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究極の盾、バイク用エアバッグが身近になってきた

バイクのニュース / 2021年1月15日 11時0分

MotoGPでは、エアバックの装備が義務付けられていますが、バイク用のエアバッグってどんなものか知っていますか?

■徐々に普及し始めたバイク用エアバック

 クルマにエアバッグは普通に標準装備されているものになりましたが、ではバイクは? MotoGPといった国際レースでは、2018年から全クラスにエアバッグの装備が義務つけられるなど、徐々に存在が浸透しつつありますが、バイク用のエアバッグってどんなものか知っていますか?

 クルマのように車両に装備されているのではなく、バイク用は着るのが基本。着用して身を守る作りになっているのです。バイク用のエアバッグは、ライダーが地面に衝突する絶妙なタイミングを図って作動しなければ効果が十分に発揮されないと言われています。速くても遅くても駄目というシビアなもの。なので、バイクやライダーの動きを感知して、エアバッグが作動するという、複雑なシステムがウエアの中に搭載されているのです。

2018年からMotoGP全クラスにエアバッグの装備が義務付けられました

 バイク用でワイヤレス式のエアバッグを世界で最初に手掛けたのがダイネーゼであり、その構想は1995 年から始まり、2007年のMotoGPバレンシアGPで初めて実践投入されました。レースをみていて、ライダーが転倒すると、肩周りがミシュランマンのように膨らんでいるのをみたことがありませんか? そう、あれがエアバッグなのです! 最初はプロライダーのみが着用できる特別なアイテムでした、しかし、MotoGPなどのレースで蓄積されたデータを元に市販化され、一般ライダーもその恩恵に預かることができるようになったのです。

 このエアバッグが、ぐっと身近になりました! というのも、最初に市販されたのは、レース用のレザースーツのみ、次には公道を走るためのジャケットに搭載されましたが、対応しているタイプが少なかったのです。さらに、コスト面でもちょっとお高くなる傾向があり、なかなか手が出しにくいというところもあったのです。

 しかし、ダイネーゼから、どんなライディングジャケットにも合わせられるベストタイプが登場し、アルパインスターズからもジャケットのインナーとして着込める汎用型が登場しています! それぞれの特徴をご紹介しましょう。

■DAINESE D-air SMART JACKET

ジャケットの上からでも、インナーとしてでもどちらでも着用が可能なDAINESE D-air SMART JACKET

 ダイネーゼのワイヤレス式のエアバッグシステム「D-air」から登場した、汎用型ジャケット「スマートジャケット」は、ジャケットの上からでも、インナーとしてでもどちらでも着用が可能。なので、どんなライディングにも合わせられ、普段着にもプラスして着用できてしまうという、気軽さが特徴となっています。このスマートジャケットには、MotoGPでも採用されている、ダイネーゼの最新ワイヤレス式のエアバッグシステムが搭載されていて、エアバッグが作動することにより、ライダーの背中、胸、鎖骨、首周りを守ってくれます。それだけではなく、最も危険とされる胸や首周りまで広範囲に渡ってカバーしてくれるというのだから頼もしい限り。

 このエアバックはすべての面が均一に約5cm膨らむ仕組みとなっているのですが、この”均一”というのが重要で、均一であるからこそ安全にも偏りがないということになるのです。エアバッグの中身には、ダイネーゼが特許取得済みの糸のような繊維「マイクロフィラメント」が張り巡らされており、ガスが内部に充満した際に一定の厚みに開く構造となっており、衝撃を受けた際にどこでも守ってくれる秘密となっているんですね。結果、そのプロテクション効果は、なんと普通のハードバックプロテクターの7個分にも及ぶというのだから驚きです。

 さらに、CE規格の「EN1621-4」も取得済み。CE規格とは、簡単に言うと、欧州で販売する製品に義務付けられた必須安全認証のことで、工業製品や電子製品、薬にまで細かい安全基準が定められています。厳しいテストを経て承認されるものであり、CE規格をパスした製品が安全とみなされ、ヨーロッパで販売することが許されると言うわけなのです。

 その中で「EN1621」はプロテクターの基準となり、「EN1621-4」はエアバッグ、「EN1621-2」がバックプロテクター、「EN1621-3」がチェストプロテクター、「EN1621-1」がその他のプロテクターと細かく部門が分かれていて、他のバイク用品も、グローブは「EN13594」、ブーツは「EN13634」という感じになっています。この厳しいCE規格のエアバッグだけの部門で、胸部と背中の両方を取得しているというのは、2021年1月現在、世界で唯一スマートジャケットに搭載されているD-air Roadだけなのです。これのスゴイところは、バックプロテクターや他のプロテクターとの併用もなく、エアバッグ単体で規格を取得してしまっているというところ。

ジャケット内に搭載されたコントロールユニットの7つのセンサーが、作動しエアバックが作動します

 システムの仕組みとしては、ジャケット内に搭載されたコントロールユニットの7つのセンサーが、ライダーの動きを毎秒1000回モニタリング処理をして、複雑なアルゴリズムでエアバッグを作動するかどうか判断。バイク用のエアバッグとしては初めて、停車中に追突された場合でもエアバッグが機能するという、最新テクノロジーが搭載されているのです。このスマートジャケットは、バッテリー式となっており、1回の充電で26時間以上の連続使用が可能で、面倒くさい接続も一切ナシ。さらに、折りたたむことができるので、バイクから降りたらバッグにしまい込めてしまえるのもメリットのひとつですね。

ジャケット内に装備されるエアバック

 サイズは、メンズに加えレディスも用意されており、それぞれXS~XXLの6つのサイズで展開されています。価格は10万8900円(税込)。

■Alpinestars TECH-AIR5

Alpinestars TECH-AIR5はジャケットのインナーとして着込むタイプのエアバック

 アルパインスターズのエアバッグシステム「TECH-AIR」からも、汎用タイプが登場しました。この「TECH-AIR5」はジャケットのインナーとして着込むタイプで、ジャケットの胸周りに約4センチの余裕があれば、どのジャケットの下にも着用が可能となっています。「TECH-AIR5」は、事故につながる動きを検出後、約20~40/1000秒の速度でエアバッグが膨張し、ライダーの肩、上腕部、胸、脇腹、背中といった上半身を守ってくれます。

各センサーとアルゴリズムを備えた電子コントロールユニットが、AIを活用してクラッシュ時にエアバッグを展開します

 エアバッグの作動には、3つのジャイロセンサーと3つの加速度センサー、計6個のセンサーとアルゴリズムを備えた電子コントロールユニットが、AIを活用してクラッシュ時にエアバッグを展開するタイミングを判断。このクラッシュを検出するアルゴリズムは、MotoGPライダーからのフィードバックに加え、数百万キロの走行データと数千回にも及ぶクラッシュデータを分析して改善が続けられてきたそうです。エアバッグの衝撃吸収性能は、従来のプロテクター装着時に比較すると、身体にかかる衝撃力が最大95%減少し、バックプロテクター18枚分のプロテクション効果にもなるそうです!もちろんEC規格の「EN1621-4」を取得済み。

リチウムイオンバッテリー式で、エアバックの駆動時間は約30時間

 こちらも面倒くさい初期設定など一切なく、ジッパーを閉めて、胸元のマグネットフラップを閉じたら接続完了。下にあるLEDディスプレイがエアバッグの状態とバッテリー残量を表示します。リチウムイオンバッテリー式で、駆動時間は約30時間。専用アプリと接続したら、スマホからエアバックの状況やバッテリー残量、さらには走行記録も見ることができるようになっています。サイズはXS~4XLで価格は9万8890円(税込)。

※ ※ ※

 同じ汎用型のエアバッグでもそれぞれの考え方により、異なった仕上がりになっていますが、安全面については、自分がどこを重点的にどうやって守りたいかによって好みが分かれるところでしょう。両方試して、納得を行くまで説明を聞いて、好みを見つけてみてくださいね。まだまだ、ちょっと気軽に……という価格ではないかもしれませんが、これまでジャケットに内蔵されているタイプが20万円前後だったことを考えると、身近にはなってきているんです。かなり頑張ってくれた価格ではないでしょうか。

それぞれ、メーカーの概念は違えど、ライダーを守るために生まれた最新テクノロジー。命よりも大切なものはありません。これを高いと見るか、安いと見るかはあなた次第。帰りを待つ人のためにも、プロテクションについて、一度考えてみてはいかがでしょう。

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