2輪系ライターの、仕事とお金 ~ベテランと中堅の狭間にいる伊丹孝裕の場合~ Vol.10
バイクのニュース / 2021年5月4日 11時0分
バイク専門誌の編集長を経て、フリーランスのライター(テストライダー)、ジャーナリストとして2輪メディア業界で活動する伊丹孝裕さんの、仕事とお金のリアルなお話です(全11話)。
■Vol.10「年収1000万円の壁」2輪系ライター、伊丹孝裕さん(筆者)のおはなし
これまで書いてきた金額のあれこれが、2輪系ライターの中でどのあたりにランクされるのかは分かりません。下層ではないでしょうが、トップ10に入っているのか、平均的なものなのかを計るデータを持ち合せておらず、あくまでも僕個人(筆者:伊丹孝裕)の現在地を示したものです。
しかしながら、月収30万弱から100万強と言われても、煙に巻かれたような気分になるでしょう。そこで、常識的な仕事量と、それをこなした時の収入を記載しておきます。
ちなみにこれは2020年10月のもの。これ以降は徐々に紙媒体の仕事を減らし、ウェブ媒体へ移行する準備を始めました。結果的に収入形態が少々イレギュラーなものになったため(要するに激減し、あまり参考になりません)、その手前の数字を抽出しています。
●原稿料(原稿執筆/日当/編集代行含む)
・紙媒体A 56万4854円
・ウェブ媒体A 7万2847円
・紙媒体B 3万8837円
・紙媒体C 2万1421円
・紙媒体D 1万8700円
・ウェブ媒体B 1万1000円
小計 72万7659円
●イベント出演料(インストラクターや先導など)
・メーカーA 6万1253円
・出版社A 3万3000円
・ショップA 3万3000円
小計 12万7253円
■合計 85万4912円
また、上記業務の内訳はざっとこんな感じです。
・編集代行(ラフ/原稿/その他雑務含む)=30ページ
・編集代行に含まない紙媒体向けの原稿=約1万2000字
・ウェブ媒体向けの原稿=6本
・撮影およびイベントのための拘束日数=6日
これは「そこそこ稼いでいるでしょ」という自慢でも、「2輪ライターなんてこの程度」という卑下でもなく、単なる事実です。一般誌のライターと比較するとコストパフォーマンスは悪く、少なからずケガのリスクがつきまとうことも否めませんが、マーケット規模を考慮すると、仕事量と収入のバランスは妥当だと考えています。
ライターと編集とライダーを兼ねるのが通常スタイルの筆者(伊丹孝裕)
業務内容は多岐に渡り、それらひとつひとつに対して、報酬が正当か不当かを検証していてはきりがありません。なので、ここ5年ほどは自身に次のようなノルマを課していました。
「年収1000万円。そのために1日3万円稼ぐ」です。
原稿でも、日当でも、イベント出演でもなんでもいいのですが、ともかく毎日3万円分の仕事をするという、ごくシンプルな目標設定がそれでした。単純計算するとこうです。
3万円×28日×12カ月=1008万円
ひとつひとつの報酬は常に変動するものの、こうやってならすとそれほど非現実的でもないと思いませんか? 毎日といっても時には休息も必要ですから、月に28日働いた場合のシミュレーションとなります。
もしも1万円分の仕事しかできなかった日があれば、その後2日間は4万円分の仕事をしてリカバーし、もしも6万円分の仕事をこなした日があれば、翌日は少々力を抜く。そんな風にして、やってきました。
ところが、実際には難しく、必ずなにかしらの抵抗があります。ケガだったり、病気だったり、営業力不足だったり、取引先の消滅だったり。この1年で言えば、もちろんコロナの影響は免れません。
ただし、それを踏まえても2020年は比較的堅調でした。コロナで失った損失を少なめに見積もって現実の収入に上乗せすると「ノルマを達成したことにしてもいいような気がしないでもない」というレベルにあったため、次のステップに進むことを決断。物事にタラレバを持ち込むときりがないのですが「まあまあ、よくやったじゃないか」と、自分を甘やかすことにしました。
紙媒体を辞めたのは、その手始めであり、ホンダのF1参戦終了コメントになぞらえるなら「雑誌では一定の成果を得ることができました」という感じ。年が明けてからは、ウェブ媒体にだけ原稿を書き、仕事よりも時間を優先した生活をおくっています。
もっとも、こんな風にそこそこ正直に書けるのも、雑誌から撤退してしがらみがなくなったからです。「アイツ(伊丹)があれだけもらっていたなら、俺にも」と編集部に要求するライターもいるでしょうが、それはそれ。この業界のベースアップになるのなら、無意味ではないでしょう。僕自身は、将来的に原稿料に頼らない暮らしを構築したいと考えており、備忘録として書き留めておきました。
そもそも、紙にしろ、ウェブにしろ、媒体主導で仕事を依頼され、媒体が規定した原稿料を頂くという現状のスタイルは、それほど長く続かないでしょう。次回はライターという仕事の今後の在り方について考え、最終回にしたいと思います。
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