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妥協なき造り込みのヤマハ「SR」ロングフォーク・チョッパー そこに込められた創り手の思いとは

バイクのニュース / 2021年2月15日 11時0分

日本のチョッパー市場においては2005年頃から国産車をベースにしたカスタムが流行の兆しをみせましたが、滋賀県大津市の2%er(ツーパーセンター)が手掛けた一台はその集大成ともいえる出来栄えとなった一台です。どのような構成になっているのでしょうか。

■国産車をベースにしたチョッパーを作り続ける希少な存在

 1950年代にアメリカで芽吹き、60年代、70年代と花を咲かせたチョッパーというカスタムカルチャーですが、本来は“カスタムのベース車両が何か”という部分を問われるものではありません。

 歴史を振り返ると、生まれた場所や時代背景からアメリカのバイクブランド「ハーレーダビッドソン」のモデルがカスタムベースの中心であることは否めないのですが、過去には英国「トライアンフ」や日本の「ホンダ」CB750などをベースにしたマシンが製作され、シーンを彩ってきました。

 また、日本の市場に目を向けても2005年頃から“ハーレー以外”をベースにしたチョッパーが散見されだし、一時期、盛り上がりを見せていたことは当時のシーンを体感した方なら覚えているのではないでしょうか。

 その“ハーレー以外”のチョッパーシーンの中で中心になった車両にヤマハ「SR」や「XS」などがあったのですが、多くのショップがこの手のマシンを手掛けたものの、ユーザーがハーレーに乗り換えたり、「手間はかかるが、金にならない」という作り手側のビジネス的な側面から撤退していった過去があります。

 そうした中、ヤマハSRを中心にしたチョッパービルドを手掛け、現在ではその第一人者といっても過言でない人物が滋賀県大津市にある“2%er(ツーパーセンター)”を率いる山口隆史氏です。

■見た目とは裏腹な素直なハンドリング

 ここに紹介するのは、その2%erが手掛けたSRチョッパーの中でビルダーの山口氏曰く「現時点での技術の粋を注いだもの」とのことですが、確かに車体のフィニッシュの姿はハーレーをベースにしたチョッパーにもヒケを取らない威風堂々としたもの。これまで同店といえば、荒々しい雰囲気のストリートチョッパーが中心であり、それは今も変わらないのですが、この“GREEN FROG”と名付けられた1台は“力を込めた”ことが明確に伝わるディテールワークが随所に与えられたものとなっています。

21インチオーバーとおぼしきジャイロスプリンガーは2%erによるワンオフ(一品もの)を装着。ここはトリプルツリーとボトムロッカーのセッティングによって正しいトレール量となっており、驚くほど素直なハンドリングに仕上げられています

 特にその中で注目すべきポイントがフロントに装着されたフォークなのですが、これはフロントアクスル付近にスプリングを備える“ジャイロスプリンガー”という形式を採用。これは70年代のアメリカのシーンで見られた手法なのですが、山口氏の手によって見事に現代的なアップデートが施されています。

 通常、この“ジャイロスプリンガー”はフロントホイール部分に重量物が集中するゆえ、ハンドリングが重くなり、セッティングも難しいのですが、こうした部分を考慮し、このマシンはトリプルツリーのオフセット量やボトムロッカーの長さでトレールを補正。特徴的な構成ながら、一般的なバイク好きの皆さんが想像出来ないであろう素直なハンドリングに仕上げられています。

 たとえばチョッパーといえば装飾性ばかりに重きを置かれ、“走らないもの”というイメージを持つ方も多いと思いますが、正しくディメンションを追求したものなら、その限りではありません。ちなみにこのフォークを製作するにあたり、山口氏はトリプルツリーを2回、スプリングを幾度となく造りかえ、適切なセッティングを導き出したとのことですが、そんな妥協なき姿勢が車体の随所から伝わるものになっています。

■リジッド風でありながらリア・サスペンションも装備

 また、“GREEN FROG”はリアサスペンションを持たないリジッドフレームに見えながら、リアアクスル部にサスが内蔵されるプランジャーという方式が採用されているのですが、そのセッティングにしても然り。フレームと一体化されたタンクにしてもオイルイン構造のSRフレームでガソリンがパーコレーション(ガソリンがキャブレターに到達するまでに気化し、燃料パイプ内に気泡が生ずる現象)を起こさないよう中空構造とし、“ストリート”での走りも念頭に置いている部分は見事です。こうした要素のすべてには言うまでもなく同店の経験が息づいています。

山口隆史 1977年生まれ。滋賀県出身。学生時代に地元のSRショップ、チャックボックスでキャリアをスタートし、京都のH-Dディーラーやカスタムワークスゾン等を経て、2012年に“2%er(ツーパーセンター)”を設立。以来、ヤマハSRを中心に意欲的にカスタムを製作。また、ショップが取り扱うパーツはオリジナル、汎用品合わせて400アイテムを超えるラインナップで、東南アジアのシーンでも日本のSRチョッパーの第一人者として注目を集める人物です。近年は自社のYouTubeチャンネルでの動画配信にも力を注ぎます

「基本的には70’sスタイルを踏襲するものの、この1台ではあまり昔の資料などを見ずに自分の持つイメージを取り入れることに留意しました。自分のバランス感覚やオーナーさんの体格、街中での走りの性能、カスタムショーでの存在感……現時点でのウチの集大成といえるチョッパーです」と語る山口氏。2%erといえば、今やアジアの国々の人々からも注目され、高い人気を博すショップとなっているのですが、この1台を見てもその理由が明確に分かるような気がします。

 こうした極上の出来栄えを見せる車両を通して、「ベースマシンが何であるか」ということが問われないチョッパーの根本が一人でも多くの方に伝われば幸いです。

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