世界最高峰の電動バイクレース『MotoE』最終戦 日本人唯一の参戦ライダー大久保選手は6位フィニッシュ!
バイクのニュース / 2021年9月20日 19時0分
電動バイクによるチャンピオンシップ『FIMエネルMotoEワールドカップ』の第6戦サンマリノの決勝レース2が2021年9月19日、イタリアのミサノ・ワールド・サーキット・マルコ・シモンチェリで行なわれました。2021年シーズン最終戦でジョルディ・トーレス選手がチャンピオンを獲得。2年連続でMotoEのタイトルの栄冠を手にしました。MotoEに参戦する唯一の日本人ライダー、大久保光選手は6位でフィニッシュしています。
■2021年のMotoE最終戦、大久保選手は6位、ランキング11位でシーズンを終えた
MotoGP第14戦サンマリノGPに併催される電動バイクの世界選手権『MotoE(モト・イー)』最終戦は、土曜日、日曜日各1レースの2レース開催となりました。2021年9月18日に行なわれた決勝レース1の結果により、チャンピオンシップのランキングトップは2020年MotoEチャンピオンのトーレス選手、8ポイント差のランキング2番手はドミニケ・エガーター選手。エガーター選手は今季、スーパースポーツ世界選手権(WSS)にも参戦しており、こちらのチャンピオンシップでもランキングトップにつけている実力者です。
ランキング3番手はアレッサンドロ・ザッコーネ選手でしたが、前日に行なわれた決勝レース1での転倒により負傷し、レースは欠場。このため、チャンピオン争いは事実上、トーレス選手とエガーター選手の一騎打ちとなりました。
決勝レース2は、トーレス選手がポールポジション、エガーター選手が4番グリッドからのスタート、大久保選手は4列目11番グリッドからのスタートとなりました。
8周のレースがスタートすると、トーレス選手は2番手に後退。しかし、1周目の12コーナーで早くもトップに浮上し、ファステストラップを更新するタイムを叩き出しながらレースをリードします。一方、エガーター選手は3番手につけ、3周目には2番手に浮上。周回を重ねるにつれ、トーレス選手とエガーター選手の2人が抜け出す展開となりました。
残り2周、エガーター選手がトーレス選手のすぐ背後に迫ります。ハードブレーキングを得意とするエガーター選手は何度もトーレス選手をブレーキングでかわそうとしますが、その度にラインが膨らみ、トーレス選手が立ち上がりで先行。MotoEバイクの車両重量は262kgあり、非常に繊細なブレーキングが求められるのです。
チャンピオンを獲得するためには、エガーター選手はトーレス選手より前でフィニッシュするしかありません。トーレス選手はエガーター選手が優勝しても、2位ならチャンピオン獲得、しかし3位ではタイトルを失います。電動バイクレースらしい“静か”でありながらスキール音が響く、壮絶なバトルが続きました。
トーレス選手(#40)とエガーター選手(#77)による一騎打ち
そして、最終ラップ。14コーナーでエガーター選手がトーレス選手のインでブレーキング。このとき、エガーター選手のラインはややワイドになり、バイクの後方がトーレス選手と接触しました。転倒したトーレス選手はすぐさまバイクを起こしレースに復帰しますが、エガーター選手ははるか前方に走り去っていました。
1番手でチェッカーを受けたのはエガーター選手でした。しかし、このアクシデントは審議の対象となり、レース後、エガーター選手にはライドスルー・ペナルティ(レース中にピットレーンを通過しなければならないペナルティ)が科され、これが“レース中に消化されなかった”として結果に38秒が加算されました。事実上のタイム加算ペナルティとなったのです。
この結果、トーレス選手が13位。エガーター選手は12位。2021年シーズンのMotoEチャンピオンは、7ポイント差でトーレス選手が獲得しました。
最終レースでは、優勝がマッテオ・フェラーリ選手、2位がマッティア・カサデイ選手、3位がミゲール・ポンス選手。大久保選手は6位でフィニッシュし、ランキングは11位で電動バイクレースMotoEの1年目のシーズンを終えました。
MotoEに参戦する唯一の日本人ライダー、大久保光選手(#78)
レース後、チームスタッフの元に戻って号泣していたトーレス選手ですが、結果が変わったことが伝えられると、歓喜の雄たけびを上げ、右手を突き上げました。お祝いに駆けつけた2020年のMotoGPチャンピオン、ジョアン・ミル選手(スズキ)とも強く抱き合ったトーレス選手。彼が流した涙は一転、喜びの涙になったのです。
チャンピオン会見の中で、トーレス選手はレースとアクシデントについて、次のように振り返っています。
「チャンピオン獲得のために、ドミ(ドミニケ・エガーター)が僕を抜き、レースで勝たないといけないのはわかっていた。でも、こういう状況でかわそうとすれば、つまりブレーキングを遅らせることになる。2、3度、あのように仕掛けるのは難しいと彼はわかっていたんだ。
最終ラップでは彼が全力でくることはわかっていた。でも、この状況では、うまくいかなかった。僕たちはラインを交錯させ、僕はコーナーに入っていけなかった。すぐにバイクを起こそうとしたけれど、彼と接触した。僕は地面に転がり、転倒してしまったんだ。
でもまたバイクを走らせて、チェッカーを受けようとしたよ。1、2ポイントがタイトルに必要になるかもしれないからね。そして、(チームメイトの)ジャスパー(・イウェマ)が僕を(先に行かせるために)待ってくれているのがわかったんだ。彼にはお礼を言いたい」
最終レースで優勝したフェラーリ選手(中央)、2位のカサデイ選手(左)、3位のポンス選手(右)
「結果を見て、泣き出してしまった。落ち込んで、負け犬にでもなったような気分だった。タイトルを失ってしまった……ってね。泣きながらピットに戻ったら、みんなが“大丈夫だよ、心配しないで。どうなるかわからないよ”って言ってくれたんだ。そして、結果が変わったのがわかった。うれし涙になったんだ」
また、レース後にはエガーター選手がトーレス選手の元にやって来て、アクシデントについて「何度も謝ってくれた」とも。トーレス選手のチャンピオンが決定したあと、2人はお互いを称え合うようにしっかりとハグを交わしていました。
MotoE参戦2年目のトーレス選手にとって、今季は昨年に比べ、どんなシーズンだったのでしょうか。さらに激しさを増していった今季のMotoE。タイトル争いの難しさについて会見で質問すると、「最後のレースでは、考えを変えたんだ」と言います。今季、コントロールしていた部分を、最終戦では開放して戦ったのだそうです。
「もっとアグレッシブに、さらに集中しようとしたんだ。雑念を追いだした。自分の頭の中で何度もイメージトレーニングをしたよ。落ち着いて、この2レースでは速く走ろうと努めていた。今季、サーキットによっては僕は速くなったけれど、アグレッシブなオーバーテイクなどはしていなかった。でも、この2レースでは全力を尽くした」
MotoEの最終戦は、劇的な幕切れとなりました。3年目を迎えたシーズンで、チャンピオンシップは次第に成熟し、その分バトルも激しくなっていったシーズンでした。そんなシーズンを象徴するかのような最終戦だったのではないでしょうか。
■MotoEとは……
MotoEは、2019年にスタートした電動バイクによるチャンピオンシップです。MotoGPのヨーロッパ開催グランプリのうち数戦に併催されており、2021年シーズンは開幕戦スペインを含む6戦7レース(最終戦は2レース開催)が予定されています。すべてのMotoEライダーが走らせるマシンはイタリアの電動バイクメーカー『Energica Motor Company(エネルジカ・モーターカンパニー)』の電動レーサー『Ego Corsa(エゴ・コルサ)』。タイヤはミシュランです。2021年のMotoEには11チーム18名のライダーが参戦しており、16歳の若手ライダーから元MotoGPライダーまで、様々な経歴を持つライダーが参戦。日本人初のMotoEライダーとなる大久保光選手がエントリーしていることでも注目を集めています。
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