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ベネリ「TNT249S」 250ccクラスにあって他とは異なるフィーリングを堪能できるネイキッドモデル

バイクのニュース / 2021年7月8日 11時0分

イタリア生まれの老舗バイクブランド「ベネリ」から、「TNT249S」が日本でも販売開始されました。どのようなバイクなのでしょうか。試乗しました。

■海外市場では多種多様なモデルを販売

 かつてはイタリアの名門と呼ばれ、1990年代後半の復活時には並列3気筒シリーズが世界中で注目を集めましたが、2005年に中国の銭江グループの一員になってからは、いまひとつ動向がわからないメーカー……誠に失礼ながら、日本では2021年から「PLOT(プロト)」が輸入販売を手がけるようになった「Benelli motorcycle(ベネリ・モーターサイクル)」(以下、ベネリ)に、私(筆者:中村友彦)はそんなイメージを抱いていました。ところが、今回の試乗前に情報収集をしてみたところ、ラインナップに驚きを感じることになりました。

 と言うのも、現在の同社のウェブサイトには20機種、日本市場に導入される排気量125ccと250ccモデルに加え、400cc単気筒車や、500ccから750ccの並列2気筒車、600cc並列4気筒車などがズラリと並び(ネイキッドだけではなく、アドベンチャーツアラーやクルーザー、スクーターも存在します)、それらの多くはすでに欧米で販売され、なかなかの好評価を獲得しているのです。

 もっとも、中国資本と言うと日本ではあまりよくないイメージを持つ人がいるかもしれません。ただし、1990年代以降の2輪業界を振り返って、数多くの欧州の古豪復活が失敗しているという事実を考えると、ベネリと銭江グループの関係はかなり上手くいっているのでしょう。

■こだわりを感じる360度クランク

 近年になって独創的なモデルを次々と発売しているベネリですが、TNTシリーズのデザインは、2000年代に発売を開始したストリートファイター「TnT 900」「TnT 1130」をルーツとしているようです。なお現時点での日本に導入されている「TNT」は250ccと125ccのみですが、海外では250ccと基本設計を共有する300cc、シリーズの長兄となる600cc並列4気筒車が販売されています。

ベネリ「TNT 249S」

 今回試乗する「TNT 249S」の最大の特徴は、400cc以上のミドルクラスを思わせる大柄な車格でしょう。その象徴と言えるのがタイヤサイズで、フロントに120/70ZR17、リアに160/60ZR17のタイヤを履き、204kgの車重や1410mmのホイールベースも、近年の250ccクラスの平均値をオーバーしています。

 また、エンジンの爆発タイミングを決定するクランクピンの位相角を、現代の250cc並列2気筒の定番になっている180度ではなく、昔ながらの360度としていることも「TNT 249S」の特徴のひとつですが、同社はこの位相角にこだわりがあるようで、500ccと750ccの並列2気筒でも360度クランクを採用しています。

■既存の250ccネイキッドとは異なる世界

「TNT 249S」を試乗するにあたって、当初の私が心配していたのは重さと非力さでした。並列2気筒エンジンを搭載するライバルモデルとパワーウェイトレシオを比較すると、カワサキ「Z250」が4.43(37ps/164kg)、ヤマハ「MT-25」が4.83(35ps/169kg)であるのに対して、「TNT249S」は6.8(30ps/204kg)です。この数字を見て運動性能や速さという面で、大きな期待を抱く人はいないでしょう。

排気量250ccの水冷並列2気筒DOHC4バルブエンジンを搭載

 ところが、実際の「TNT 249S」に非力な雰囲気はなかったのです。具体的な話をするなら、まず私が最も心配していたゼロ発進や低回転・低速走行はごく普通にこなせますし、スロットルレスポンスは全域で良好なので、市街地やタイトな峠道などで頻繁にギアチェンジを行う必要はありません。もちろん、加速力や最高速は前述のライバル車たちには及びませんが、100km/hプラスアルファの巡航は余裕でこなせるので、誰かと競ったりしない限り、日常的に使って不満を感じることはなさそうです。

 そういった扱いやすさは、おそらく、360度クランクのおかげでしょう。昨今ではクランク位相角によるエンジン特性の差異は、バランサーやインジェクションなどの設定でどうとでもなると言われているようですが、もし「TNT 249S」が180度クランクだったら、現状の特性は実現できなかったはずです。

 その事実を認識した私は、1960年代以前のホンダが並列2気筒車の「CB72」や「CB450」に、スポーツ指向の「タイプI」=180度クランクと、実用性重視の「タイプII」=360度クランクを設定していたことを思い出しました。

 さて、エンジンの話が長くなりましたが、車体は前述した数値から推察できるように、基本的には安定指向です。ただし、走行中に車体の重さをマイナス要素と感じる機会はほとんどなく、コーナリングは至ってスムーズですから、ライバル勢とは趣が異なる、1クラス、2クラス上の大らかな乗り味が楽しめると言うべきかもしれません。

ベネリ「TNT 249S」の価格(消費税10%込み)は63万6900円から

 そんな「TNT 249S」の気になる点を述べるとしたら、価格がライバル勢より高いこと……でしょうか。

 もっとも、既存の250ccネイキッドとは異なる世界が堪能できること、250ccクラスでは珍しいTFTメーターやフロントダブルディスク、左右非対称スイングアームなどを装備していることを考えると、63万6900円や64万7900円(特別色)という価格(消費税10%込み)は、むしろ安いのかも……? という気がします。

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