最高時速270キロの電動レーサー『エゴ・コルサ』とは? 電動バイクレース『MotoE』マシンは常に進化している
バイクのニュース / 2021年3月4日 11時0分
電動バイクによって争われるチャンピオンシップ『MotoE』は、単一メーカーが供給する電動レーサー『エゴ・コルサ』によって争われます。そのスペックは? 速さは? 気になる詳細を見ていきましょう。
■見た目はMotoGPマシン、でも車重は100kg以上も重いMotoEマシン
FIM Enel MotoE World Cup(以下、MotoE:モト・イー)は、2019年からはじまった電動バイクのチャンピオンシップです。MotoGPのヨーロッパ開催グランプリに併催され、2021年は6戦7レースが予定されています。
MotoEはマシンもタイヤもそれぞれ単一メーカーによって供給されています。つまり、MotoEライダーは同じマシン、同じタイヤでレースを戦うわけです。
まず、MotoEのタイヤはミシュランが供給しています。決勝レースが5周から7周と短いため、熱が入りやすく短時間で性能を発揮するタイヤが必要となります。2020年はフロントタイヤのコンパウンドが変更され、リアタイヤについては2019年に比べて大幅に変わり、コンパウンド、構成などもアップデートされました。タイヤの中心部を小さく高くし、MotoGPクラスのタイヤに近いものになったのです。
そしてMotoEマシンは、イタリアの電動バイクメーカー『Energica Motor Company』(以下、エネルジカ)の電動レーサー『Ego Corsa(エゴ・コルサ)』が供給されています。エネルジカによるMotoEマシンの供給は、2022年まで継続することが決まっています。
MotoEマシンの充電は『Enel X』(欧州の大手電力会社『Enel』のエネルギーサービス部門)を通じて提供する充電ステーションで行なわれる
2020年型『エゴ・コルサ』は、最高速度270km/h、出力は約120kWで、最低車両重量は260kgとヘビー級です。車格としては1000ccクラスですが、MotoGPマシン(排気量1000cc)の最低重量157kgに対して100kg以上も重いことになります。軽量化は今後の課題と言えるでしょう。
また2019年型と比べると、低回転域のトルクが約10パーセント向上し、2019年型が200Nm(0から5000rpm)だったのに対し、2020年型は215Nm(0から5000rpm)となりました。オーリンズ製フロントフォークもヘビー級の車重を受け止めるために、よりゆっくり沈むよう改善されています。
エネルジカがMotoEに供給する電動レーサー『Ego Corsa(エゴ・コルサ)』
さて、MotoEマシンはどのくらいの速さなのでしょうか。ここで2020年のMotoEと、Moto3クラス(4ストローク単気筒250ccレーサーで争われるクラス)のタイムを比較してみましょう。以下はグランプリで行なわれた全セッション、全ライダーの中から「最速タイム」と「最高速」を抽出したものです。
■第2戦スペインGP(ヘレス・サーキット)
MotoE【最速タイム】1’47.656【最高速】228.3km/h
Moto3【最速タイム】1’45.465【最高速】216.4km/h
■第3戦アンダルシアGP(ヘレス・サーキット)
MotoE【最速タイム】1’47.584【最高速】227.3km/h
Moto3【最速タイム】1’45.165【最高速】217.3km/h
■第7戦サンマリノGP(ミサノ・サーキット)
MotoE【最速タイム】1’43.261【最高速】225.9km/h
Moto3【最速タイム】1’41.899【最高速】213.0km/h
■第8戦エミリア・ロマーニャGP(ミサノ・サーキット)
MotoE【最速タイム】1’42.910【最高速】224.5km/h ※2レース
Moto3【最速タイム】1’41.155【最高速】213.4km/h
■第10戦フランスGP(ル・マン-ブガッティ・サーキット)
MotoE【最速タイム】1’43.465【最高速】236.3km/h ※2レース
Moto3【最速タイム】1’41.399【最高速】226.6km/h
MotoEの最速タイムは、Moto3クラスの約1秒から2秒落ちということがわかります。一方、最高速はすべてのサーキットでMotoEが上回っています。
電動バイクは立ち上がりの加速がとても良いのですが、車体が重いため切り返しや低速コーナーの多いサーキットでMotoEマシンを走らせるのは、より難しいそうです。
これを証明するように、ストレートが多くコーナー間の切り返しの少ない高速サーキットであるレッドブル・リンク(2019年オーストリアGP)では、最速タイムがMoto3クラスのタイムを上回りました。上記のタイム比較は「最速タイム」と「最高速」だけなので一概には言い切れませんが、おおよそのタイムや傾向として捉えることはできるでしょう。
2019年のオーストリアGPでは、MotoE最速タイムがMoto3クラスを上回った(写真は決勝レース)
2021年シーズンのMotoEは、3月2日から4日にかけてスペインのヘレス・サーキットで行なわれる公式テストから始動します。
シーズン3年目を迎え、電動レーサー『エゴ・コルサ』はどのような進化を遂げるのか、楽しみですね。
■2020年型『Ego Corsa(エゴ・コルサ)』主要諸元
モーター:永久磁石AC、油冷
最高速度:270km/h
最高出力:約120kW
トルク:215Nm(0から5000rpm)
バッテリー:高電圧リチウムイオンバッテリーパック(約20kWh)
再充電:急速充電DCモード4
ホイール:鍛造アルミニウム
フェアリング(CRPテクノロジー):複合材料Windform
タイヤ:ミシュラン
フレーム:スチールチューブラートレリス
スイングアーム:鋳造アルミニウム
サスペンション:オーリンズ製
フロントブレーキ:330mmスチール製Tドライブローター、ブレンボ製GP4ニッケルメッキ4ピストンモノブロックラジアルマウントキャリパー、Z04パッド、ブレンボ製マスターシリンダー
リアブレーキ:220mmローター、ブレンボ製キャリパー
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