アドベンチャーバイクでオフロードも得意!? KTM「890 ADVENTURE R」の魅力とは
バイクのニュース / 2021年6月19日 11時0分
オーストリアのバイクメーカー「KTM」が提唱する、もっともエンデューロに適したトラベルバイク。ミドルサイズセグメントの進化版「890アドベンチャーR」(2021年型)に試乗しました。
■KTMらしい本格トラベルエンデューロ、排気量チョイ上げでさらに進化
KTMのアドベンチャーシリーズは、その名もズバリ「アドベチャーツアラー(KTMではトラベルと表現している)」のセグメントに属するバイクです。トップレンジに「1290スーパーアドベンチャー」シリーズがあり、「890アドベンチャー」シリーズはそのミドルサイズセグメントのバイク、という印象をお持ちでしょう。それは正解であると同時に、「890アドベンチャー」を理解する上で認識の軌道修正が必要になります。なぜならば……
アドベンチャーバイクといえば、高速道路での快適性、ワインディングロードでもロードバイクにひけを取らないハンドリングを持ち、パワフルなエンジンと長めに取られたサスペンションストロークにより道を選ばず旅を楽しめるツアラー、というのが一般的認識です。その点において、ミドルサイズのKTMアドベンチャーもその通りなのですが、彼らが前作モデル「790 ADVENTURE」(2019年登場)で打ち出した言葉はこうでした。
「790アドベンチャー」には……
THE MOST OFFROAD CAPABLE TRAVEL BIKE.
よりオフロード性能を高めた「790アドベンチャーR」には……
THE MOST TRAVEL CAPABLE ENDURO BIKE.
……と、読んで字のごとくです。トラベルバイクとエンデューロバイクという表現の違いはあるものの、ここまでツッコんだ表現をしたアドベンチャーバイクは記憶にありません。一言で表現するなら、「790アドベンチャー」が辛口、「790アドベンチャーR」は辛口のホットバージョンという印象で、オフロードコースを全開で走れた「790アドベンチャーR」は、もう完璧なるオフ車でした。今回乗るのはその新型(2021年型)。排気量を上げ、辛さに磨きをかけたであろう「890アドベンチャーR」です。
「890 ADVENTURE」シリーズに搭載される排気量899ccの水冷並列2気筒DOHC4バルブエンジンは、前作モデル「790 ADVENTURE」シリーズからアップグレードされたもの
エンジンは、ネイキッドモデルの「790デューク」で新登場した、KTM初の直列2気筒エンジン「LC8c」(Liquid Cooling 8Valves Compact)の進化版です。小文字の「c」(=コンパクト)が示す通り、オイルパンの突出がなく、ギアボックススペースも単気筒エンジン並みにコンパクト。それだけに、クランクの回転振動を補正するバランサーと、クランクの回転偶力でエンジンが前に倒れるモーションを是正するためのバランサーがシリンダーヘッドに備わっています。つまり、それほど小型化を図ったということ。
「790アドベンチャー」の排気量は799ccでしたが、新作「890」では90cc拡大し、889ccとなりました。これはシリンダーボアを2.7mm、ストロークを3.1mm伸ばして達成したもので、圧縮比も12.7から13.5へと上がっています。
もちろんパワーとトルクもアップ。95HPから105HP、89N.mから100N.mと、目に見えて増えているのです。2年前「790アドベンチャー」に乗った時ですら、アドベンチャーバイクとしては軽い車体に決して剛力ではないものの「タタタタタ!」と軽快に回るエンジンの組合せ。重量級の1290系とは異なる超絶な走りを持っていました。ここも他のブランドが持っているミドルクラスとは異なる部分です。
しかし、新型「890アドベンチャーR」で走り始めてすぐに感じたのは乗りやすさ。一般道レベルの速度で移動する時、振動も少なく磨がかれたマイルドさ、という印象が先に立ちます。
身長183cmの筆者(松井勉)がシート高880mmのKTM「890 ADVENTURE R」(2021年型)にまたがった状態
前後に240mmのサスペンションストロークを持つため、シート高も相応に高く、ライダーは高いヒップポイントから操作をするような、リアルなオフ車感覚です。しかしその走りは足長系モデルなのに、前後にフワフワする緩さが無いのはもちろん、乗り心地が素晴らしく良いのです。
時間の関係でオフロードコース主体の試乗となりました。タイヤはメッツラーの「カルー3」というダート向けなので安心ですが、当日のコンディションは雨。あちこちにマッディスポットが点在し、直線には大きな水たまりがあり、避けては通れません。
まずはそろりとコースに流入します。舗装路で感じたようにマイルド感があり、低い回転でもしっかりトルクがあるので、こんなコンディションでも滑らず加速するのが得意です。恐くない。そこからアクセルを少し開けても「790アドベンチャーR」より加速感はあるものの、ジェントルな印象に乗りやすさを確かめられました。
短時間で信頼関係が醸成され、次第にアクセルを開けていきます。あるところからロケットのように加速が始まった「790アドベンチャーR」と比較すると、段付き感の少なくなり、感覚的に理解しやすい加速がパワーバンドまで続きます。トラクションコントロールやABSの介入度も判りやすい。かと言ってガツンとパワーやブレーキングをぶった切られない。これに気を良くしてさらに攻めてみます。
KTM「890 ADVENTURE R」(2021年型)に試乗する筆者(松井勉)
超絶な加速感はエンジンのトップエンドにちゃんと残っていました。後輪が前輪を追い越すかのような加速。もちろん、それはイメージであって直進性は悪くないし、ブレーキングの姿勢も安定しています。辛口のホットバージョンという印象はそのままながら、やっぱり進化している。感覚に優しいバイクにまとめ上げられています。
低重心設計の燃料タンクやライディングエリアをタイトにしたボディまわり。シートも細身でオフロードでの走りは強烈。でも、走りを楽しむためにエンジニアリングされています。なるほど、旅にもっとも機能的なエンデューロバイク、というコピーはその通り。短時間のテストでしたが、このバイクの魅力をしっかりと確認出来たのです。
※ ※ ※
2021年型のKTM「890 ADVENTURE R」の価格(消費税10%込み)は168万9000円です。
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