オフロード走破力とクルージング性能を両立なんてありえない!? オールラウンダーとして進化したホンダ「CRF250 RALLY」
バイクのニュース / 2021年1月19日 13時0分
ダカールラリーに参戦する「CRF450 RALLY」のイメージを踏襲した外観と、クラスを超えた存在感やツーリング性能で250ccアドベンチャーという新ジャンルを確立させた「CRF250 RALLY」が、2017年のデビュー以来初のフルモデルチェンジとなりました。モーターサイクルジャーナリストの青木タカオさんが試乗します。
■ラリーマシンイメージを250ccに!!
ダカールラリー2021で2年連続の二輪車部門総合優勝を果たしたホンダ。そのワークスマシン「CRF450 RALLY」のデザインエッセンスを盛り込み、2017年2月に登場したのが「CRF250 RALLY(ラリー)」です。
大型スクリーンや大容量燃料タンクなどを装備したアドベンチャーモデルは、大排気量車が得意とするカテゴリーでしたが、扱いやすい軽二輪トレール「CRF250L」をベースにクラスを超えたツーリング性能を発揮。“250ccアドベンチャー”という新ジャンルを構築しました。
2020年12月に発売された新型は、横剛性25%減、軽量化マイナス2150gを達成した新設計スチール製セミダブルクレードルフレームに、吸排気系などを見直した水冷DOHC4バルブ単気筒エンジンを搭載。レバー負荷を従来比約20%低減するアシストスリッパークラッチを新採用し、メーターも新型となっています。
今回は「CRF250 RALLY<s>」に試乗しました。下記の数値が示すとおり<s>は足が長く、車高のあるモデルです。
■サスペンションストローク(フロント/リア)
CRF250L:235mm/230mm
CRF250L<s>:260mm/260mm
CRF250RALLY:235mm/230mm
CRF250RALLY<s>:260mm/260mm
■シート高
CRF250L:830mm
CRF250L<s>:880mm
CRF250RALLY:830mm
CRF250RALLY<s>:885mm
■最低地上高
CRF250L:245mm
CRF250L<s>:285mm
CRF250RALLY:220mm
CRF250RALLY<s>:275mm ※樹脂製スキッドプレートを装備
身長175cm/体重67kgの筆者(青木タカオ)がシート高885mmの車体にまたがった状態(モトクロスブーツを装着)。片足であればブーツの底全面が地面に届く
ヒップポイントの着座面が「L」では170mmであるのに対し、「RALLY」は190mmと幅が広く、さらにクッションもコンフォート性に配慮して5mm厚い。そのため「RALLY<s>」はシート高885mmともっとも高く、オフロード車に慣れていない人は跨るのに少し手こずるかもしれません。
ただし、着座すると柔らかい前後サスペンションが沈み込み、身長175cm/体重67kgの筆者だと両足をおろしても指の付け根まで届き、許容範囲内です。大排気量アドベンチャーと比較すれば車重も152kgと軽く、250ccクラスならではのフレンドリーさは健在です。
<s>ではないスタンダードモデルだとカカトまでベッタリ地面に届き、足つき性は格段に良くなります。乗り降りのしやすさを重視するならスタンダードがベスト。迷っているなら、販売店などで乗り比べするべきでしょう。
■振動低減で高速道路も快適に!
高速道路での6速100km/h巡航は6000rpmほど。従来型より6速がハイギヤード化され、最高出力24PSを発揮する9000rpmまでまだまだ余裕たっぷり。スクリーンと張り出したタンク&カウルで抜群のウインドプロテクション効果を発揮し、ゆったりとしたライディングポジションも相まってハイスピードレンジも快適そのものです。
振動の軽減や燃料タンク容量増、シート形状やギア比の見直しなどのほか、あらゆる面で長い距離を走るためのツーリング性能が向上
ハンドルバーにインナーウエイトを採用し、ワイドステップにラバーを追加することで振動もほとんど感じません。シートも座面幅が20mm広いだけでなく、ラバーマウント化され、ライダーの疲労を低減。飛躍的にコンフォート性を向上しています。
従来型では10リットルだった燃料タンク容量は12.8リットルーにスケールアップし、WMTCモード燃費値34.8km/Lの好燃費と併せて、想定航続距離は400kmを超えます。開発責任者の杉山栄治さん(本田技研工業株式会社 二輪事業本部ものづくりセンター)によれば「CRF1000L アフリカツインと走っても給油タイミングがほぼ同じになる」とのこと。タンク拡大も新型の大きな魅力と言えるでしょう。
高速道路を苦にしなければ、オフロードエリアも身近になるはずです。まず、林道へ辿り着くまでに走る狭くスリッピーな道も、新採用のアシストスリッパークラッチがシフトダウンに伴う急激なエンジンブレーキによる後輪ホッピングを軽減し、安心して走れます。
前後サスペンションもしなやかに動き、装着されるタイヤIRC「TRAILS GP-21F/22R」が舗装の悪い荒れた路面もしっかりとトラクションをかけて進めてくれるので、ダート区間に入るまでもキビキビ走ってくれるのでした。
■リアが流れてもコントロールしやすい!!
オフロードに入ると、従来型で感じた重さが影を潜めていることに気づきます。ハンドリングが軽快で、コーナーも無理が効く。ストロークを増やした前後サスペンションが頼もしく、アクセルを大きく開けていくと旋回時にリアホイールが流れ出しますが、フレームの横剛性が硬すぎず、サスペンションもしなやかに動いてくれるので挙動は一定に落ち着いていて、スロットルワークで車体をコントロールしやすいのです。
ホンダ「CRF250 RALLY<s>」に試乗する筆者(青木タカオ)
ベース車の「CRF250L<s>」でもハンドリングの軽快感と素直さに舌を巻きましたが、「RALLY<s>」でもキャスター角を同一とし、オンロード寄りにしなかったことも功を成しているのでしょう。
また、ヘッドライトがフレームマウントのため、ステアリングの動きを邪魔するものが一切なくクセがありません。1速から5速をローギヤ化したエンジンも駆動力が欲しいところでパンチがあり、バランスを崩しそうになったときもアクセルをひと開けして立て直すことができます。
オールラウンダーとして、オフロード走破力と高速クルージング力という両立するのが難しい両極端な性能をレベルアップした新型「CRF250 RALLY<s>」。爆発的ヒットの予感がしてきます。
■車両価格(消費税10%込み)
CRF250RALLY:74万1400円
CRF250RALLY<s>:74万1400円
CRF250L:59万9500円
CRF250L<s>:59万9500円
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