電動バイクレース『MotoE』第3戦 唯一の日本人ライダー大久保光選手、初めてのカタルーニャでのレースで9位
バイクのニュース / 2021年6月8日 13時0分
電動バイクによるチャンピオンシップ『FIMエネルMotoEワールドカップ』の第3戦カタルーニャの決勝レースが2021年6月6日、スペインのバルセロナ・カタルーニャ・サーキットで行なわれました。日本人ライダーとして唯一、MotoEに参戦する大久保光選手は9位でレースを終えています。
■開催3年目を迎え激化する電動バイクレース
電動バイクの世界選手権『MotoE(モト・イー)』第3戦は、MotoGP第7戦カタルーニャGP(スペイン)に併催で行なわれました。2019年に始まって以来、初めてバルセロナ・カタルーニャ・サーキットでのMotoE開催となりました。
MotoEの予選となるEポールでは、エリック・グラナド選手がポールポジションを獲得。カタルーニャで初のレースとなった大久保選手(Avant Ajo MotoE)は、4列目11番グリッドを獲得しました。
Eポールは、ライダーが1人ずつ1周のアタック、たった1回のタイム計測でグリッドが決まるわけで、高い集中力が必要になります。予選後の会見で、今季3回目のポールポジションを獲得したブラジル人ライダーのグラナド選手に、どのように集中しているのか、そのための験担ぎのようなことはしているのかと質問をすると「僕にはたくさんの験担ぎや儀式がある」という答えが返ってきました。
ポールポジションを獲得したグラナド選手。しかし決勝レースではトラブルに見舞われることに
「そのおかげで集中力が高まると思うし、すべて正しい場所にあるのだと知る。でも、Eポールでは、特別なことはせずにただひたすら走らないといけない。このカテゴリーでは僕はベテラン(※2019年から参戦)で、たくさんのミスを通して少しずつ学んできた。ポールポジションを獲得できればいいし、そうじゃなければ3番手以内ならベター。これを主に考えているんだ」
しかし、決勝レースのスタート前に、そのグラナド選手のバイクにトラブルが発生します。チームが発行したプレスリリースのグラナド選手のコメントによれば「いつものようにボタンを押そうとしたけど、バイクがスタート状態にならなかった」ということです。
グラナド選手はこのトラブルにより、ピットレーンからのスタートとなりました。また、このアクシデントによってスタート時間が6分遅れました。
こうして始まった6周のレースでは、激しいトップ争いが展開されることになります。1コーナーにトップで飛び込んだのは、3番グリッドスタートのドミニク・エガーター選手、さらにアレッサンドロ・ザッコーネ選手、ジョルディ・トーレス選手、ミゲール・ポンス選手などが続きます。
長いメインストレートではスリップストリームを使い合い、1コーナーのブレーキングが接戦となった
たった6周のレース、さらにワンメイクマシンで争われるため、MotoEではタイムはもちろん、ポジションを上げていくことが難しく、序盤からのポジションが非常に重要になります。ライダーたちはブレーキングでスキール音を響かせながら、コーナーごとに前のライダーを交わそうと勝負を仕掛け合います。
そしてまた、バルセロナ・カタルーニャ・サーキットは長いメインストレートを持つサーキットであり、重い電動バイクで巧みに激しくブレーキングし、1コーナーでポジションを上げるなどの接戦が展開されました。この1コーナーのブレーキングでは、何度もトップが入れ替わることになります。
3周目を終え、トップはポンス選手、2番手はトーレス選手、3番手はザッコーネ選手。大久保選手は13番手を走行していました。トップは一時ザッコーネ選手に変わりましたが、その翌周、再び1コーナーでポンス選手がトップを奪還。2番手エガーター選手、3番手トーレス選手で、その差はわずかのまま最終ラップに入りました。
最終ラップに入る1コーナーで、ポンス選手が後方のライダーの猛攻からトップを守ります。ポンス選手はそのままトップでチェッカーを受け、2021年シーズンからMotoEに参戦したポンス選手にとって、初優勝となりました。
2位は参戦2年目のエガーター選手、3位は2020年MotoEチャンピオンのトーレス選手でした。大久保選手は序盤に遅れたものの、終盤にはポンス選手と変わらないタイムを記録して、最終的に9位でレースを終えています。
MotoEルーキーにして初優勝を飾ったスペイン人ライダーのポンス選手は、決勝レース後の会見で「とてもうれしいよ。チーム、家族、すべてのパートナーにお礼を言いたい。そして、ジェイソン(MotoGP第6戦イタリアGPのMoto3クラス予選中の転倒が原因で亡くなったジェイソン・デュパスキエ選手)にこの優勝を捧げたい」と語りました。
表彰台を獲得した3人のライダーが着ているのは、イタリアGPで逝去したデュパスキエ選手のTシャツ
2020年はスーパースポーツ世界選手権に参戦していたポンス選手が、電動バイクレースのMotoEにどのように慣れていったのかを質問すると「これまでと同じだ」と言います。
「1回目のMotoEテストから、僕はとても速かった。(前戦フランス)ル・マンではレースができなかった(※サイティングラップ中に転倒)けど、自分の強さは感じていた。ここでもそうだった。すごくいいバイクがあって、チームはとても懸命に取り組んでくれた」
2020年チャンピオンのトーレス選手によれば「今季はみんなが強い。昨年とは(状況が)まったく違っているんだ」と言います。たった1ラップのタイム計測で決まる予選、少ない周回数の決勝レース、同じバイクと、MotoEはほんのわずかな差で争われています。MotoEは3年目を迎えて成熟を重ね、今後ますますレースの激しさを増していくのかもしれません。
MotoE第4戦は、MotoGP第9戦オランダGPに併催で、決勝レースは2021年6月27日に行なわれます。MotoEの予選と決勝レースは『motogp.com』の有料ビデオパスを購入することで視聴可能です。
■MotoEとは……
MotoEは、2019年にスタートした電動バイクによるチャンピオンシップです。MotoGPのヨーロッパ開催グランプリのうち数戦に併催されており、2021年シーズンは開幕戦スペインを含む6戦7レース(最終戦は2レース開催)が予定されています。すべてのMotoEライダーが走らせるマシンはイタリアの電動バイクメーカー『Energica Motor Company(エネルジカ・モーターカンパニー)』の電動レーサー『Ego Corsa(エゴ・コルサ)』。タイヤはミシュランです。2021年のMotoEには11チーム18名のライダーが参戦しており、16歳の若手ライダーから元MotoGPライダーまで、様々な経歴を持つライダーが参戦。日本人初のMotoEライダーとなる大久保光選手がエントリーしていることでも注目を集めています。
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