KTMにもACC搭載車登場 フルモデルチェンジした「1290スーパーアドベンチャーS」なにがスゴイ?
バイクのニュース / 2021年6月9日 15時0分
オーストリアのバイクメーカー「KTM」が誇るアドベンチャーモデル「1290スーパーアドベンチャーS」が、アダプティブクルーズコントロール(ACC)を搭載してフルモデルチェンジ。最新の2021年型に試乗しました。
■鼻先から足先まで、なにかとスゴイことになっている
KTMが誇るアドベンチャーバイク「1290スーパーアドベンチャーS」が、2021年型でフルモデルチェンジを受けました。走り出す前に、そのハイライトをご紹介しましょう。
まずは車体周りから。新設計されたフレームは、ステアリングヘッド位置を15mmライダーに近づけ、エンジン搭載角度を2度前傾。15mm延長されたスイングアームとあわせ、前輪への重量配分を最適化。サスペンションはWP製セミアクティブサスペンションが装備され、ストローク量は勿論、車体の走行状況、ライダーの操作状況などに応じて自動で減衰圧を調整するシステムが搭載されています。前後とも200mmのストロークで悪路走破性に必要なグランドクリアランスを保ちつつ、新設計のアルミ鍛造パーツも使ったリアサブフレームの形状によりシート高を従来モデルより11mm下げています。
また、アドベンチャーバイクにとって大切な航続距離。それを可能にするのが大きな燃料タンクです。新型では、燃料タンクを3ピース構成として、上部、左右に分けることで、上部は細身で幅が細く、下部に向かってボリュームがある「洋梨」形を採用。燃料搭載位置でもっともボリュームのある部分が、エンジン側部やステップ周りを転倒などから護るガードの役目も果たす形状とするなど、ダカールラリーで培った技術を取り入れます。さらに、下方に重みのある燃料を集中させることで、ライディングや取り回しにも貢献しています。実際、23リットルの燃料を満タンにさせた状態で、先代より取り回しは軽く感じます。
車体が傾いて旋回する際には進行方向の地面を広く照らすコーナリングライトが点灯
エンジン冷却水を冷やすラジエターは、1枚モノから左右分割式になりました。搭載角度を設けることで走行風による冷却効率も向上させ、また導風口と排出口の形状を最適化してライダーの足にラジエターの排熱風が当たらないようするなど工夫もされています。エンジンはオイル経路を刷新するなど幅を詰め、同時に軽量化も達成しています。
そのほか、7インチサイズのTFTカラーモニターの採用や、スマホとのコネクティビティはもちろん、多くの最新電子制御技術を盛り込む中で、ACC(アダプティブクルーズコントロール)が搭載されたことがニュースです。
これはボッシュ製ミリ波レーダーを搭載し、設定速度で走行中、前走車との車間距離を自動で調整し、加速と減速を行なうというもの。車間距離は5段階から速度に応じた設定ができるほか、設定速度からの減速、設定速度への再加速するその加減も、コンフォートとスポーツの2つのモードから選択が可能。スポーツモードを選択すれば、ある程度のカーブで設定速度を保ったままコーナリングをしてくれます。コンフォートでは車体の角度などをセンシングし、必要に応じて減速もしてくれます。
今回はテストコースと一般道を使った試乗が行なわれました。まずはACC体験です。30km/hから150km/hの間、2速から6速の間で設定が可能なACC。あいにくの雨の中、前走車に見立てたクルマと2台で一般道を模したテストコースに出ます。
身長183cmの筆者(松井勉)とKTM「スーパーアドベンチャーS」(2021年型)。テスト走行は激しい雨の中で行なわれた。シート高は849mmと869mmで調整可能
跨がると、細身に感じる燃料タンクやシート高の恩恵もあり、先代にあったマッシブ感が減っています。さすがに軽々とは言いませんが、バイクの重心が下がった印象で、サイドスタンド状態からスッと起きます(車体乾燥重量220kg)。
エンジンは低い回転からスムーズでトルクフル。振動も少なくどちらかと言うとジェントルな印象です。しかし、テストコースに向けアクセルを強めに開けた途端、パワフルでスムーズな加速を始めます。「コク、コク」とキマるクイックシフターを使っての変速が気持ち良く、目標の100km/hまでまさに瞬殺、さすが160馬力。
そこでクルーズコントロールであるACCの設定をします。その後、前走のドライバーから無線で「速度を落とします」との連絡。ブレーキランプが点灯し、70km/hほどまで減速。バイクもそれに合わせスムーズに減速します。その反応の速さとスムーズさに安心感と信頼感がわきます。
次いで「加速します」との連絡。減速時同様、加速し始めた途端、前車に追従します。コンフォートでこれだけの一体感がある制御、まるで見えないプロライダーがライディングをしているかのような走りなのです。
また試験的に、前車が追い越し車線に除けて前方がクリアになったとき、設定速度まで加速する所作も同様の気持ちよさ。制御に突発差、カクカク感がまったくありません。
ACC体験は専用のテストコースで行なわれた
テストコースから出て一般道も走行してきました。スムーズに動くサスペンションの恩恵で、乗り心地の良さとフラットな姿勢が印象的。ウエットコンディションでもタイヤの接地感がわかりやすいのです。ミタスというチェコのメーカーが作る「テラ・フォースR」というタイヤは、ミシュランやメッツラーなどが持つウエットでの“もっちり”したグリップ感こそないものの、全体としてはバランスがとれた印象です。
ツーリングペースで走った印象は、なるほど、前後の重量バランスを整え、フロントの安心感が増えています。また、カーブに入る時、燃料タンクの重さに起因するユラリ感は確かに少ないため、ロードがさらに得意になったイメージです。前後ブレーキの制動性、タッチにも全く突発的なところはなく、しっかりとバランスをとったチューニングがされた新型「1290スーパーアドベンチャーS」は、しっかりと良さが伝わってきました。
※ ※ ※
2021年型のKTM「1290スーパーアドベンチャーS」の価格(消費税10%込み)は239万円からとなっています。
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