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バイクを運転する前にエンジンの暖機運転は必要なのか?

バイクのニュース / 2021年5月1日 9時0分

寒い時期などはよく見かける光景でしたが、バイクの暖機運転はどのような目的があって行い、果たして必要なのかということについて考えていきたいと思います。最近では、インジェクション車など暖機運転はしなくて良いとも言われていますが、そういったところも合わせて詳しく解説していきます。

■そもそも暖機運転とは

 暖機運転とは、エンジンを始動させ「負荷のかからない状態の低回転域での運転を一定時間行うこと」で、具体的にはアクセルを回さずにアイドリングで待機していて、いつでも走行可能な状態でエンジンが暖まるのを待つことになります。

 車などでは、エアコンにより冬場に車内の温度を上げたり夏場は冷やしたりするときにも使われますが、バイクではどのような効果が期待できるのかというと、エンジン内部の構成部品を馴染ませ、オイルなどの潤滑油や冷却水の循環を円滑にすることで、エンジン本来の性能を走り出した時から引き出せるようにするものです。

 例えば、燃料を混合気として噴霧するキャブレターの機能は、ベンチュリー効果を利用して自然的に行われるものなので、冷えている状態ではうまく霧化できず、エンストなどの症状が出てしまうのを暖機運転で温めることで防ぐ目的があります。

 また、ほかのエンジンパーツもほとんどが金属でできていますので、温度によって収縮や膨張する特性がありますが、走行中は温度が高くなることを想定して設計されているため、冷却時に金属が縮小することで適正状態よりも隙間が生じ、圧縮漏れなどの可能性が出てくるのもあります。

 エンジン内部を守るエンジンオイルも、エンジンが止まっている状態ではオイルポンプが動いていないため、エンジンをかけてオイルポンプを動かし、オイルが送り出されることで各部に回るようになり、そのオイル自体も温度によって粘度が変わるため、低温時の硬い状態でいきなり高回転まで上げてしまうと、潤滑に必要な量が正しく回りきれないことでの金属摩耗なども考えられます。

キャブレター車は条件によっては暖機運転の必要性があります

 このような前提を見ていくと、暖機運転は必ずしなければ壊れてしまうのではないかと思うかもしれませんが、キャブレター車では条件によって暖機運転を必要としているものもありますが、電子制御のインジェクション車では、コンピューターが外気やエンジンの状態に応じて燃料調整を自動でしてくれることで、暖機運転は不要としているケースもあります。

 車の話にはなりますが、ホンダによると「極寒地などの一部の特殊条件を除いて冬でも暖機運転をする必要はありません」として、代わりにゆっくりと走行するウォームアップ走行を推奨していて、バイクのインジェクション車でも同様の対応で充分だと考えられているのです。

YAMAHA World Technician Grand Prix 2018の模様

 一方、ヤマハのサイトでは、「ライダーとバイクの暖機。この2つがしっかりとシンクロしていることが走り出しのポイント」として、冷え切ったエンジン内部のオイルの硬さを和らげるために、最小限のエンジン回転数の暖機を推奨している一文もあり、ヤマハメカニックのなかで世界一を決める「YAMAHA World Technician Grand Prix」に、日本代表として参加して見事優勝した整備士の鮫島さんのお話では、「暖機運転はきちんと行ってください」と告げていて、やはりエンジン内部のオイルの循環の重要性を伝えられていました。

 このことからも、暖機運転は気温が低いときには「オイルの円滑な循環」のために行った方が良いものと考えられ、インジェクション車でも適切なオイル循環による金属摩耗を防ぐためや、冷えたシリンダー内の金属縮小による圧縮漏れを防ぐことも含めて、暖機運転の必要性を指摘するライダーも少なくありません。

 つまり、暖機運転の必要性が「燃料噴霧の安定化」だけでなく、「オイルの循環」「金属パーツ縮小の緩和」を目的とするものとすれば、キャブレター車に限らず必要になる状況が出てくることになるということです。

■暖機運転の正しい方法とは

 では、実際に暖機運転をやるときの正しい方法についてご説明していくと、チョークレバーが備わっているバイクであれば、完全に引いた状態でエンジンを始動して、エンジンがかかったら安定するところまでレバーをゆっくり戻していき、一定の回転数を保った状態で温まるのを待ちます。

水冷車も30秒~40秒程度のアイドリングから回転数を抑えたウォームアップ走行を行えばエンジンの破損は防ぐことができます

 時間としては、エンジン本体が触れられる程度の温度になれば充分で、水冷車のときでも水温が上がりきるのを待つ必要はなく、30秒~40秒程度でもアイドリングしておけば、その後の走行を回転数を抑えたウォームアップ走行で行えば問題ありません。

 インジェクション車両はチョークレバーが付いていませんので、エンジンをかけてすぐアイドリングが安定しているように思えますが、これもヤマハの鮫島さんによると「実際に安定するには平均5分程度はかかる」と言われており、装備の着用などの乗車準備をする前にエンジンをかけておき、準備が整ってからスタートして、ウォームアップ走行をすればちょうど良いくらいとしています。

 オイルが循環するのに必要な時間には「粘度」も影響してきますが、外気温ごとの始動性能は表示された粘度数値によって変わり、マルチグレードオイルのW(ウインター)側の数値がより少ないものほど、寒冷地での始動性に優れているので、冬場でも循環が早く暖気の時間も短くて済むということになります。

 バイクの長時間の暖機運転は、燃料の無駄な消費につながるだけでなく、近隣への「音」による迷惑行為にも繋がりかねませんので、停車してのアイドリング状態の時間は可能な限り少なくして、バイクのためだけでなく、自身の運転操作の慣らしのためにもウォームアップ走行を取り入れるようにしていきましょう。

※ ※ ※

 一般財団法人「省エネルギーセンター」では、暖機運転をしなくてもエンジンに損傷を与えることはないとしていますが、極端に外気温が低い場合や数日間乗らなかった場合に数十秒間アイドリングをして、潤滑油を行き渡らせれば問題ないとしています。

 5分~10分の暖機運転によって消費する燃料の影響で、全体の燃費が15%~25%悪化することから、時間と燃料の節約のためには暖気せずに発進することが良いというお話もあります。近隣への騒音問題も出てくるため、バイクを守る暖機運転の時間は必要最低限に留め、環境にも配慮して行うようにしましょう。

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