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2輪系ライターの、仕事とお金 ~ベテランと中堅の狭間にいる伊丹孝裕の場合~ Vol.3

バイクのニュース / 2021年3月27日 9時0分

バイク専門誌の編集長を経て、フリーランスのライター(テストライダー)、ジャーナリストとして2輪メディア業界で活動する伊丹孝裕さんの、仕事とお金のリアルなお話です(全11話)。

■Vol.3 記事が完成するまで 2輪系ライター、伊丹孝裕さん(筆者)のおはなし

 2輪媒体で記事を1本作るのに、どれだけの人が関わるのか? ライターの仕事を語る取っ掛かりとして、まずはその説明から始めていきましょう。

 2輪雑誌の場合、必要な人員はおおよそ次の通りです。

・編集
・カメラマン
・ライター
・ライダー
・デザイナー
・DTP(DeskTop Publishing)オペレーター

 といったところで、それぞれに1名ずつ配置されるのが、理想のパッケージです。

 実際に本が出来上がるまでの手順は、ざっと次のような感じ。

1. 編集が企画を立て、カメラマン、ライター、ライダーを手配
2. 編集はそれぞれに求める内容を相談&指示
3. 撮影車両が必要ならメーカーに手配し、撮影場所を決定
4. 撮影・取材終了
5. カメラマンは撮影データを整理、修正、補正して納品
6. 編集は撮影データの仕上がりをチェック
7. 編集は思い描く誌面をデザイナーと打ち合わせ
8. 編集はラフと呼ばれるイメージスケッチを描き、デザイナーに提案
9. デザイナーはそれを元に誌面のレイアウトに着手
10. 編集の意図と異なる場合は都度修正しながらレイアウトが完成
11. ライターは完成したレイアウトに従って、原稿を書く
12. 編集はライターから送られてきた原稿をチェック
13. ここでも意図と異なる場合は都度修正しながら原稿完成
14. 原稿をDTPオペレーターに送り、レイアウトと文字を組み合わせる
15. 誤字脱字を修正し、責了または校了と呼ばれるほぼ完成状態へ持っていく
16. 印刷所へ入稿
17. 本が納品される

 ふう……現実にはこの順番が前後したり、追加されたり、並行したり、振り出しに戻ったりと、そりゃまぁいろいろです。その過程でカメラマンはブチ切れ、デザイナーは機嫌を損ね、印刷所の現場担当者が暴れ出す。そういった果ての無き関門をかいくぐりながら、雑誌が出来上がるわけですが、その矢面に立つのは常に編集者。謝るのが仕事の中心と言ってもそれほど的外れではありません。

ライターと編集とライダーを兼ねるのが通常スタイルの筆者(伊丹孝裕)。新型が登場するといちはやく試乗

 こうして書き連ねていくと、ライターって楽だと思いませんか? 番号で言えば、出番はほぼ「11」だけと言ってもよく、写真にインパクトがなければカメラマンのせい。ライディングフォームが無様ならライダーのせい、誌面が美しくなければデザイナーのせい。元をたどれば、すべて編集のせい、という展開になり、ライターには意外と火の粉がかかってこなかったりして。

 しかしながら、当然それほどうまく事は運びません。なぜなら2輪雑誌界は慢性的な人手不足ゆえ、ライターが編集もカメラマンもライダーも兼任するケースなんてザラです。なんならデザイナーもDTPオペレーターも兼ねる場合もあり、さらには営業も販売も広告も担当して、たったひとりで本をまるっと作って売る……という強者も実在します。

 僕(筆者:伊丹孝裕)の場合は、ライターと編集とライダーを兼ねるのが通常スタイルで、まれに撮影も担当。そうなると、いきなり「1」から「15」までのステップを受け持つことになります。その中には、メーカーに撮影車両(メーカーが広報活動用に用意しているため、広報車両と呼びます)を借りに行き、洗車して返却することも含まれたりしますから、常に時間は切迫。締め切り前は、目まぐるしい日が続くことになります。

 ところで常々思っていることですが、この「締め切り」って言葉がそもそもよくない。「締めて、切る」ってどんだけ物騒なんだって話ですよ。殺伐とした風景しか頭をよぎらず、そりゃあ、編集者の心も荒んでいくってものです。「ゆるふわ」くらいのソフトな語感があればいいのですが、それはさておき、ウェブ媒体の場合はどうなのか?

 一概には言えませんが、ウェブ媒体の多くは、おおよそ決まったフォーマットを持っています。一度作ったカタチに大きく手を加えないのであれば、デザイナーを必要とせず、DTPオペレーターは最初から存在しません。個人のブログ同様、ひとりで完結することも難しくなく、そういう意味では、体制はよりコンパクトです。

 それよりも、ウェブ媒体の編集者はいかに鼻が効くか。端的に言えば、いかにバズる記事を提供できるか。そのためのセンサーやリサーチ力がカギとなるのでしょう。

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