1984年公開の映画、“ストリート・オブ・ファイヤー” そこに登場したハーレーと日本への影響を考察する
バイクのニュース / 2021年3月28日 13時0分
1984年公開の映画『ストリート・オブ・ファイヤー』には様々なバイクが登場します。ここでは主役のトム・コーディーが走らせたハーレーダビッドソンと日本のシーンへ与えた影響を考察していきます。
■心に残るバイク登場映画
1969年に公開された“イージー★ライダー”や1991年の“ハーレーダビッドソン&マルボロマン”など“バイク”が主役といえる映画(マルボロマンの内容は、その限りではありませんが……)がこれまで数多く作られてきましたが、中には、ほんのチラッと数十秒、もしくは数分登場しただけで妙に心に残る作品が存在します。
たとえば1989年の“ブラック・レイン”のオープニングでマイケル・ダグラスが走らせたハーレーのスポーツスターベースのXLCR(1977~1979年まで生産されたハーレーのカフェレーサー)レプリカや、1994年に公開された“パルプフィクション”でブルース・ウィリスが盗んだリベラ(1973年に米国のカリフォルニアで創業されたハーレー用パフォーマンスパーツメーカー)4バルブヘッドを搭載したハーレーのFXRチョッパー、また“トップガン”でトム・クルーズが走らせたカワサキ・ニンジャなどが筆者(渡辺まこと)のアタマの中に思い浮かぶのですが、その中で今回は1984年に公開された映画、“ストリート・オブ・ファイヤー”に登場したマシンについて解説していきます。
ウォルター・ヒル監督によるこの作品、その大まかな内容はというと「女性歌手が地元での凱旋コンサート中、バイカー集団に拉致られ、それを流れ者の元恋人が救いに行き、再び街を去る……」という極めて単純なもの。70年代の日本でも暴走族に女性アイドル歌手が拉致される事件などがありましたが、それはともかく、ここでの本題は映画のコトではなく、登場するバイクの話。ウィレム・デフォーが演じる“レイヴェン”が率いるバイカー軍団、“ボンバーズ”が走らせるハーレーについてです。
艶消し黒で塗り上げられたこのハーレー軍団は、登場のほとんどが夜のシーンなのでディテールを細かく確認することが出来ないのですが、映画の公開年が1984年ということを考えると劇中に登場するハーレーは必然的にオールアルミ・エンジンとなった「エヴォリューション」以前のモデルがベースとなります。
ヤラレ役はホンダのXL系とおぼしきオフ車なのですが、そこは今回、ひとまず置いておきましょう。また余談かもしれませんが、この物語の半分を占める「夜のシーン」は資料によると本当の夜間撮影ではスタッフの人件費がかさむ関係上、「20メートル間隔に配置した85本の柱でセットを囲み、自動制御の防水カバーで覆うことでセットの上に巨大な暗幕を広げて“人工の夜”を作り出して撮影された」とのことです。
■日本のシーンにも影響を与えたストリート・オブ・ファイヤー
その中でマイケル・パレが演じる主役のトム・コーディーが元カノのエレン・エイム(演じるのはダイアン・レイン)を救う為、「バテリー地区」にあるボンバーズの溜まり場である「トーチーズ」に乗り込むのですが、そこから脱出する為にオザキ・ユタカよろしく盗んで走らせたバイクはハーレーの“アーリーショベル”がベース。
1966年のハーレーダビッドソン「FLH」
映画の中では一瞬しか見えないのですが、エンジンのカムカバーとジェネレーター、フレームに装着された丸パイプのスイングアームから察するに1966年~1969年まで生産されたFL系ハーレーにカスタムを施したものと考えてまず間違いないでしょう。
その車両をベースにヘッドライトナセルを取り外してライトをベイツタイプに交換し、ハンドルはワイドタイプのスーパーバー的なものに換装。またステップ周りもアンダーソン・タイプのフットペグになっており、テールランプも1947年から純正で採用された“トゥームストーン”タイプに変更されています。
ちなみにこのマシン、ヘッドライトがトリプルツリーのトップブリッジにマウントされているのですが、これは少しでもフォークを長く見せる為の手法で一般的ではなかったものの、当時の一部のチョッパーで確認出来るものです。
加えてついでに解説すると“レイヴェン”のバイクも正面から見えるプライマリーの材質やフォークの形状、フロントブレーキマスターがないドラムブレーキであることからアーリーショベルあたりがベースなのではと推測出来ます。
1984年公開の映画『ストリート・オブ・ファイヤー』/Blu-ray: 1,572 円(税込)/発売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント。様々なバイクが登場します
さらに言えば“ボンバーズ”のナンバー2であるリー・ヴィングが演じる“グリア”のバイクはリジッドフレームでプレス成型のダイヤモンドプライマリーから察するに1949~57年まで生産されたハイドラグライドであると思われます。劇中に登場するバイクは総じてクラシカルなスタイルです。
ちなみにこの“ストリート・オブ・ファイヤー”、日本のハーレーシーンにも結構な影響を与えており、90年代初頭に流行した“黒塗りのワイド・ハンドル”のハーレーは、おそらくこの映画がキッカケでしょう。
また、その他のジャンルに目を向けてもダイアン・レインが「口パク」で唄う「今夜は青春」がフジテレビ系列で放映されたドラマ、“ヤヌスの鏡”のテーマ曲としてカヴァーされ、ヒットしたり、さらにはウッチャン・ナンチャンの南原清隆さんがコントで“レーベン”というキャラを演じたりといった感じで意外にも“ストリート・オブ・ファイヤー”がネタとなったものが多い1980~90年代の日本。そんな「映画からの影響」にたまには思いを馳せるのも一興ではないでしょうか。
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