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ライダーにとってはもはやバナナの皮トラップ! マンホールが道路の真ん中にある理由とは

バイクのニュース / 2021年9月5日 16時0分

バイクでの走行時、道路の真ん中に設置されたマンホールでスリップしそうになった経験がある方も多いかもしれません。では、なぜマンホールは道路の真ん中にあるのでしょうか。

■マンホールの蓋の下にあるものとは?

 道路上のマンホールは、ライダーにとって厄介な存在です。晴れている日であっても、マンホールの上を走りたくないと避けるライダーも多いのではないでしょうか。しかし、道路の真ん中などバイクが走るライン上に設置されている場合もあります。何か理由があるのでしょうか。

 その答えは、バイクが走るライン取りが、道路の下を通っている配管の位置と重なっているからです。

 道路の下には、雨水を流す排水管やガス管、上下水道や電気、電話線などが埋めてあります。これらの配管には、定期的なメンテナンスや配管の断線や詰まりを直すための点検口が必要で、その点検口の蓋になっているのがマンホールの蓋なのです。また、排水の流れを良くするために、高低差を付ける場所や配管の向きを変える場所にも設置されています。

 水を流す配管は、水が一定のスピードで流れることが求められます。理由は、流れが遅くなるところでは、ゴミや泥が溜まり、詰まりやすくなるからです。水の流れをつくるためには、高低差と傾斜がないといけません。そのため、一定の間隔で高低差を作り、水に流れをつくるためのマスが設置されると、そこがマンホールとなるのです。

 道路の下を通る配管は直線的に埋められており、ちょっとした蛇行や道幅の変化など、細かく道路の形に合わせてあるわけではありません。

ここで問題になるのが、道路のカーブや交差点です。特殊なパイプ以外は、詰まりにくくするため直線的にパイプを繋げています。配管の向きを変えるときは、カーブの手前で配管の向きを切り替えるマスが設置され、その上にマンホールが設置されます。

カーブの終わり辺りで道路の真ん中付近にあるマンホールはライダーにとって非常に厄介です

 そして向きを変えた配管は、カーブの終わり辺りで道路の真ん中付近を走るように、再度向きを変えるマスが設置されるのです。その場合カーブの入口と出口にマンホールができます。これが、ライダーにとって非常に厄介な位置にマンホールがある理由です。

 交差点は3本の配管を1本に合流させたり、配管の向きを変えたりとマンホールが設置されやすい場所です。もう少しマンホールの数を減らせと思うかもしれませんが、配管の向きが変わる所は詰まりやすくなる部分でもあるため、点検口がどうしても必要になります。

 片側2車線道路であれば、マンホールは片方の車線に集中していますが、1車線道路ではおよそ真ん中、もしくはやや左に寄っています。少々邪魔な位置に設置されていると思うでしょうが、公共インフラは私たちの生活に欠かせないものであり、これを無くすことはできません。

■マンホールはただの滑りやすい鉄の蓋ではない?

 昨今のマンホールの蓋はただの滑りやすい鉄の蓋というわけでなく、耐スリップ性が要求されています。濡れたアスファルトの滑りやすさを摩擦係数で表すと、約0.45~0.6μ(ミュー)。乾いたアスファルトが0.75~0.8μとされています。

濡れた古いマンホールの蓋は、凍り付いた道と変わらないくらい滑ります

 そして、濡れた古いマンホールの蓋の摩擦係数が0.2μ。この0.2μがどれくらい滑りやすいかというと、タイヤメーカー「ダンロップ」が公開している「摩擦係数」の数値によれば、氷結路が0.2~0.1μとされています。つまり、濡れた古いマンホールの蓋は、凍り付いた道と変わらないくらい滑るということです。

 その一方で、最近のスリップ防止デザインを施したマンホールの蓋は、濡れた状態であっても、摩擦係数0.45μ以上であることが求められています。

 例えば岐阜県多治見市の「下水道用鋳鉄製マンホールふた」の仕様書によれば、次世代型マンホールの蓋の耐スリップに関する規定値は、新品の状態で摩擦係数0.60μ以上、限界値が0.45μ以上と明記されています。

 設置後に表面が削れていき、摩擦係数が下がり、滑りやすくなるのは避けられません。しかし、それでも濡れたアスファルトと同程度の摩擦があるのは、ライダーとしてはありがたいでしょう。

 では、どうやって新しいマンホールの蓋であると判断するのでしょうか。真っ先に挙げられる判断基準は、デザインされた蓋であることです。ツーリング中に、塗装されたカラフルなマンホールの蓋を見たことはありませんか。特に観光地に多い傾向がありますが、新しいマンホールの蓋は、地域ごとに専用のデザインを施したものが多くあります。

 先ほどの多治見市のマンホールの蓋は、真ん中に市章が入り、多治見の美濃焼である陶磁器と市の花「キキョウ」がデザインされた専用品です。また、大阪府柏原市のマンホールの蓋には、市の特産品であるブドウの品種「デラウェア」がデザインされています。

埼玉県川越市のマンホール

 新しいマンホールには各地域の特産品や文化財などがデザインされていることが多いため、マンホールのデザインを眺めるだけで、地域で有名な物やイベント等が分かるかもしれません。

 しかし蓋の刻印が擦り切れていたり、へこんでいたりするマンホールの上を通るのはスリップの可能性が高く、避けたほうが良いでしょう。ライダーにとってスリップは、転倒事故につながる危険性が高いものです。

 マンホールの蓋が原因で起きる事故は、スリップ事故だけではありません。トラックや重機が頻繁に走る道路では、古いマンホールの蓋に亀裂が入り、人が転落した事例もあります。その他にも前を走る車がマンホールの上を通り、その時の衝撃で蓋が跳ね上がってしまい、後続車が蓋に激突してしまうなどの事故が起きています。こういった事故を起こさないように、新しいマンホールの蓋にはスリップ防止以外にも、安全対策が施されているのです。

日之出水道機器株式会社の次世代型高品位グラウンドマンホール「Σ-RV」

 マンホールの蓋を扱う日之出水道機器株式会社の、次世代型高品位グラウンドマンホール「Σ-RV」は、ガタツキ防止や食い込み防止、車やバイクが上を走った時の負荷を均一に受け止める構造を持たせたものとなっています。

 次世代型高品位グラウンドマンホール推進協会は、安全性能が不十分なマンホールの蓋が日本全国に300万基あるとしています。当初は、マンホールの蓋の耐用年数は30年とされていましたが、2003年(平成15年)から15年と短縮されたことから、今後は新しいマンホールの蓋に入れ替えが必要になるでしょう。もし全てのマンホールの蓋が次世代型になった時、ライダーにとってマンホールの蓋がトラップ扱いにならなくなるかもしれません。

※ ※ ※

 マンホールは地下を通っている配管の点検口や、向きを変えるための切り替え点となっています。ライダーにとっては危険なトラップになり得るマンホールは、私たちが生活する上で欠かせない役割を持っているのです。

 また、次世代型マンホールの蓋は、濡れたアスファルトと同じくらいの摩擦係数を持たせたモデルになっていることから、今後はさらに入れ替えが進むでしょう。
マンホールが、ライダーにとってトラップ扱いにならないその日を待つのも良いかもしれません。

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