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海岸線の生活道路は“のんびり”であってほしい ~木下隆之の、またがっちゃいましたVol.97~

バイクのニュース / 2021年6月9日 17時0分

レーシングドライバーの木下隆之さんは、老人たちが走らせる原付スクーターの列が穏やかな雰囲気にしてくれると言います。どういうことなのでしょうか?

■時速20キロは遅過ぎるけれど、周囲は穏やかに見守っている

 僕(筆者:木下隆之)の地元の主要道路である国道134号は、ざまざまな人が利用する幹線道路である。自宅は海沿いに位置しており、海岸線のこの道を避けてはどこにも移動できない。コンビニでおにぎりを調達するにも、郵便ポストに投函するのも、もちろん通勤や通学でさえ、一旦は134号をかすめることになる。

 よしんばこの道が封鎖にでもなろうものなら、地元一帯は陸の孤島と化す。東京で言うところの多摩川であり荒川のように、それぞれが生活のために、支川から幹川に合流する。僕たちは川鮎だったり遡上する鮭だったりするのだ。

 だから、見知った人とすれ違うことも並走することも少なくない。いつも原付スクーターでのんびりと走る3人のおばあちゃんの列は、たいがい平日の朝6時30分と、決まって同じ時間に同じ場所を東へ向かう。畑仕事なのか買い出しなのか、目的はわからないが、原付スクーター3台が列をなす姿は、その時間に134号に立てばお目にかかることができる。速度は極低速。音にするならばテケテケである。

 僕らはその3台のおばあちゃんのことを「NiziU」と呼んでいる。もちろん、人気の日韓合同のガールズグループではない。そもそも9人ユニットではなく3人だ。

 年の頃なら80歳を超えるおばあちゃんが、50ccのスクーターをテケテケと編隊を組んで走らせている光景は、ある意味ではとてもキュートであり、僕らが「NiziU」と呼び親しんでいる理由は、その速度がぴったりと20km/hだからだ。

 これまで何度も並走した経験があるのだが、まるでクルーズコントロールを効かせているかのように、正確に20km/hなのである。それ以下でもそれ以上でもない。1km/hの誤差もなく、テケテケなのである。それが理由でついたあだなが「ニジュウ」というわけだ。

 国道134号の道幅は広くはない。バイクや自転車を追い抜くにも気を使う2車線道路だ。そこをニジュウが時速20km/hで走らせると、ちょっとしたニジュウ渋滞が発生する。だが、誰もそれをとがめない。クラクションを鳴らす無粋なクルマもない。ただひたすら対向車が開けるのを待ち、タイミングを見計らって大きく離れながら抜いていくのである。

 ニジュウがどこに向かっているのかは不明だが、ひとつ言えるのは、そのキュートな隊列が、国道134号をどこか穏やかな、牧歌的な雰囲気にしてくれていることである。こんど僕のモンキーくんでニジュウの隊列を追走してみようと思う。レーシングスピードの世界は知っているが、20km/hのテケテケはどんな世界なのだろう。

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