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イタリアンスクーター「ベスパ」に気付かされたブランドの魅力 ~木下隆之の、またがっちゃいましたVol.95~

バイクのニュース / 2021年5月26日 17時0分

レーシングドライバーの木下隆之さんは、イタリアンスクーター「ベスパ」にまたがって気付かされたことがあると言います。どういうことなのでしょうか?

■ブランドを大切に育む、イタリアンメーカーのセンスに触れた

 イタリアのスポーツカーメーカー「ランボルギーニ」が製作したカレンダーが秀逸だ。12枚綴りで月をめくるごとに1枚の写真ですべてを語り尽くす、余韻を残すタイプのメッセージ型カレンダーなのだ。

 たとえば、ある月は老婆が主人公。街外れの直線路を前に、腰の曲がった女性が渡ろうとしている。道幅は2、3歩で渡り切れるほど狭い。そこに、展望所にあるような双眼鏡が立っていて、レンズに目を当てて遠くを覗こうとする老婆。

「ここはランボルギーニの街です。サンタアガタ」

 コピーはそれだけだ。驚くほど速いスピードでランボルギーニが迫ってきますよ、と語っているわけだ。こうして説明することが無粋なほど余韻に満ちた作品である。

 またある月の写真は幼児が主人公だ。子供が手に持っているのは、小さなクルマのおもちゃである。もちろんそれはランボルギーニ。

「この街に生まれた子供は、“ママ”と口にする前に“マキナ(クルマ)”と語り出します。なぜならばここは、ランボルギーニの街だからです。サンタアガタ」

 サンタアガタは、ランボルギーニが本社を構えるイタリアの地方都市の名称である。

 そしてまたある月の写真は、髭を蓄えた巨漢のアメリカ人が主人公だ。皮のライダースジャケットに身を包み、足元はモーターサイクルブーツ、ベルトにはドクロのキーホルダーを下げている。街と街をつなぐ田舎道のダイナーで巨漢が屯(たむろ)している。熊のように大きな手には小さなコーヒーカップ……アメリカンサイズのマグカップではなく、太い指でカプチーノを飲んでいる。そしてそのコピーはひと言。

「ここはランボルギーニの街です」

 巨漢は「Vespa(ベスパ)」に跨がっていた。背筋を伸ばし、シートの前端にチョコンと大きな尻を乗せている。

 ランボルギーニの街、サンタアガタにくると、ハーレー乗りの巨漢もベスパのスクーターに乗りたくなる、と語っているわけだ。

ベスパ「GTS Super 150」にまたがる筆者(木下隆之)

 この日、僕(筆者:木下隆之)はベスパにまたがった。するとなぜか、オードリー・ヘップバーンがそうしていたように、シートの前端にチョコンとお尻を置くようなライディングフォームになった。

 着座位置は高く、ハンドルは手前で低め、腕はリラックスした位置に落ち着き、背筋がスッと伸びる。

 ペスパは、またがる人を自然と“ペスパ流”のフォームにしてしまうのである。こうしてブランドは構築されるのだ、と感じた瞬間だった。

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