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排気量411ccのアドベンチャーモデル 空冷単気筒エンジンを搭載するロイヤルエンフィールド「ヒマラヤ」の乗り味は?

バイクのニュース / 2021年1月16日 11時0分

インドの巨大バイクメーカー「ロイヤルエンフィールド」から、過酷な山間部を走破する初のデュアルパーパスモデル「HIMALAYAN(ヒマラヤ)」が新登場。どのようなバイクなのでしょうか。

■インドの巨大バイクメーカーが生み出した、独自路線のアドベンチャーモデル

 サイドカバーに「HIMARAYAN」とあるこの「ROYAL ENFIELD(ロイヤルエンフィールド)」のバイク、SNSの動画などを見ると、海外の方はそのまま「ヒマラヤン」と発音していますが、2020年から日本国内でロイヤルエンフィールドのインポーターとなった「PCI(ピーシーアイ)」では「ヒマラヤ」と呼称するとのこと。このリポートでも「ヒマラヤ」に統一して解説を進めます。

 搭載されるエンジンは空冷4ストローク単気筒SOHC2バルブ、排気量は411ccです。そのボア×ストロークは78mm×86mmと、ロイヤルエンフィールドが重んじるロングストローク型。ヒマラヤ用に新開発されたエンジンです。

 その外観から解るようにバーチカルタイプ(直立した)シリンダーとし、丸みを帯びたケースカバーなどクラシカルなムードが漂いますが、カウンターバランサーを装備するほか、メンテナンス要求度の低い最新の設計が施されています。また空冷のため、シリンダーフィンなどから大柄な印象もありますが、前後長、高さともにコンパクト。車体の低い位置に搭載されていることが解ります。

 なにより、結晶塗装風なブラックフィニッシュと「R」のロゴを印象付けるカバー。その黒とシルバーの色合いがクールなことこの上ありません。24.3bhp/6500rpmの最大出力と、32N.m/4000rpmから4500rpmという最大トルクを生み出します。

 シャーシは、開発初期より「ハリス・パフォーマンス」からのサポートを受けつつ造られました。フロントサスペンションのホイールトラベルは200mm、前輪サイズは21インチ。リアサスペンションは、ロイヤルエンフィールドでは初となるモノショック+リンクサスペンションを採用。そのホイールトラベルは180mm。後輪は17インチで、タイヤはピレリのMT60を装着しています。

ロイヤルエンフィールド「HIMALAYAN(ヒマラヤ)」

 どんな道も走破するコンセプトのため、車体下部には220mmの最低地上高を確保しつつ、シートフレームを低い位置にしつらえ、シート高を800mmに抑えています。シートフレーム形状を見ても、パッセンジャーシート部分よりも一段低く抑えつつ、ライダー用シートの前後長が広く、ポジションの自由度も確保。タンクに近い前半部分のエッジをしっかり丸め、足つき性も上々に仕上げています。

 容量15リットルの燃料タンクのボトムラインはシートフレームと同一線上にあり、タンクのトップはステアリングヘッドよりも低く、低重心でありながら、サイドフェイスではしっかりと存在感を主張しています。タンクをガードするようなパイプワークが印象的で、このパイプフレームはメーター、ヘッドライトまわりを支えるステーを兼ねることで、ハンドルまわりの慣性モーメントを減らす設計です。ポジションそのものは、ライダーとハンドルバーに適度な距離感があり、アップライトなネイキッド的なもの。

 スタータースイッチですんなりと目覚めるエンジンのフィーリングは、いかにもロングストロークな単気筒エンジンです。マイルドな鼓動があり生命感がある反面、振動レベルは低く、ちょっとアクセルを開けて排気音を聞いてみても、ハンドルグリップやシートにビリビリくる振動がないのにまず驚きました。

 ギアを1速に入れクラッチを繋ぎます。身近なサンプルとしてヤマハ「SR400」と比較したら、と思っていたのですが、ヒマラヤのエンジンフィーリングはトルクとパワーを上乗せしたカワサキの「エストレヤ」のようです。パワーフィールはトロロロロンという滑らかな鼓動感が続くもので、気持ち良さが第一印象です。

排気量411ccの空冷4ストローク単気筒SOHC2バルブエンジンを搭載。エキゾーストパイプはフレームのダウンチューブに沿ったレイアウト

 いくつかの信号待ちで気が付いたのは、ド新車状態にも関わらずシフトフィールが滑らかで、クラッチの切れもつながりもスムーズ。エンジンのルックスや古風なロイヤルエンフィールドという自分の中の勝手なイメージがここでも壊れます。

 市街地を走ると、少しブレーキの効き味が甘いかな、という印象を持ちますが、フロントフォークの初期のストローク感や、フライホイールの重量により加速もエンジンブレーキも穏やかなレスポンスのエンジンのキャラクターを考えると、これはこれでとてもまとまっています。

 サイドから見ると長くやや大柄ですが、ライダー目線からはほぼほぼネイキッド的視界の良さも市街地の走りを軽快に感じさせます。

 高速道路では25馬力に欠けるスペックだけに、追い越し車線の猛者にはなれませんが、それでもメーター読み120km/h巡航は可能だし、ストレスなく走れるので気になりません。いや、スクリーンの恩恵でむしろ快適。振動が意外とない。どの速度でもミラーの後方視界はバッチリで、シート、グリップ、タンクなどにいやな振動もありません。乗る前に想定した「411ccだと足りないのかな」という想定は早くも消え去ります。

 ワインディングルートでは、前輪90/90-21、後輪120/90-17という細身のタイヤだけに、200kgに迫る車体に不足では……これも良い意味で裏切られました。ロイヤルエンフィールドが開発中、サーキットでもヒマラヤを走らせ、アドベンチャーバイクこそロードセクションの良さが必要、とばかりに鍛えたのがよく分かります。なにより、市街地、高速道路の軽快さとスタビリティ、ワインディングでの身のこなしを含め、さすがフレーム作りのプロが関与しただけのことはある、と納得です。

未舗装の地面を着実に突き進む。他のアドベンチャーモデルとは一線を画す車体構成は独特かつ侮れないもの

 最後にダートでの印象も。じつは一番ビックリしたのがこのセクションでした。電子制御にモノを言わせ、排気量から繰り出されるパワーを使いこなす現代のアドベンチャーバイク達。それに比べたら250ccのデュアルパーパスを拡大したようなヒマラヤですが、丸い感じのパワー特性も、市街地ではもう少し欲しいと思ったブレーキ性能も、ややソフトなフロントフォークも、すべてはダートに合わせ込んだことが解ります。

 1速のギア比がやや高めなので、タイトターンでも1速のボトムから立ち上がり域を上手く使えます。アクセルをワっと開けてもしっかりと後輪がグリップしつつ前に進むので、つい楽しくて全開にしてみました。トルクを全部路面に伝える印象で、無駄に滑りません。これ、じつはもの凄く重要で、エンジンのボア×ストローク比もこれのためか、とうなります(個人の感想です!)。

 ヒマラヤの開発に、インド人のオフロードライダーにして、2015年から毎年ダカールラリーにも参戦しているCS.サントシュ選手(ダカールラリー2021には「Hero MotoSports」のライダーとして参戦)が参画してテストをしたことも、この走りを生む源泉だったのでしょう。ここでもシャーシがパワーに勝つ印象で、自分のスキルと対話しながら思う存分楽しめるコトができました。

 侮りがたし、ヒマラヤ。それがこのバイクを一言で表現する言葉になります。

※ ※ ※

 ロイヤルエンフィールド「ヒマラヤ」の価格(消費税10%込み)は62万5000円です。

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