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ヤマハ・MotoGPのレギュレーション違反は故意? バルブ変更の真相に迫る!

バイクのニュース / 2020年11月14日 12時0分

MotoGP・第13戦ヨーロッパGP直前に通達されたヤマハへのペナルティーは、世界中に衝撃を与えています。ヤマハ発動機は、「2種類のバルブを使用したことに悪意はなかった」という趣旨の声明を発表した。

■誤解か、それとも故意か? 分かれる見解

 MotoGP・第13戦ヨーロッパGP直前にFIM(国際モーターサイクリズム連盟)MotoGPスチュワードから通達されたヤマハへのペナルティーは、グランプリサーカス、世界のモータースポーツファンに大きな衝撃を与えた。

 このペナルティーは、ヤマハ・ファクトリーがMSMA(Motorcycle Sport Manufacturers’ Association:モータースポーツ製造者協会)による全会一致の承認を得ず、技術的な変更を行ったことに対するもので、コンストラクターズポイント50ポイントが剥奪となった。
 具体的には、当初、開幕戦に予定されていたカタールGP前に設計図とサンプルを提出し、認証を受けていたエンジンとは異なるバルブを、実際のMotoGPクラス開幕戦となったヘレスでのスペインGPで使用していたことが問題となったようだ。

 通達に対し、ヤマハ発動機は「FIMの決定を尊重し、受け入れる。上訴はしない」とした上で、「レギュレーションの誤解と内部での確認不足により、サンプルエンジンと完全に同じ仕様で製造された、2つの異なるサプライヤーのバルブを使用するためのMSMAへの事前通知を怠ってしまった。2種類のバルブを使用したことに悪意はなかった」という趣旨の声明を発表した。

 しかし、ヤマハからのこの説明に関しては「バルブの物理的な形状とサイズこそ変更されていないものの、材料の組成は違っていた」といった話もあり、MotoGPを運営・管理するドルナスポーツのテクニカルディレクターを務めるダニー・アルドリッジが、2種類のバルブの分析を第三者機関に依頼したところ、スペインGPで使用されたバルブの硬度が、事前に認証を受けたエンジンのバルブに比べて50%低かっただけでなく、バルブ自体の設計も変更され、ジオメトリーが5度違っていたとの報道も海外メディアでは出ていた。

 ヤマハ・ファクトリーのマネージングディレクター、リン・ジャービスによると、スペインGPで4人のヤマハ・ライダーが新しいサプライヤーのバルブが取り付けられた8基のエンジンを使用し、フランコ・モルビデリ(PETRONAS Yamaha Sepang Racing Team)のみがスティリアGPでもスペインGPと同じエンジンでフリー走行と予選を走ったが、それ以外のレースでは、全ライダーがサンプルエンジンと同じ古いサプライヤーから供給されたバルブを取り付けたエンジンを使用したという。

 7月に行われた技術的な変更へのペナルティーが11月になった理由は、ヤマハ側が両サプライヤーのバルブの分析を依頼し、それらが全く同じであることをMotoGPスチュワードに証明することを望んでいたためだったとし、「材料に微妙な差異があった」ため、シーズン終盤になったこの時期に制裁が課されたとのことだ。

 また、コンストラクターズポイントとあわせ、チームポイントもファクトリー・チームのモンスターエナジー・ヤマハ・MotoGPが20ポイント、サテライト・チームのペトロナス・ヤマハ・セパン・レーシング・チームが37ポイントとそれぞれ剥奪されたが、ライダーズポイントについてはそのままで、その措置に対しては、チャンピオンシップを争うライバルたちからも疑問の声が上がっている。

 現在、ジョアン・ミルがランキングトップ、アレックス・リンスがランキング3位と共に絶好調のチーム・スズキ・エクスターを率いるダビデ・ブリビオも「タイトルを失うリスクはあるが、スズキはクリーンに戦う。もしヤマハが勝ったらタイトルに影を落とすことになる」と語っており、故意ではなかったとしてもチャンピオンシップに禍根を残したことは確かだろう。

■不安が的中したエンジン基数制限の問題

 シーズン前半から懸念されていたヤマハのエンジン基数制限問題だが、恐れていた状況が、ヨーロッパGPでついに現実となってしまった。

MotoGP・第13戦ヨーロッパGPでマーベリック・ビニャーレスのエンジンにバルブの問題が発生

 レースウィークに入った金曜日には、マーベリック・ビニャーレス(Monster Energy Yamaha MotoGP)のエンジンにバルブの問題が発生して、マシン1台に対する上限の5基(優遇措置を受けるメーカーは7基)を使い果たし、6基目へと載せ換えて走った決勝レースは、規定通りピットレーンからのスタートとなり、13位完走に終わった。

 信頼性だけでなく、出力特性にもどうやら問題があるようだ。ライバルに劣っているパワーを向上させるべく、ヤマハは開発を進めてきたが、その弊害として、美点であったスムーズなパワーデリバリーが損なわれてしまった。

バレンティーノ・ロッシは、ヤマハのエンジンに苦言を呈した

 バレンティーノ・ロッシ(Monster Energy Yamaha MotoGP)も「長い間、M1のエンジン特性はヤマハの強みだったけど、今では他のエンジンのほうがスムーズになっているように見える。バルブの選択も間違えたしね」とコメントしている。

 YZR-M1は同じ直列4気筒エンジンを積むスズキのGSX-RRに比べてタイヤのスピニングが激しく、表面温度も上がるため、タイヤを消耗しやすく、レース後半に弱いといわれている。マシンの重量配分とも関係しているが、出力特性によってうまくリアのトラクションを引き出せていないこともまた事実だろう。

 シーズン中にミサノで行われた公式テストでも通常よりおよそ50cmほど長いメガホンタイプのエキゾーストをロッシは試していたが、こちらもパワーは上がったものの、出力特性が好ましくなかったようで、その後の実戦にはいまだ登場していない。

 2020年シーズンもいよいよ残すところバレンシアGP、ポルトガルGPの2戦のみとなったが、エンジンの基数制限問題には最後まで悩まされそうだ。

 ヨーロッパGPで問題が発生したビニャーレスのエンジンは、寿命より約450マイル長い約1400マイルを走行したとされ、モルビデリが現在使っている2基のエンジンもそれぞれすでに約1400マイル、約1800マイルを走行している。残る2戦のいずれかで6基目を使用さぜるを得なくなることが予想され、先日のビニャーレスと同じくピットレーンからスタートする苦しいレースになることだろう。

 ランキング2位のファビオ・クアルタラロ(PETRONAS Yamaha Sepang Racing Team)もまだ2基のエンジンを残しているが、すでに1基は約1600マイル、もう1基も約690マイルを走行しており、タイトル争いを決する最後の2レースを寿命ぎりぎりのエンジンで戦わなくてはならない。

 COVID-19による多大な経済的影響のため、各メーカーは2021年シーズンの終わりまでエンジン開発を凍結することで合意した訳だが、ヤマハ陣営はエンジンの不安を抱えたまま、新たなチャンピオンシップを迎えることになる。

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