。航続距離の面で言えば、原付クラスの電動バイクの多くは航続距離が20km程度です。ガソリンエンジンを搭載した原付であれば100km前後は余裕で走れることを考えると、同じような使い方はできません。コストについては、電動バイクは従来のモデルに比べて割高になりがちです。規制対応した結果割高なモデルばかりになってしまうと、日常の足として使いづらくなってしまいます。
そして、最後は充電場所の面です。電動バイクは、たとえ航続距離が短くても、自宅と外出先、例えば学校や職場などで充電できる設備があれば、少なくとも片道10kmから15kmが行動圏内となるため、かなり使い勝手はよくなります。
しかし、現状外出先で自由に充電可能な場所はほとんどありません。取り外し式のバッテリー搭載車であれば、コンセントがあればどこでも充電はできますが、大容量のバッテリーを許可なく充電するのはマナー違反であり、最悪の場合盗電に問われてしまう可能性もあります。
※ ※ ※
航続距離やコストの面は、各メーカーの企業努力によって、課題は解決されていくと予想されます。しかし、充電場所の問題については、インフラ整備や社会的なルールの構築などが必要なため、一朝一夕には解決できない可能性が高いと言わざるを得ません。
とはいえ、クルマの世界同様、バイクの世界でも電動化は避けられません。わたしたちは、これまでとは違う、新しいバイクライフを思い描く必要があるのかもしれません。
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