KTM「1290スーパーアドベンチャーR」 これはオフロードマニアが選ぶべきアドベンチャーバイクかも!?
バイクのニュース / 2021年7月3日 11時0分
オーストリアのバイクメーカー「KTM」が放つ大型アドベンチャーシリーズの最上級モデル「1290スーパーアドベンチャーR」に試乗しました。そのオフ車的ディテールは、まさにオフロードマニアにこそ選ばれそうな内容です。
■悪路を前に躊躇しない、ライダーの期待に応えるパッケージ
2021年、KTMはストリートバイク(公道走行可能モデル)の中でも力こぶの入ったアドベンチャーシリーズの最上級モデル「1290スーパーアドベンチャー」をフルモデルチェンジし、発売しました。環境規制ユーロ5への適合や、エンジン、フレームを新設計。最大排気量かつ様々な装備を持つだけに重量もシリーズではもっとも重たいものの、ライダーが意のままに操れるよう様々な手法で新たなパッケージとしたのです。
路面を問わず、何所までもツーリングが出来るよう仕立てたアドベンチャーツアラーは、いま人気のカテゴリーです。事実、KTMのストリートバイクのなかでも、ここに紹介する「1290スーパーアドベンチャーR」は、価格面でもダントツトップの259万円(消費税10%込み)です。兄弟モデルのミリ波レーダー搭載でアダプティブクルーズコントロールを装備した「1290スーパーアドベンチャーS」の価格を20万円上回ります。
そもそも「スーパーアドベンチャー」2台のキャラクターの違いは、Sモデルがフロント19インチ、リア17インチのキャストホイールを履き、前後サスペンションは電子制御となるWP製セミアクティブを採用し、200mmのストロークを確保。上級アドベンチャーツアラーとしてはコンベンショナルなポジションで、KTMらしいアジリティの高さ、ダートでも楽しめるハンドリングや運動性、そして快適性とラゲッジキャリーの拡張性が盛り込まれています。
対するRモデルは、Sモデルが持つ基本性能に加え、オフロード性能をさらに高めるために、フロント21インチ、リア18インチのスポークホイールを履き、サスペンションは電子制御ではなくフルアジャスタブルとし、ストロークは20mm延長した前後220mmを確保。大径化したタイヤとサスペンションにより、オフロードコンシャスなアドベンチャーツアラーに仕立てられています。しかも試乗車にはブリヂストン製の「AX41」というブロックタイヤを履き、さらにその部分を主張しているではないですか!
また、オフロードでライダーがスタンディングポジションで走行することを前提に、全高の低いスクリーンを採用するなど、アドベンチャーバイクカテゴリーにあって、オフ車的なディテールを持つのが特徴なのです。
KTM「1290 SUPER ADVENTURE R」(2021年型)にはフロント21インチ、リア18インチのチューブレスタイヤに対応したワイヤースポークホイールを装備
エンジンは、シリンダー挟み角が75度の水冷Vツインエンジン。160馬力、138N.mというパワーとトルクを生み出す排気量1301ccのユニットは、ケースの軽量化、潤滑経路の最適化などを行ない、細かく大きく進化しています。またステアリングヘッドを15mmライダーに寄せたフレームと、スイングアームを15mm伸ばすことで前輪荷重を増やし、ハンドリング面でもより攻めたモノとなっています。なにより、シート高を11mm下げられるよう配置を換えたサブフレームの存在も大きなポイントでしょう。
燃料タンクのデザインも一新。ダカールラリー用バイクのような低い位置にガソリンを積むようレイアウトされています。エアクリーナーエレメントの交換がわずか4本のボルトを取り外すだけで行なえることがプレスリリースに明記されているあたり、オフロード競技を知り尽くしたメーカーならでは。
「1290スーパーアドベンチャーR」のテストはオフロードコースに集約して行ないました。当日のコンディションは雨。水たまり、ぬかるみが多くあり、大型アドベンチャーバイクのテストには相応しくない状況です。
身長183cmの筆者(松井勉)がシート高880mmのKTM「スーパーアドベンチャーR」(2021年型)にまたがった状態。テスト走行は激しい雨の中で行なわれた
ライディングモードをオフロードにセットすると、最高出力は100馬力に制限され、アクセルレスポンスは穏やかになる反面、トラクションコントロールはオフロードでの一体感を高めるため、多少のスライド、ドリフト、前輪のリフトは許容するように制御されるとのこと。
おそるおそるドロの海へ走りだすと、そのエンジンサイズから想像するよりもはるかにマイルドなしつけになっていることに気が付きます。それでいて速度の乗りは速く、メーターの表示はあっという間に70km/hに到達。駆動力がちゃんと地面に伝わっています。タイヤはもちろん、エンジン特性からも生まれるもので、タイヤはドロの路面を嘘のようにしっかりと噛み、加速、減速します。
コーナリングではさすがにヌルっと来ますが、それでもフロントが一気にスリップダウンする恐怖はありません。それに気を良くして乗るほどにアクセルを開ける量が増え、ペースが上がります。なるほど、前後タイヤの外径がもたらす悪路走破性は高く、直線での安定性もなかなか。そこからカーブに向けて減速する時も、フロントのABSは最小の介入で最大の効果を出すのがわかります。リアブレーキはABSがオフになるので、踏み過ぎればあっけなくロックし、エンジンが停止してしまいますが、慣れるとそのコントロール幅もしっかりあり、ハーフロックやその回復のため緩める操作にも許容量があります。
KTM「1290 SUPER ADVENTURE R」(2021年型)に試乗する筆者(松井勉)
本来、広大な砂漠や大陸を貫くオフロードを駆け抜けるのがこのバイクの本分だと思います。しかし時に天候、場所によってはさらに厳しいコンディションもあるでしょう。KTM「1290スーパーアドベンチャーR」は、コンディションが悪くなるほど本領を発揮する、オフロードマニアが選ぶべきアドベンチャーバイク、そう言えるかもしれません。
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