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グルーヴワークスのカスタムマシンに見る 『カスタムショーの存在意義』とは

バイクのニュース / 2021年1月14日 11時0分

カスタムショーに展示されたきらびやかな車両には、それぞれに創り手の思いが込められています。2020年に開催された関西最大級のカスタムバイクイベント「ニューオーダーチョッパーショー」で実質2位に輝いたグルーヴワークスによる一台にはどのような想いが込められていたのでしょうか。製作者に伺ってみました。

■新進気鋭のショップが手掛けた創意工夫あふれるカスタムマシン

 2020年10月25日、兵庫県神戸市の神戸国際展示場で開催された『ニューオーダーチョッパーショー(以下NOCS)』において行われた、出展ビルダー同士の投票によってアワードが決定される『ビルダーズチョイス』。以前に同サイト(バイクのニュース)でも大阪のリボルトカスタムサイクルズと福岡のインディアンオレンジモーターサイクルが同ショー初の同率優勝となったことをお伝えさせて頂きましたが、その2店舗に次いで実質2位となった大阪の“グルーヴワークス”による1台は「カスタムショーが持つ意味」を強く伝える存在といえるかもしれません。

 ビルダーが手塩にかけた極上のカスタムが一堂に会するショーの会場……そこは訪れた観客が夢のようなマシンを眺め、楽しむ空間なのですが、一方で“プロ側”にとっては自らのショップの名を知らしめる“プロモーションの場”という側面を持ちます。

 2016年に大阪の高槻市でオープンした新進気鋭のショップ、“グルーヴワークス”にとっても昨年のNOCSの結果は、まさに格好の機会といえたでしょう。

グルーヴワークスのカスタム車両のベースとなったFXSローライダー(写真は1977年の初代モデル)。創意工夫をこめることでスタイルを一新しています

 無論、どんなに腕を振るっても製作したカスタム・マシンが“プロ目線”で評価を受けなければ昨年のような結果を伴うことはないのですが、グルーヴワークスによる車両はやはり製作者である溝尻毅氏の“創意工夫”を強く感じさせる1台に仕上げられています。

■人気のショベルヘッドをベースにシンプルな装いにカスタム

 ちなみにこのマシンのベースは1981年式ハーレーダビッドソンFXSローライダーなのですが、その純正フレームを活かしつつリア周りを大胆にモデファイ。純正のスイングアームを使用した上でシート下にサスを装備するカンチレバータイプのソフテイル式となっているのですが、この部分がカスタムの特徴を決定づける大きなポイントになっています。

シートを取り外すと国産車用を流用したリアサスはご覧のようにセット。リアフェンダーもスイングアームに固定されているゆえ、タイヤとのクリアランスを保ちつつ通常の走行に支障ないサスストロークが確保されています。ここが走りとスタイルを両立するポイントです

 またフロントフォークはV-Twin製のスプリンガーフォークに換装されているのですが、ブレーキレバーから延びるワイヤーをハンドル中通しとした上でリアレッグ部(フロントフォークの構成パーツ)で油圧式に変換する意匠は見事の一言です。
 
 その他、同カスタムバイクではこうしたスタイルのマシンでは珍しい左右2本出しのマフラーや前方から後方にかけてシェイプされたデザインのフューエルタンク、そこに施されたKAMIKAZEピンストライピングによる美しいサンバースト塗装などで個性が演出されているのですが、そこには取って付けたかのような違和感がなく、1台のカスタムとして見事なまとまりを見せています。
 
 この車両を前に、ビルダーの溝尻氏は「ステー類の削り出しや仕上げは手作業で行って機械加工感を消したり、車体全体のバランスを考え、フレームのシートレール部分をドロップダウンして全体のシルエットをまとめることに留意した」と製作過程を振り返りますが、そうした一つ、一つの仕事が車体のクオリティアップに繋がっていることは、まず間違いありません。また、こうした部分がプロビルダー同士による投票で高い評価を受けたポイントであることは言うまでもないでしょう。

■ビルダー自身が体感した“業界に熱を生む連鎖”

 また、ビルダーの溝尻氏はカスタムショーに出店する車両を製作するうえでの心構えや、今回の結果について次のように話します。

「ショーに出展する車両では、お客様の要望を伺った上で普段のオーダーではやったことのない手法にチャレンジしたり、なるべく新たなアイデアを取り入れるようにしています。こうしたカスタムバイクを製作することは自分の技術を成長させるチャンスであり、ショーは力試しの場だとも思います。

京都の『煌エンジニアリング(現グレーシアインダストリー)』で修行を経た後、2016年にグルーヴワークスを大阪、高槻市で創業した溝尻毅氏は2020年のNOCSが初のアワード受賞。本人曰く「表彰式の時は脚が震えっぱなしでした(苦笑)」と話しますが、同時に「自分のバイクを見て、少しでもカスタムに興味を抱く人が増えて頂ければ」とも語ります。こうした新規のショップが多くの人に名を知らしめることもカスタムショーが持つ意義ではないでしょうか

 今はそのショーの会場で“皆様に名前だけでも憶えてもらえれば”という若手芸人みたいな気持ちですね。だから今回の結果は嬉しさと共に感動というか、恐怖というか何ともいえない気持ちになったのが正直なところです。というのも私自身がカスタムバイク業界にアシを踏み入れるキッカケになったのが2008年のニューオーダーチョッパーショーだったので……はじめて行ったショーで見た会場に飾られた煌びやかなカスタムバイクを前に“いつか自分もこんなバイクを造れるようになりたい”と思ったのが今に至った直接の理由なんです。
 
 そのショーで表彰されることになった今回の結果は純粋にただただ嬉しいですね。自分のバイクに票を入れてくれ認めてくれた方がいたこと。車両のオーナーさんに喜んでもらえたこと。他のお客様にもお祝いの言葉を頂いたこと……そうしたことが重なって今は“もっともっと頑張ろう”っていうヤル気に満ち溢れています。あと12年前の自分じゃないですが、この車両を見て、たとえば少しでも多くの人がカスタムバイクに興味を持って、仲間が増えるキッカケになってくれれば嬉しいですね。特に自分よりも若い世代の人の刺激になれたらいいな、と思っています」。

※ ※ ※

 彼のこうした言葉のとおり、極上のマシンが立ち並ぶカスタムショーの存在意義の1つに“業界に熱を生む連鎖”が存在するのは、まず間違いありません。それぞれのビルダーが手塩にかけた極上のカスタムを眺め、「自分もこういうバイクに乗りたい」「自分でもカスタムを創ってみたい」という想いが伝播し、それが新たな潮流となることは、どんな「ものづくり」に於いても変わらない真理なのではないでしょうか。

純正フレームのシートレールをドロップダウンすることでメインフレームからスイングアームにかけて美しいラインを実現するこのマシン。あえて左右出しとなったマフラーも気品と個性を演出します

 現在、世界的な「新型コロナウイルス」の蔓延により、多くのショーやイベントが中止、もしくは延期や形態を変えての開催などの措置がとられているのですが、2021年こそ今の状況が収束し、新たな“熱”を呼び込むカスタムショーが問題なく開催されることを、一人のカスタムファンとして願ってやみません。

  グルーヴワークスのショベル・カスタム……このマシンをキッカケに過去の溝尻毅氏のように一人でも多くの方がカスタムバイクの世界に興味を抱いて頂ければ何よりも幸いです。

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