電動バイクレース『MotoE』が実施する、電動バイクならではの安全対策とは?
バイクのニュース / 2021年3月9日 13時0分
2019年から始まった電動バイクによるチャンピオンシップ『MotoE』は、初年度に大きな火災に見舞われ、マシンや機材の多くを失いました。そこで気になるのが「果たして電動バイクは安全なのか?」ということ。安全対策について迫っていきましょう。
■2019年3月、ヘレスで起こった火災
FIM Enel MotoE World Cup(以下、MotoE:モト・イー)は、2019年からはじまった電動バイクのチャンピオンシップです。MotoGPのヨーロッパ開催グランプリのうち数戦に併催され、2021年シーズンは6戦7レースが予定されています。
MotoEを争う電動レーサーは、イタリアの電動バイクメーカー『Energica Motor Company』の『Ego Corsa(エゴ・コルサ)』で、タイヤはミシュランによって供給されています。MotoEはシン、タイヤともに単一のメーカーによって争われるチャンピオンシップなのです。
まだスタートしたばかりの電動バイクによるチャンピオンシップでは、どのように安全を確保しているのでしょうか? そこには電動バイクレースならではの対策がありました。
MotoEは初年度である2019年3月、スペインのヘレス・サーキットで行なわれた開幕前のテスト中に火災が発生しています。それはテスト1日目を終了した夜に『Eパドック』と呼ばれる全MotoEマシンや機材が集まる場所でのことでした。
幸い人的被害はありませんでしたが、この火災によりMotoEマシンや機材のほとんどが焼失する甚大な被害となり、2019年MotoEの開幕戦は、当初予定されていた5月上旬スペインGP(ヘレス)から、7月上旬のドイツGPに変更されました。
まずは、この火災を踏まえた安全対策を確認していきましょう。Eパドックの設営には、難燃性素材が用いられています。ちなみにEパドックとは、サーキットに常設されているMotoGPのピットボックスとは違い、開催地に設営されるMotoE参戦チームのピットボックスが集まるエリアのことです。ここにはスペアマシンが収納されるピットや、MotoEのトークイベントなどが催されるスペースなども併設されています。
また、MotoEマシンの充電ステーションはEパドックから少し距離を取って設営され、さらに、このEパドックと充電ステーションは、24時間体制で特別な消防スタッフによって、バッテリーの状態が監視されています。電動バイクの扱いは、内燃機関のバイクとは違います。そのため、万が一の際に対応できる消防スタッフが対応しているのです。
特別な訓練を受けた消防スタッフがEパドックと充電ステーションを24時間体制で監視(写真は2019年のもの)
レース中はどうでしょうか。前述のように、電動バイクはアクシデントが起こったときに電動バイクならではの対応が迫られることがあります。そのため、MotoEマシンには、ライダーやマーシャルに、マシンの状態が危険かどうかを知らせるライトが取り付けられているのです。転倒時、このライトがグリーンであれば、内燃機関のバイクのように扱うことができますし、ライダーはマシンを起こして再びレースに復帰できます。2019年、2020年にも、転倒からレースに加わった例がいくつかありました。
しかし、もしライトが赤であれば、特別な訓練を受けたスタッフが特別なツールによって対応しなければなりません。また、MotoEマシンが搭載するリチウムイオンバッテリーは消火が難しいため、発火の際は特別な消火手順がとられることになっています。
このように、安全対策についてはMotoGPなどの内燃機関のバイクレースと違いがあるわけです。どんなレースでも同じように、安全面の向上という意味ではどこまで対策しても『絶対に大丈夫』ということはありません。MotoEも引き続き、さらに改善されていくことになるでしょう。
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