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【徹底検証】ヤマハの電動バイク「E-Vino」の電費を走行モード別に比較!! これが意外な結果に……

バイクのニュース / 2021年5月25日 13時0分

先進国を中心にエンジン車の電動化が明確に急加速しているなか、クルマに限らず「電動バイク」にも注目が集まっています。ここでは日本の2輪メーカーで唯一、個人向けにも市販化されているヤマハの電動バイク「E-Vino」の電費について、じっくり検証しました。

■電動バイクの電費と走行モードの関係は?

 ヤマハ「E-Vino(イー・ビーノ)」は、2015年に発売された原付1種に分類されるスクータータイプの電動バイクです。その名のとおり、内燃機関(排気量50cc)の原付スクーター「VINO(ビーノ)」をベースとしています。

「E-Vino」の定格出力は0.58kW、最高出力は1.2kW(3760r/min)、最大トルクは7.8N・m(330r/min)となっており、かの有名なテレビ番組『出川哲朗の充電させてもらえませんか?』でもおなじみの電動スクーターです。

 電動バイクの気になるポイントのひとつと言えば、燃費ならぬ“電費”ではないでしょうか。なにしろ電動スクーターは、外出先でバッテリー切れとなったらそこでアウト、泣く泣くJAFを呼ぶか、体力にモノを言わせて押して帰ることになります。

「E-Vino」が搭載するリチウムイオンバッテリーは着脱式で、各家庭が備える100Vコンセントとアダプターをつなぎ、室内で充電ができます。自宅で充電ができる反面、100Vコンセントの充電スポットを見つけることは難しく、外出先での充電は期待できません。

 というわけで、今回は電費についてじっくりと検証してみました。検証したのは“モード別の電費”(標準モード、パワーモード)と“モード混合の電費”の3パターンです。

 ヤマハが公表している仕様によれば、1充電あたりの標準モードでの走行距離は29kmとなっています。条件としては「30km/h定地走行」、「乗員55kg」、「新品バッテリー使用」、「気温25度、乾燥路面、無風」となっています。

 さあ、見せてもらおうか、「E-Vino」の実力とやらを!

■検証その1:標準モードのみを使用

 今回は、満充電のバッテリー1個で検証を行ないました。設定したコースは、通常の交通量の通りから長めの下り坂、ぎりぎり車が1台通行可能な狭い住宅街の道、急な上り坂などを組み合わせた約17kmの距離です。テスター(筆者:伊藤英里)は身長153cm、体重42kgです。

充電はバッテリーを本体から取り外し、各家庭が備える100Vコンセントとアダプターをつないで室内で行なう。残量ゼロから満充電まで約2時間だった

 標準モードでは、スロットルを回してもびっくりするような加速はしません。もちろん、電動バイクならではのトルク特性はあって、内燃機関のスクーターと感じは違うのですが、発進時に体がガクガクと揺さぶられるほどではありませんでした。スロットルを全開にしても、法定速度の約30km/hほどです。

 筆者は、内燃機関の原付1種スクーターに乗った経験がほとんどないので想像の範囲になるのですが、これまでバイクに乗ったことがない人でも「E-Vino」なら自転車の延長として乗ることができるのでは、と思います。自転車または電動アシスト自転車と、内燃機関のバイクの中間のモビリティ、という印象です。

 15kmを過ぎた時点で、バッテリー残量が30%を切りました。最終的には約17kmを走行し、結果はバッテリー残量19%でした。つまり、81%のバッテリーを使用したことになります。それならば、次に検証するパワーモードではさらにバッテリーを消費するだろうと思われたのですが……。

■検証その2:パワーモードのみを使用

 標準モードと同様の約17kmのコースを、パワーモードのみで走らせました。こちらはアクセルを開けると、標準モードよりも勢いよく加速してすぐにスピードに乗ります。ただ、やはり怖い思いをするほどではありません。2015年発売当時のリリースを確認すると“「E-Vino」は、都市部に生活拠点があり、例えば駅までの移動や買い物など半径5km圏内を用途とする女性層とアダルト層、およびガソリン補給を煩わしく感じる方々をターゲットに開発しました”とあります。パワーモードであっても、普段バイクに乗り慣れていない人が容易に操作できる、そのコンセプトを感じました。

約17kmの距離を走って検証を行なった。バッテリー残量が30パーセントを切ると「亀」マークが出る

 さて、パワーモードですべてのコース約17kmを走行後、バッテリー残量をチェックすると22%でした。つまり使用量は78%ではありませんか! 標準モードよりも電費が良いことになります。どういうことだ!?

 一般的に考えれば、標準モードよりもパワーモードの方が電費が悪いはず。そこで筆者は、バッテリーの質に差があるのではないか? と考えました。バッテリーは経年により劣化するからです。このとき、標準モードとパワーモードで別のバッテリーを使用して走行していました。さらに、後日ヤマハの広報担当者に確認したところ「ひとつは新品、ひとつはある程度使用したバッテリーです」とのことでした。

 しかし、標準モード走行時と同じバッテリーでパワーモードで走っても、残量21%、使用量79%という結果だったのです。まったく、どういうことだ!?

 これについては憶測の域を出ないのですが、筆者が検証を行なう中で「E-Vino」の効率的な走らせ方になったことも影響したのではないか、と思います。

 今回は約2週間にわたり、100km以上の距離を走行しました。内燃機関バイクや原付2種スクーターについてはある程度走らせた経験はありますが、筆者にとって電動バイクでこれほど長い距離を走ったことはなく、期間中は電動バイクの特徴を活かした走りを模索してもいました。検証としては正確ではありませんでしたが、一方で走りによって数字に表れるほど電費が変わる、とも言えそうです。あくまでも仮説にはなるのですが、あながち間違いではないでしょう。

■検証その3:標準モードとパワーモード+ブーストを使用

 最後に検証したのが、おそらく最も日常に近い使い方になるでしょう。標準モードとパワーモード、一時的にパワーが上がるブースト機能を使用した走行です。バッテリーは標準モードで使用したものと同じものにしました。

ブースト機能をオンにするボタンは右手親指で操作する

 住宅街の路地のようなシーンでは標準モード、それ以外では基本的にパワーモードを使い、上り坂でブーストを使用します。右のスイッチボックスのボタンを押すと、30秒間加速します。率直な印象として、これを使わないと急な上り坂の加速は厳しいです。

 シーンによってモードを使い分けたのは、電費を考えたものです。「E-Vino」のような電動バイクにギアはありませんが、走行モードを備えています。ひとつのモード固定ではなく、内燃機関のバイクのギアチェンジのように、状況に応じて走行中にもモードを使い分けることが「E-Vino」または電動バイクの現実的な走らせ方ではないか、と感じたからです。

 結果は、バッテリー残量10%、つまり使用量は90%です。ブーストでかなりバッテリーを使った印象でした。

 そして、この検証中にうっかり道半ばでバッテリー残量ゼロになった経験をしたので、その情報も付け加えておきます。電費走行(ブースト使用なし)で、23.2kmを走ることができましたが、このあと1km以上「E-Vino」を押して帰りました(泣)。

 なるほど「E-Vino」は少なくともバッテリー1個で約17kmを走ることができるのか……と思うのはちょっと待った! です。というのも「現実的に、安全に走ることができるのはバッテリー残量30%まで」だったからです。

 30%を切るとブーストボタンは使えなくなります。急な坂道の途中で停止からの発進ではまったく加速せず、20km/hにも満たなかったのです。ブーストボタンが使えないことを除いても、平地での加速も鈍り、交通の流れに乗れません。こうした安全面を考えると、30%以下のバッテリー残量での走行は、あまりオススメできません。

ヤマハの電動バイク「E-Vino」(原付1種区分)

 総合的に考えると「E-Vino」がバッテリー1個で、1回の充電で過不足なく走行できるのは約13kmから15km程度、という結論になります。もちろん、乗る人の体重や積載によってさらに電費が変わるはずです。ただ「E-Vino」は別売りのスペアバッテリーを搭載できます(シート下に格納)。バッテリーを交換すれば、26kmは気兼ねなく走ることができそうです。

「E-Vino」は自転車に近い使い勝手の良さで走れる、お手軽モビリティだと思います。まさに駅やスーパー、近所のコンビニなどなど、ちょっとした移動距離に適していると言えるでしょう。そう考えれば、今回の検証で得た約13kmから15kmでも十分です。バイクに慣れていない人でも手軽に乗ることができる、家で充電ができる、などの点をあわせれば、便利な移動手段ではないでしょうか。

※ ※ ※

 ヤマハ「E-Vino」の価格(消費税10%込み)は25万9600円、標準装備のバッテリーと同じスペアバッテリーは5万8740円です(専用のバッテリーダンパーも必要)。

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