バイクのブレーキシステムが起こす重大なトラブル!ベーパーロック現象とは
バイクのニュース / 2021年7月11日 13時0分
長い下り坂などで、突然バイクのブレーキが効かなくなる「ベーパーロック現象」は、非常に危険な兆候です。一体、何が原因で起こるのでしょうか? ここでは、ベーパーロック現象の原因に加えて、ベーパーロックを起さないための注意点について詳報します。また、「下り坂でブレーキが効かなくなるのは「フェード現象」じゃないの? と思っている人もいるかもしれません。そこで、この似たようなふたつのブレーキトラブルの違いについて、一括して解説します。
■バイクのベーパーロック現象とは?
バイクのブレーキの効きが極端に悪化する「ベーパーロック(Vepor Lock)」は、摩擦熱になどによってブレーキフルードが配管内などで沸騰し、気泡が発生し配管が詰まり、ブレーキを作動させるための油圧が伝わらなくなることが原因で起こる、制動システムの根幹に関わるトラブルです。
現在、多くのバイクが採用する「油圧式ブレーキシステム」は、ブレーキレバーを握る、あるいはふっとベダルを踏む、ことでブレーキ系配管の中のフルードに圧力がかかり、その油圧力でキャリパーなどを作動させ、ブレーキローターに摩擦係数の高いブレーキパッドを押さえ付けてストッピングパワーを得るシステムが基本的な仕組みです。
ブレーキは作動のたびに発生する「熱」に変換・放出してストッピングパワーを得て、ブレーキの制動力を獲得していますが、利用頻度が過多になると熱への変換が間に合わず、熱が蓄積されていき、その加熱により圧力を伝えるためのブレーキフルードが沸点を越え、油圧経路の配管の中に気泡(隙間)ができてしまい、その部分が本来伝わるはずの圧力をクッションのように吸収してしまうのです。そして、キャリパーにあるピストンを押す力が足りず「ブレーキが効かない」現象が発生するのです。
長い降り坂などでブレーキを頻繁に利用すると起こりやすいトラブルで、「ブレーキが効かなくなる」という状況から、「フェード現象」と混同してしまいがちです。しかし、ふたつ症状の大きな違いはその原因にあり、ベーパーロック現象は「ブレーキフルード内の気泡」が原因です。いっぽう、フェード現象は「ブレーキパッド」が過加熱に晒されることでその制動機能が果たせなくなる現象です。
ブレーキが効かなくなる症状はバイクを運転するときには絶対避けたい状況です
フェード現象では、ブレーキを頻繁に利用するとブレーキパッド(摩擦材)が摩擦で高温化し、ガスを発生してブレーキローターとの間にガス膜を作ってしまい、ブレーキパッドが制動に必要な摩擦力を得られない場合や、パッド想定範囲の温度(耐熱温度)を超えてしまったときにも、同じように摩擦力を発揮できなくなるトラブルです。
どちらにせよ、ブレーキが効かなくなるという点では、バイクを運転するときに絶対に避けたい状態です。ベーパーロックを起こさないために注意すべきポイントに加えて、フェード現象についても触れておきますので、一緒にみていきましょう。
■ベーパーロック現象を防ぐための具体的な方法や注意点とは
ブレーキのベーパーロックやフェードを防ぐ最大のポイントは、端的に言って「過剰にブレーキを使わない」ことです。どちらも発生するための条件はブレーキの過剰使用に内在し、長い下り坂などではエンジンブレーキを利用するなどで、ブレーキの利用頻度を減らし、システムの加熱を防ぐことで回避できます。
また、バイク本体の日頃のメンテナンス上の注意点も大切です。ベーパーロックは「ブレーキフルード」が劣化していると、オイルに湿気(水分)が多く含まれ、沸点が低くなって発生しやすくなります。最低限の対策は、ブレーキフルードの定期的な交換実施に尽きます。
ブレーキフルードの交換時期は、「2年ごと」の交換をホンダは推奨しています
ブレーキフルードの交換時期の目安は、国産バイクメーカー大手のホンダでは「2年ごと」の交換を推奨しています。中古車などで前のオーナーがいつフルード交換したかわからないときには、早めの交換をお勧めするとともに、実際に交換する際にはブレーキのアップグレードを目論んで「沸点の高いブレーキフルードに換装する」という選択肢があることも頭に入れておきましょう。
ブレーキフルードには幾つか種類があり、アメリカの認定規格である「DOT(Department Of Transportation)」で示される数字によって、エンジンオイルのように外気温が-40度と100度のときの粘度の違いなどを基準にクラス分けされています。表示されている数字によって耐熱温度(沸点)の違いが明確で、「DOT 3規格」に該当する耐熱性能であれば、ドライ(新品に近い状態)で230度以上、ウェット(吸湿率3.7%の状態)で155度以上と規定されています。
ヤマループ ブレーキフルード(DOT4/BF-4)
この、DOT規格には主成分にも違いがあり、一般的な「DOT3/4/5.1」については「グリコール」で、「DOT 5」のみが「シリコン」という成分で構成されています。交換する際には混ざらないための注意が必要です。正しい制動性能を発揮するためにも「全量交換」を行うことがベストで、同じ主成分やグレードであっても、継ぎ足すだけでは古い方の性能劣化が影響し、新しいオイルの効果を駆逐するため、お勧めできません。
純正指定のフルードであれば、サービスマニュアルやマスターシリンダーの蓋に記載されている数値を確認して、表示されている規格範囲の製品を利用します。ただ、サーキット走行などの特殊な環境でバイクを使う際には、DOT基準や規格外でもメーカーの表示する性能や耐熱温度などを参考にして、バイクのブレーキ性能や環境に合わせ、適切なフルード選択を行うようにしてください。
フェード現象に防止にも、ブレーキの使い方以外に「ブレーキ周りの点検整備」は欠かせない事象です。ベーパーロック現象を防ぐためのブレーキフルードの定期交換だけでなく、ブレーキパッドの摩耗による性能劣化や、各部の損傷や動作不良などの異常がないかなどのチェック、ブレーキシステム全体の定期点検を行うことは、制動装置のトラブル対策として有効です。
※ ※ ※
ブレーキが効かなくなり、運転に関してもっとも危険な状況を生み出すのが、ベーパーロック現象です。祖に意味は、「Veper(蒸気)」によって「Lock(阻害)」されるという意味ですので、“ペーパー“ロックと誤認しているユーザがいるかもしれません。が、正しくは“ベーパー”ロックと表記します。
バイク大手のホンダではブレーキフルードの交換だけでなく、ブレーキフルードの経路となるマスターシリンダーやブレーキホースに関して、外観ではわかりにくい内部劣化もあるため「4年ごと」の交換を推奨しています。安全を考えブレーキシステムを正常に作動させるためにも、交換時期についてはしっかり把握しておくべきです。
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