日常化したwithコロナ いまだからこそ注目したい接触感染防止アイテム K-FACTORYの『SNAP2020』とは?
バイクのニュース / 2020年10月23日 11時0分
大阪のバイクパーツメーカー『K-FACTORY(ケイファクトリー)』は、2020年春に接触感染防止アイテム『SNAP2020』を開発し、医療機関に無償配付しました。新聞やテレビなどニュースでも報道された同社の取り組みに注目します。
■バイクパーツメーカーだから生み出せたコロナ対策グッズ
人々がコロナの恐怖に怯えきっていた2020年春、バイクパーツメーカーの『K-FACTORY(ケイファクトリー)』が接触感染防止アイテム「SNAP2020」を開発し、医療機関に無償配付したことをニュースで耳にした人も多いことでしょう。
“with コロナ”が当たり前の毎日。不安に覚える日々にも慣れ、感染拡大防止への取り組みがおざなりになってはいないでしょうか? そんな今だからこそ、K-FACTORYの取り組みに注目してみましょう。
高性能であることはもちろん、美術工芸品のような仕上げが光るマフラー。機能部品でありながら、凝ったデザインワークも見逃せない魅力のビレットパーツ。そんなK-FACTORYのパーツは、カスタムフリークにとっては憧れの存在です。
そのK-FACTORYが、全く畑違いの接触感染防止アイテム「SNAP2020」を開発。国内外の医療機関を中心に無償配付したことは、バイクメディアのみならず大手新聞やテレビのニュースにも取り上げられ大きな話題になりました。配付された数は、じつに1万1000個。関感染拡大とギリギリの戦いを続けていた医療の現場からは、大きな称賛と感謝の声が上がったのです。
K-FACTORYがカスタマイズしたカワサキ「GPZ900R」。工芸品のような美しさのマフラー、ステップやスイングアーム、エンジンカバーや足まわりパーツなど、ビレットパーツの造形にも注目。同社は本来こうしたハードパーツを得意とするメーカーなのだ
無償配付を終了した後、K-FACTORYはSNAP2020の一般販売を開始しました。ですが、多くの人はSNAP2020が購入できることを知りません。なぜなら、SNAP2020に関しては広告の類を一切行なっていないのです。その理由を、SNAP2020の開発者であるK-FACTORY代表の桑原裕志さんに聞いてみました。
桑原さん「本音を言えば、製品化した以上は売れて欲しいですよ(笑)。でも、こうした状況で、人の弱みに付け込むような商売はしたくないんです。だって本当なら、こんなアイテムが不要な世の中であって欲しいじゃないですか?
取材などで取り上げてもらうと、パパッと注文が入ります。ですから、需要はあると思います。広告を打つとしたら、コロナ禍が収まった後でしょうね。今後、公衆衛生の意識は変わらざるを得ないと思います。世の中が普通の状態に戻って、その上で社会生活をスムーズに送るためのアイテムとして広がっていけばいいなと考えています。」
そう語る桑原さん。そもそもが医療崩壊を防ぐため何かできないか? と考え、得意な金属加工の技術を活かして作り出されたものです。SNAP2020に関しては、ビジネスより社会貢献が優先するのでしょう。
また、SNAP2020には職人としてのこだわりと、高性能バイクパーツメーカーのプライドが込められているところも注目です。じつは、無償配付されたものと製品版では形状がかなり変えられているのです。
桑原さん「配付した最初のモデルは、とにかく早く医療の現場に届けたかったので、開発期間は数日です。ですから、機能的に納得がいかない部分がありました。製品版はじっくり開発しました。一番こだわったのは電車に乗った時に使う部分です」
製品版のSNAP2020で桑原さんがこだわった、電車のストレートパイプの持ち手に使用した時の安定性の向上。持ち手のパイプ形状やサイズが車両によって異なるので、汎用性を持たせることに苦労したという
SNAP2020はフックに持ち手がついたような形をしていますが、そのフック部分は電車の吊革にかけることができます。
桑原さん「吊革に使うなら最初のモデルでも、それほど不具合はありません。ですが、ストレートなパイプの持ち手に使うと、電車が揺れた時に滑ったり外れたりするんです。どういう形状にしたら、しっかり固定できるようになるのか? しかも電車の吊革と持ち手のパイプは千差万別なんです。どんな形にも対応できるように、試作を繰り返しました。大阪中の電車でテストしましたね。無闇に出歩くのは迷惑になりますし、乗客の少ない始発電車しか乗りませんでした」
試作回数は実に17回に及んだそうです。そうした努力の結果、どんな金属バイプの持ち手に使っても滑ることはない形状が生み出されました。スマートフォンやタッチパネルの操作を可能とするゴムクッションも、オプションパーツとして用意され、さらに使用用途が増えました。
桑原さん「券売機やATMなど、生活する中でタッチパネルを使う機会は多い。そこで、画面に触れることを気にする方は少なくないですし、そこでの感染の危険性もあります。ゴムクッションは導電性の素材を使っているので、タッチパネルを操作出来るようにしました。形状や固定方法を考えるのに苦労しましたが、使ってみると思っていた以上に便利です」
無償配付したSNAP2020の量産と並行してデザインの見直しも。左の列一番下が無償配付版、それ以外は全て試作品。テストを繰り返し、徐々に形状が変化していく過程がわかる。無償配付版から数えて17回目の再設計で、製品版の形状が決まった
どういった使い方ができるかは、K-FACTORYのホームページ内にあるSNAP2020コンテンツで確認できます。さらに、桑原さんは次のように続けます。
桑原さん「教育の現場でも接触感染の防止に苦労していると聞きました。いま考えているのは小さなお子さんの手に合わせた、子供用SNAP2020が作れないかということです。金属製のアイテムですから幼児に持たせることはできませんけど、小学生くらいのお子さんが使えるものを作りたいですね」
SNAP2020は大手スポーツメーカーを介して、一部のオリンピックアスリートにも愛用されています。また、日本より被害の大きいヨーロッパで注目を浴びているそうです。桑原さんと親交のあるヨーロッパの四輪F1チームに送ったところ、チームのスポンサーが大きな興味を示したのだそうです。そのスポンサーは誰もが知る世界的企業、もしかするとSNAP2020は、日本発のコロナ対策グッズとして世界に広がっていくのかもしれません。
製品版のSNAP2020は、フック部分の軸をオフセットしたことで、手と使用対象の接触の可能性を下げている。また、フック部分の内側に波型の段差が斜めに入れられていることで、フック使用時の安定性が大きく向上したのだという。カラーは7色から選択可能
K-FACTORYのSNAP2020への取り組みは、同社のYouTubeチャンネル「KFACTORYmovie」にメッセージ動画があります。そちらも是非一度視聴してみてください。
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