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廃れゆく原付一種、50ccバイクはどこへゆく?

バイクのニュース / 2021年12月30日 9時0分

かつてはバイクの販売台数のほとんどを占めていたこともある原付一種ですが、近年ではもはや絶滅危惧種となりつつあります。もはや役目を終えたとも言える原付一種は、今後どうなっていくのでしょうか。

■排ガス規制強化で見直しが図られる原付一種

 これまで「原付」と言えば、基本的に原付一種のバイクを指していました。免許区分としての原付二種は1965年から存在していましたが、モデル自体がそれほど多くなかったということもあり、原付一種の影に隠れているという状況が長く続いていました。

販売数を減らし続けている原付一種販売数を減らし続けている原付一種

 実際に、第2次バイクブームの真っ只中と言える1985年には、208万7226台ものバイクが販売されたうち、およそ8割にあたる164万6115台の原付一種が販売された一方、原付二種は13万574台にとどまっています。

 しかし、原付一種は1980年代をピークに、その後年々販売台数が減少し、2019年には13万2066台にまで落ち込んでいます。バイクの販売台数自体も36万2304台に減少していますが、全体に占める割合は3割弱と、かつての勢いは見られません。

 2010年時点と比較しても、原付一種はおよそ半分にまで販売台数を減らしています。その一方で、原付一種以外のバイクに関しては、2010年以降はゆるやかに販売台数を伸ばしています。

■なぜ、原付一種はこれほどまでに販売台数を減らしてしまったのか?

 最も大きな理由のひとつは、年々厳格化される環境規制への対応が困難であるという点です。

販売台数や車種の減少は、2016年から適用が開始した「平成28年排ガス規制」が大きなターニングポイントとなっています販売台数や車種の減少は、2016年から適用が開始した「平成28年排ガス規制」が大きなターニングポイントとなっています

 バイクの歴史は環境規制への対応の歴史と言いかえることができます。国や地域ごとにその内容や実施時期は多少異なりますが、日本や欧米などの主要地域で販売されるバイクにはおおむね同等の環境規制対応が求められます。

 原付一種に関しては、2016年から適用が開始した「平成28年排ガス規制」が大きなターニングポイントとなっています。

 この規制では、排気ガスに含まれる二酸化炭素や窒素化合物などの有害物質の量をそれまでの半分程度にすることが求められました。ただ、厳しいながらも、バイクメーカー各社は、エンジンの燃焼効率を高めたり触媒による浄化をより強化したりすることでなんとか対応を図ってきました。

国際的な排ガス基準に対して、原付一種や400ccの中型バイクなど、日本の免許区分特有のバイクはその存在意義自体が議論されています国際的な排ガス基準に対して、原付一種や400ccの中型バイクなど、日本の免許区分特有のバイクはその存在意義自体が議論されています

 一方、平成28年排ガス規制の重要な目的のひとつに、国際的な基準、特に欧州で採用されている「EURO4」と足並みを揃えることがありました。国際基準と協調することで、海外仕様のバイクをほとんどそのまま国内で販売することができたり、そもそも国内仕様と海外仕様を区別する必要がなく開発できるようになったりするなどのメリットがありますが、原付一種や400ccの中型バイクなど、日本の免許区分特有のバイクはその存在意義自体が議論されてしまうようになりました。

 技術的には、原付一種でも排ガス規制をクリアすることは難しくないと言われています。しかし、多額のコストをかけて規制をクリアしても、販売市場が日本国内に限られており、さらに国内市場が縮小している中では、メーカー各社にとってそれほどメリットがないというのが現実です。

タイで製造されているホンダの原付二種レジャーバイク「CT125・ハンターカブ」タイで製造されているホンダの原付二種レジャーバイク「CT125・ハンターカブ」

 一方、国際基準と協調したことで、世界最大のバイク市場である東南アジアで主流となっている125ccクラスのバイクも日本へ導入されるようになりました。日本では原付二種に該当する125ccクラスのバイクは、国内外のバイクメーカー各社の主力製品であり、商品力の高い魅力的なものが多いことから、ここ数年原付二種を中心とした第3次バイクブームが巻き起こりつつあります。

 ユーザーにとっても、30km/h制限や二段階右折の義務がある原付一種よりも、実用的な原付二種のほうが好まれているという事情もあるようです。

 このように、日本国内のバイク市場が縮小し、なおかつ国際基準と足並みをそろえるという背景がある中で、「ガラパゴス」とも言える原付一種はその役割を問われるようなっています。

■原付一種は電動化の時代に再注目される?

 ただ、電動化の時代にあって、原付一種の免許が見直されつつあるという指摘もあります。現行法では、原付一種免許を必要とするのは、排気量50cc以下のバイク、そして定格出力0.6kW以下の電動バイクです

近距離移動手段として注目されている電動バイクや電動キックボード近距離移動手段として注目されている電動バイクや電動キックボード

 近年、都市部や郊外での近距離移動手段として注目されている電動バイクや電動キックボードなどは、現行法上では原付一種免許を必要とするものがほとんどです。そのため、実証実験が行われている一部のサービスなどを除き、基本的にはナンバープレートやウィンカーや前照灯などの保安部品の装着、そして走行時のヘルメットの装着などが義務付けられています。

 しかし、実際には自転車と同様の外観の電動バイクも多いことから、原付一種免許が必要かつ道路交通法などを遵守する必要があるという認識が薄いユーザーも少なくありません。

 そうした現状をうけて、各都道府県警では電動バイクや電動キックボードへの取締りを強化する方針を打ち出しています。そのため、これらの次世代型電動モビリティを活用するための最初の一歩として、原付免許を取得を検討する若年層などは少なくないようです。

 ただ、それであっても、1960年代からほとんど変化のない原付一種という免許区分に対する見直しを求める声は根強く、次世代型電動モビリティを既存の枠組みに当てはめるのではなく、新たな免許制度を構築する方向で、現在検討が進められています。

※ ※ ※

 近い将来、原付一種という免許区分は見直しが図られることが濃厚です。その際にポイントとなるのは「原付二種」と「電動バイク(モビリティ)」とどのように関連付け、あるいはどのように区別するのかという点です。

 長く日本人の生活を支えてきた原付一種のバイクたちが、今後どのようになっていくのかに注目が集まります。

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