ホンダ「400X」は大型アドベンチャーにはない気軽さが魅力! ツーリングでの使い勝手を確かめてみた
バイクのニュース / 2021年6月1日 13時0分
国内4メーカーの400ccクラスのバイクの中で、唯一アドベンチャーテイストを持つのがホンダ「400X」です。いかにもツーリングに適していそうな雰囲気ですが、実際はどうなのでしょうか。山梨方面に出かけ、使い勝手を確かめてみました。
■いまや少数派となった、400ccクラスの魅力を再発見
ホンダ「400X」の外観は、同じホンダの大型アドベンチャーマシン(ホンダではクロスオーバーと呼んでいます)である「NC750X」とよく似ています。「NC750X」はDCT(クラッチ操作が不要なセミオートマチック)を採用したり、ライディングモードやトラクションコントロールを装備していますが、「400X」はABSを装備するくらいで、電子制御のアシストがほとんどない、いたってシンプルなマシンです。
堂々としたスタイリングですが、またがると意外なほどコンパクトで軽く、やはりナナハン(排気量750cc)クラスよりも一回り小さく、扱いやすい印象です。一般道を走り出してまず感じたのは、クラッチの軽さです。アシストスリッパークラッチを採用しているため、とても軽い力で操作が済むので、ゴー&ストップの多い市街地での走行が非常に楽なのです。
エンジンは排気量399ccの2気筒(パラレルツイン)で、最高出力は46PS、最大トルクは3.9kgf・mとなっています。大型バイクに乗り慣れた身からすると、発進加速時に少々トルク不足かな、という気がしますが、ちょっとエンジン回転数を上げてクラッチをつなげば問題無く、乗り出して10分もすればすっかり慣れてしまいました。
高速道路では、平坦部であれば6速で100から120km/hほどの巡航は苦になりません。ただ、中央自動車道の下り「談合坂SA」付近のような、上り勾配が続く場所では、さすがに大型バイクと違い、グイグイとした加速で4輪の流れをリードするような走りは厳しく感じます。その場合はギアを1速落として高めの回転数をキープすれば、走りにキビキビ感が出てきます。
中央道で大月方面へと向かう。「談合坂SA」付近の上り坂は走りの力強さをはかるのに絶好のポイント
ポジションはアップライトでハンドル位置も高く手前にあるので、乗車姿勢はごく自然なもの。そのため高速道路では100km/h程度で淡々と走れば、長距離も疲労が少なく楽なマシンだと感じました。「400X」は当初、フロントタイヤが17インチでしたが、2019年モデルから19インチとなり、その分高速道路における直進安定性が高まった印象です。
一般道ではフロント17インチ時代よりも少しだけ軽快感が薄れた気もしますが、ツアラーとして考えれば全く問題ないレベルです。むしろフロントが19インチとなってオフロードバイクに近いバランスになったことで、ライディングに余裕が生まれた感もあります。
■標準仕様で結構なお値段、欲を出すとキケン!?
ここからはツーリング時における使い勝手で良かったポイントを挙げていきます。まずは、フロントスクリーンの内側にアクセサリーバーが装備されていること。径が細いタイプですが、これがあることによって、ナビをメーターの真上に装着することができました。この位置にあると視線の移動が少なくて済むので便利です。
ホンダ「400X」に乗る筆者(野岸“ねぎ”泰之)。ゆったりとしたライディングポジションで景色がよく見える。クラッチ操作が軽いため長時間乗っても疲労が少ない
次に、ハンドル切れ角が大きいこと。ホンダ公表値では38度あるようですが、ロードスポーツに比べてとにかくハンドルがよく切れます。狭い道でUターンする時や、観光地の駐輪場に停める際など、取り回しが良く便利でした。
そして先にも書きましたが、クラッチの軽さとポジションの良さ。観光地付近は渋滞することも多く、止まっては進み、を繰り返すこともよくあります。そんな時でも左手への負担が少ないのは助かります。ポジションが前傾でなくオフロードバイクに近いのも、走っていて景色がよく見えるし前方の交通状況にも気を配りやすいので、知らない道でも安心感が高いと感じました。
余談ですが、リアシートの下に給油口がある「NC750X」と違って「400X」はごく一般的な燃料タンクなので、気兼ねなくリアシートに荷物を積めます。形状もフラットなので大きな荷物を載せることができますが、グラブバーの下にある荷掛けフックがピン状であまり使い勝手が良くないため、荷物の固定には工夫が必要かもしれません。
また少し残念なのは、フロントスクリーンです。高さを2段階に調節可能ですが、その際はビスを外す必要があります。ノーマル状態でも防風効果はそこそこありますが、工具なしで、ワンタッチで高さ変更ができればもっと使い勝手が向上することでしょう。
あとは、オプションとなっているアクセサリーソケットやグリップヒーター、ETC機器などが標準装備になればより便利ですね。もともと価格設定が高めなので、これらを標準装備している「NC750X」の価格にどんどん近づいてしまうのが悩ましいところ。ホンダ「400X」のメーカー希望小売価格(消費税10%込み)は82万6100円です。
路面がフラットならダートもそこそこ走れるが、大きめの石やギャップがある場合は車体の挙動が大きくなるので注意が必要
最後に、空荷ではありますが林道を少し走ってみました。フロント19インチとアップライトなポジションのため、キャンプ場へのアプローチやフラットダートなら、ゆっくりペースでそれほど不安なく走ることができました。だだ、当然オフロードマシンより重く、サスペンション性能も違うので、大きめの段差や石を乗り越えると車体の姿勢変動が大きく、制御が難しくなります。ロードスポーツより少しは楽に走れる、ぐらいに思っておいたほうが無難です。
※ ※ ※
過度なスピードやスポーツ性能を求めず、のんびりと景色を楽しみつつ、写真を撮ったりキャンプを楽しむ……そんなツーリングに使うなら、大型アドベンチャーよりもむしろ「400X」のほうが向いているかもしれません。それぐらい“旅力”の高さを感じさせてくれるバイクでした。
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