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2人の少女がバイクで“終末”を旅するSFマンガ『少女終末旅行』

バイクのニュース / 2020年12月24日 15時0分

バイク×少女の静かな世界。小型装軌式オートバイ「ケッテンクラート」に乗って2人の少女が文明崩壊後の世界を旅をする漫画『少女終末旅行』。

■少女は“週末”バイクで旅をする

 2020年現在、漫画界では女子高生や少女たちが様々なジャンルの趣味に挑戦する作品がひとつのジャンルとなって人気を集めています。

 海釣りに魅せられていく女子高生を描いた『放課後ていぼう日誌』(秋田書店)や登山に挑戦する『ヤマノススメ』(アース・スター エンターテイメント)などはまだメジャーな趣味と言えるかもしれません。ほかには筋トレに目覚めた女子高生の活躍を描く『ダンベル何キロ持てる?』(小学館)があったかと思うと、ラーメンの食べ歩きにスポットを当てた『ラーメン大好き小泉さん』(竹書房)があったり、驚くほどの幅広いジャンルが作品になっています。なかには盆栽をテーマにした『雨天の盆栽』(マッグガーデン)や、鉱石採集を取り上げた『瑠璃の宝石』(ハルタコミックス)などもあり、その懐の深さに驚かされるばかりです。しかも、いずれの作品も各ジャンルに興味が持てるように詳しく分かりやすく解説してくれているので、入門書としても最適です。

 バイクも例外ではなく、バイク好きなら思わずうなずいてしまう小ネタがちりばめられた『ばくおん!!』(秋田書店)や、孤独な少女とバイクの友情を描く『スーパーカブ』(角川コミックス・エース)など、多くの作品が生み出されています。

 そしてまたバイクは移動のための手段としても多くの作品に登場します。一大ブームとなった『ゆるキャン△』(芳文社)で、ソロキャンプを楽しむ少女は休みになるとヤマハの「Vino(ビーノ)」に乗ってキャンプ場に出かけますし、釣りと料理をテーマにした『カワセミさんの釣りごはん』(アクションコミックス)でも、主人公の少女たちはバイクに乗って釣りスポットを巡り休日を楽しみます。そう、少女たちは“週末”をバイクに乗って旅するのです。

■少女は“終末”バイクで旅をする

 では、ちょっと毛色を変えて少女が“終末”を旅する物語はいかがでしょうか。『少女終末旅行』(新潮社)はその名の通り、2人の少女が文明崩壊後の滅びゆく世界である“終末”をバイクに乗って旅をする物語です。著者は詩的でシュールな作風と、愛らしくもどこか切なさを感じさせるキャラクターデザインが特徴のつくみず先生で、2014年から2018年まで連載され、単行本全6巻が発刊されています。

 物語の所々に過去を思わせるエピソードは登場するのですが、なぜ文明が崩壊し“終末”が訪れたのか最後まで説明はありません。チトとユーリという2人の主人公が廃墟となってしまった都市をさまよい、上層を目指してひたすらバイクで移動を続けます。道中で出会う生存者もごくわずかで、基本的には“終末”世界を旅する2人の日常を追っていくことになります。

第二次世界大戦期にドイツのNSU社によって開発された半装軌車「ケッテンクラート」

 そんな2人の旅を支える愛車は「ケッテンクラート」です。第二次世界大戦期にドイツのNSU社によって開発された半装軌車と呼ばれる車両で、後輪が戦車のような履帯になっており、どんな悪路でも進むことができます。物言わぬ車両ですが、作品の中では3人目の登場人物として最後まで2人の旅を支えます。

 読み進めるうちに、淡々と静かに進む物語とつくみず先生の繊細なタッチに思わず吸い込まれ、時間を忘れて没頭してしまうかもしれません。はたして最上層で2人の少女を待ち受けているものは……。何かと閉塞感のある現代でぜひ手に取っていただきたい一冊です。

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