バイクのミライVol.5 ガソリン車規制はついに日本でも、バイクはどうなる?
バイクのニュース / 2020年12月17日 13時0分
2035年をめどにガソリン車の新車販売を規制することを政府が検討しているとの報道が話題を呼んでいます。世界的なトレンドと言える「ガソリン車規制」ですが、バイクにも影響を与えるのでしょうか?
■過熱する報道が生む、一般ユーザーと専門家の壁
自動車の世界では「電動化」が昨今のキーワードとなっています。技術が進歩しているとはいえ、構造上有害物質を含んだ排気ガスを出すことが避けられないガソリン車(内燃機関車)は、環境面や化石燃料の安定供給という面から将来的なリスクがあることは以前から指摘されていることでした。
ただ、世界的に見れば、国や地域ごとに温度差がありました。日本は、ガソリンの元となる原油のほとんどを中東をはじめとする海外に依存しているという背景から、ガソリンをできる限り消費しないエコカーを積極的に推進してきました。世界初の量産ハイブリッド車である「プリウス」や、世界初の量産電気自動車である「アイミーブ」や「リーフ」を世界に先駆けて開発したのは、日本の自動車メーカーでした。
一方で、欧米メーカーはどちらかというと電動化には消極的でした。特に欧州メーカーは、2010年ころまでクリーンディーゼルやダウンサイジングターボエンジンといった、従来型の内燃機関の改良を中心に行ってきました。
しかし、2015年に発覚したVWの燃費不正問題、いわゆる「ディーゼルゲート事件」によって、欧州メーカーたちもまた、電動化へと急加速をすることになります。米国もまた、テスラをはじめとする新興EVメーカーが隆盛し、電動化は身近なものとなりました。
そうした動きと同調するように、各国政府は将来的にガソリン車の販売を規制する政策を打ち出しました。それぞれ、施行時期や「ガソリン車」および「電動車」の定義は微妙に異なりますが、おおむね2030年~2050年頃をめどに、モーターなどの電動化機構をもたない、ガソリンのみで走るクルマ(ディーゼル車も含む)の新車販売が規制されるようです。
そして2020年12月、ついに日本でも同様の規制が検討されていることが報道されました。報道によると、2030年代なかばをめどに、新車販売における「脱ガソリン車化」を進めると言います。これまでは、業界に関わる一部の人以外は「対岸の火事」でしたが、多くの報道によってにわかに現実味を帯びてきたことで、一般ユーザーにも関心を持って受け入れられました。
しかし、内容をよく見ると、ハイブリッド車は規制されない方向で検討されているようです。トヨタや日産、ホンダといった主要自動車メーカーは、すでに新車販売の約半数をハイブリッド車または電気自動車となっており、年々その割合は増えていることから、決して非現実的なものとは言えません。
また、後述するいわゆる「CAFE規制」のような環境規制法案はすでに段階的に施行されていることからも、「脱ガソリン車』規制は、決して突然湧いた話とは言えないようです。
■脱ガソリン車化はバイクの世界でも?
バイクの世界もまた、環境規制とは無縁ではありません。かつて、ヤマハ「ドラッグスター」やホンダ「モンキー」といったベストセラーモデルが販売終了となったことや、2ストロークエンジンの250cc車が軒並み販売終了となった背景には、当時の環境規制に対応できなかったという事情があります。
平成10年度自動車排出ガス規制により2サイクルの二輪車は姿を消し4サイクル車に移行して行きます
また、2024年に施行される予定の新環境規制では、大型バイクの多くが対応できず、販売終了となることが予想されているほか、事実上国内専用モデルである50ccクラスの原動機付き自転車も、規制対応のコストメリットから販売終了モデルが続出すると言われています。
そこにきて、さらに「脱ガソリン車化」の波が押し寄せています。上述した政府による2030年代半ばをめどにしたガソリン車規制の報道では、バイクの規制に関する内容は見られませんでしたが、その後小池百合子都知事によって発表された東京都独自の環境規制案では、2035年までにガソリンのみで動くバイクの新車販売を規制することが明言されました。
これらの規制は、厳密にはまだ確定されたものではありませんが、遅かれ早かれ従来型の内燃機関を搭載したバイクが規制されていく運命であることは間違いないでしょう。
クルマの世界では、企業間燃費平均(CAFE規制)と呼ばれる仕組みが導入され、そのメーカーの平均値として一定の燃費基準を達成していればよいとされています。つまり、ハイブリッド車や電気自動車などのエコカーを一定量販売していれば、スポーツカーのような必ずしも燃費に特化していないモデルもラインナップすることができます。
しかし、バイク業界では現在のところそうした仕組みの導入は予定されていません。となると、将来的に趣味性の高いリッタークラスのバイクなどは販売ができないことになります。
2021年春に日本導入されるハーレーダビッドソンの電動バイク「LiveWire(ライブワイヤー)」
また、二輪車メーカーもビジネスの軸足は新興国向けのコミューター(125-250ccクラス)へと移っており、もともと電動バイクが競合となっているカテゴリーです。このように考えると、むしろクルマよりもバイクのほうが、電動化が急激に進むことも予想されます。
※ ※ ※
いずれにせよ、電動化は避けられないというのはバイクの世界もクルマの世界も同じです。中古車なども含めれば、今後もしばらくはガソリン車を乗り続けることはできると思われますが、むしろ今後登場するであろう革新的な電動バイクに思いを馳せることが「バイクのミライ」を考える上で最も重要なことなのかもしれません。
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