衝撃!バイクの2035年問題を知っていますか?
バイクのニュース / 2021年5月15日 15時0分
東京都は脱炭素に向けた「ゼロエミッション東京」の取り組みのなかで、都内のバイク新車販売を100%非ガソリン化する内容を盛り込んでいます。具体的には2035年、東京都内ではガソリンエンジンを搭載した新車バイクの販売ができなくなります。これは「バイクの2035年問題」を呼ばれており、バイクメーカーやライダーには気になるものではないでしょうか。
■バイクの2035年問題とは
2020年12月8日、東京都小池都知事は「脱炭素社会の実現」について取り組みを発表しました。そのなかに2035年までに都内で新車発売される2輪車すべてを「非ガソリン化」するという内容も含まれていました。この発表から「バイクの2035年問題」は起きています。乗用車についても、新車販売は2030年までに電気自動車(EV)やハイブリッド車(HV)など「非ガソリン車」にする目標が同時に掲げられています。
そうなると東京都内で販売できるバイクは、電気バイクかハイブリットバイク、もしくはガソリンエンジン以外のエンジンを搭載したバイクでなければ販売できません。対象が新車販売となっているため、中古車販売は問題になりませんが、東京都内ではガソリンエンジンのバイクを新車で買うことはできなくなります。
2020年10月26日、菅内閣総理大臣は所信表明演説のなかで、グリーン社会の実現について発言しました。12月には、その取り組みとして「遅くとも2030年代半ばまでに、乗用車新車販売で電動車100%を実現できるよう包括的な措置を講じる」とされています。
つまり、小池都知事は、国の取り組みよりも5年早く乗用車の脱炭素化の実現を目指す姿勢をあきらかにしたと言えます。同様にバイクについても2035年までに100%非ガソリン化にする方針を決めました。この小池都知事の発表に対して、バイクメーカーから反発の意見が出ていると言われています。
■2035年問題の問題点とは?
東京都は脱炭素社会への取り組みをまとめた「ゼロエミッション東京」を発表。ZEV(Zero Emission Vehicle)普及プログラムという自動車のCO2排出を実質ゼロにする取り組みを始めています。
東京都は脱炭素社会への取り組みをまとめた「ゼロエミッション東京」を発表
そのなかにバイクも含まれており、東京都環境局のHPによれば、走行時に排気音や排出ガスを出さない二輪車をゼロエミッション・バイク(Zero Emission bike)「ゼロエミバイク」という名称で呼んでいます。
バイクメーカーは今後、ゼロエミバイクの実現を求められますが、いくつも解決しなくてはいけない問題があります。
まず販売されている現行モデルはすべて14年後には都内で新車販売ができなくなります。そして、バイクメーカーはバイクの「非ガソリン化」するために選択を迫られることになるでしょう。ガソリンエンジン以外を動力にしたバイクを開発するか、電動化(EV化)するか選ばなくはいけません。
仮に電動化( EV化)するとしても、バイクは構造的に電動化には不利な点が多いと言われています。
ヤマハの電動スクーター「E-Vino」
例えば、電動化したヤマハのスクーター「E-Vino」とガソリンエンジンの「Vino」。2車種の航続距離を比較してみましょう。
ヤマハHPで公開されているカタログ情報によれば、E-Vinoの航続距離は満充電して29km。別売りのスペアバッテリーを使用しても58kmとされています。
それに対して、ガソリンエンジンを積んでいるVinoの燃費は、発進、加速、停止などを含んだ国際基準のWMTCモードの値で58.4km/Lです。燃料タンクが4.5リットルとされているため、単純に計算すると航続距離は262.8kmです。
電動化して航続距離を伸ばすには、大容量の蓄電池を積まなくてはいけません。しかし、バイクの限られたスペースでは追加の蓄電池を積む十分なスペースの確保は、今のままでは難しいと言われます。そして、もともと燃費が良いと言われるバイクを電動化する必要があるのかという議論もあるとされています。
ハーレーダビットソンは、2019年に電動スポーツバイク「LiveWire」の販売を開始
海外バイクメーカーのハーレーダビットソンは、2019年に電動スポーツバイクLiveWireの販売を開始。メーカーHPでは走行距離は市街地で235km、高速道路では152kmの走行が可能であると情報を公開しています。大型バイクであれば、スクーターに比べてスペースの問題は多少なりとも解決するという実例にはなるでしょう。
しかし、問題はそれだけではありません。国内バイクメーカーが電動化を選んだ場合、そのときはアフターパーツメーカーやバイク用品企業が大きな損害を被る可能性があります。バイクを電動化すると排気ガスを出さないので、マフラーやエキゾーストパイプなどいくつかのカスタムパーツは必要がなくなります。さらにバイクの構造をシンプルにできるため、多数のカスタムパーツの必要性もなくなります。
ライダーにとってバイクのカスタムパーツ、特にマフラーやエキゾーストパイプの存在は小さくないと言えるのではないでしょうか。
他の選択肢としては、合成燃料を代わりに使う方法です。政府の推進する「カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現」の取り組みのなかで、合成燃料の大規模化について開発支援を行うとされています。
合成燃料とはCO2と水素を合成して生成された燃料で、ガソリンの代わりの燃料となると言われています。しかし、生産には大量の水と電力が必要になり、値段がガソリンより割高で実用化にはまだ時間が必要と言われています。
ガソリンエンジンを水素エンジンにするという手段も考えらます。2021年4月22日、トヨタ自動車はカローラスポーツをベースに、水素エンジンを積んだ車を24時間耐久レースに参戦させることを発表しました。トヨタで水素エンジンの実用化の目途が立ったと言えるかもしれません。
燃料電池二輪車「バーグマン フューエルセル」
また、2017年には、スズキが車両型式等認定を受けた燃料電池二輪車「バーグマン フューエルセル」で ナンバープレート(車両番号票)を取得し、公道走行を開始しています。
共通する問題は、電動化しても、ガソリン以外のエンジンを積んでも販売価格は上昇する可能性が高いでしょう。メーカーはバイクの開発、もしくは改修の必要があるため、掛かった費用をバイクの販売価格に上乗せします。そうなると販売価格はどうしても上がります。
以上のように、未解決の問題を抱えたままバイクメーカーはゼロエミバイクの開発に取り組む必要に迫られています。
※ ※ ※
2035年には都内でガソリンエンジンを積んだ新車バイクの販売ができなくなります。メーカーは残り14年ほどでバイクを電動化するか、ガソリン以外の燃料で動くバイクを開発するかの選択を迫られるでしょう。
2021年の段階で、東京都が呼称した「ゼロエミバイク」の実現には解決しなくてはいけない問題が多数あります。
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