生産累計200万本達成!? ヤマハが自動車向けに開発した機能部品「ヤマハパフォーマンスダンパー」をバイクにも。どんな機能が?
バイクのニュース / 2021年2月15日 17時0分
「ヤマハパフォーマンスダンパー」は、乗用車の主要部に搭載する車体制振ダンパーです。2004年に量産品として初採用されて以来、2020年で累計200万本生産し、その技術はバイク用部品としてもラインナップします。どのような装置なのでしょうか?
■1mm以下のごくわずかな車体の変形や振動を制振する“棒”
バイクに乗っている時、何に魅力を感じるかは人それぞれでしょう。右手ひとつでコントロールできる自在の加速力、コーナーで車体をバンクさせた時に感じられるG(重力)、トンネルや山あいに木霊にする歯切れのいい排気音……などなど千差万別。心地よさのツボは、ライダーとバイクの数だけあるに違いありません。
そのなかのひとつに、身体へ伝わってくる「バイブレーション」を挙げる人も多いのではないでしょうか。スロットルの動きに連動して、大きくなったり小さくなったりするそれは、エンジンとダイレクトにつながっている気分を高めてくれる大切なフィーリングです。スムーズに回る4気筒でこれを重要視する人はあまりいませんが、単気筒や2気筒、そして最近はメジャーになった3気筒には、それぞれ独特のバイブレーションがあり、ひとつのアイデンティティになっています。
さて、このバイブレーションを「鼓動」と表現すると、いかにもまろやかな雰囲気ですが、場合によっては不快な「振動」に感じる人がいるかもしれません。やせ我慢しているうちはヒロイックな気分になれても、手足がしびれたり、ハンドリングや安定性に影響を及ぼすのは考えもの。それを軽減、もしくは解決すべく、ヤマハが考案した快適パーツが「ヤマハパフォーマンスダンパー(YAMAHA Performance Dampers)」です。
走行中の車体は常に変形と振動を繰り返しているというCGイメージ(ヤマハ発動機公式チャンネルより)
これは当初、4輪向けに開発されたものでした。ヤマハは4輪メーカーとも関係が深く、エンジンやサスペンションといったさまざまな分野の研究開発に関与しています。その中で、走行中の乗用車はごくわずかな変形を繰り返し、それが乗り心地や振動に影響していることを解析。だったらそれをサスペンションのように吸収すればいいのでは? というアイデアが発端になりました。
サスペンションの機能のひとつに、減衰力(ダンパー/ダンピング)の最適化があります。フロントフォークやリアサスペンションにはスプリングが備わっていますが、野放しだとずっとボヨンボヨンと動いてしまいますよね? それをある程度のところで、引き締める役割です。
検証のため、4輪のエンジンルームやトランクルームに、ダンパーをつっかえ棒のように装着したところ、ハンドリングや走行安定性が向上。さらにはドアの開閉音やオーディオの質にも変化が見られ、上質さが増したというから驚きです。後にヤマハパフォーマンスダンパーと名づけられたそれは、トヨタを筆頭とする数多くのメーカーに採用され、累計200万本(2020年1月時点)を達成。今も着々と実績を積み重ねています。
2輪車用「パフォーマンスダンパー」(写真は「SR400」用の装着例)
開発したのはヤマハですから、バイクに転用するのは自然の流れと言えるでしょう。2011年には「ヤマハパワービーム(YAMAHA POWER BEAM)」の名称で「TMAX」用のオプションパーツとして製品化。現在は「SR400」、「セロー250」を筆頭とする単気筒の他、「YZF-R25/R3」、「MT-07」、「テネレ700」といった2気筒、さらには3気筒の「XSR900」や「トレーサー900」などもフォロー。そのラインナップは16機種におよびます。
見た目はご覧の通り、リアサスペンションからスプリングを取り除いたようなカタチをしています。内部はピストン、オイル、高圧窒素ガスなどで構成され、エンジンや車体が発する微細な振動を吸収する構造です。
効果はてきめんなのですが、鵜呑みにできないという人もいるでしょう。そこで今回、ダンパーの仕事を疑似体験できるツールを用意。同じ形状のふたつのアルミ材をフレームに見立て、ひとつはそのまま、もうひとつにはパフォーマンスダンパーを装着してハンマーで叩いている様子を動画で撮影してみました。
いかがでしょう? 未装着のものは「キンキン」と甲高い音が鳴り、それが余韻として残ります。一方、パフォーマンスダンパー装着後のものは、「カツカツ」と音質が低く、すぐに収束。手に伝わってくる衝撃と振動も最初の一発だけで済みます。
街乗りはもちろん、ロングツーリングや荷物満載時の疲労蓄積に差がでるのは間違いなく、距離を乗る人ほど、大きな恩恵を受けられるに違いありません。価格は3万800円からと比較的手ごろで、ボルトオンでの装着が可能です。愛車をより楽しく、より快適にするパーツとして、ツウなライダーに支持されています。
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