いつの間にか減った750cc…なぜ減ったのか?
バイクのニュース / 2022年1月20日 9時0分
かつては大型バイクの代名詞的存在であった750ccのバイクですが、近年では希少な存在となりつつあります。「ナナハン」の名で親しまれたこれらのバイクは、なぜ消えてしまったのでしょうか。
■消えつつある「ナナハン」、現在では3車種に
「ナナハン」の名で親しまれてきた750ccクラスの排気量を持つ大型バイクには、「名車」と言われるモデルが数多く生まれ、ライダーたちのあこがれの存在となってきました。
1969年に登場した「ドリーム CB750FOUR」
例えば、1969年に登場した「ドリーム CB750FOUR」は、750ccバイクの代表的存在として、現在でも多くのファンを持つ名車として知られています。また、1980年代のいわゆる第一次バイクブームでは、ホンダに加えて、ヤマハ、カワサキ、スズキからも多くの750ccクラスのモデルが発売され、ブームのけん引役となりました。
そんな「ナナハン」ですが、2021年現在新車で購入可能なモデルはほとんどありません。ホンダを例にとると、750ccクラスと呼べるのは「X-ADV」と「NC750X」となっています。その他の国産2輪メーカーを見ても、スズキ「GSX-S750」程度しかありません。
1100ccと500ccの2つの大型モデルをラインナップする「レブル」
しかし、大型バイクそのものが減少しているわけではありません。750ccクラスのラインナップがほとんどなくなったホンダですが、1000ccオーバーのリッタークラスはもちろん、800ccクラスや600ccクラスのモデルは現在でも充実しています。また、2021年の登場以来ヒットを飛ばし続けている「レブル」も、1100ccと500ccの2つの大型モデルをラインナップしています。
つまり、750ccという排気量のバイクが減少し、その前後の排気量のものへと置き換わっていると言えます。近年のそうしたトレンドの背景には、いったいどのような事情があるのでしょうか?
■「ナナハン」の誕生、そして衰退の歴史
歴史をたどれば、国産2輪メーカーではじめて750ccクラスのバイクを世に送り出したのはホンダです。そのモデルは、上述したドリームCB750 FOURであり、その後、日本国内におけるナナハンブームの基礎を築くことになるのですが、もともとは北米市場を意識して開発されたものでした。
北米市場を意識して開発されたドリームCB750 FOUR
当時、すでに多くのバイクを北米市場へと輸出していたホンダですが、そのほとんどが「スーパーカブ」であり、大排気量のバイクはトライアンフなどの英国車が中心でした。
日本では「オートバイの王様」というキャッチコピーであこがれの存在となっていた「CB450」も、一定の販売台数は記録したものの、余裕のある走りを求める傾向にある北米市場では、決定的な評判を得ることはできなかったと言われています。
そこで、より大型のエンジンを搭載したドリームCB750 FOURが登場することになります。元々定評のあったホンダのCBシリーズに、余裕のあるエンジンが搭載されたことに加え、当時の円安を追い風に爆発的な売れ行きを見せ、一気に北米の大型バイク市場をけん引していきました。
「ナナハン」という呼び名は、当時のホンダの社内用語に由来していると言われている
そんなドリームCB750 FOURは、日本国内でも人気を博すようになります。ちなみに、「ナナハン」という呼び名は、当時のホンダの社内用語に由来していると言われています。
しかし、1960年代後半から1970年代には、バイクに起因する重大事故が問題となりつつあった時でもあり、進む大排気量によってさらなる重大事故の増加が不安視されていました。
そうした背景もあり、国産2輪メーカー各社は自主規制をおこない、国内で販売されるモデルに関しては750ccクラスを上限とすることにしました。その結果、1980年代には、一部の輸入車や逆輸入車をのぞき、大型バイクと言えば750ccという図式が形成されるようになります。
1990年以降、国産2輪メーカー各社は海外で販売していたリッタークラスのモデルへと注力
1990年以降この自主規制が解消されたことで、国産2輪メーカー各社は海外で販売していたリッタークラスのモデルへと注力することになります。
2010年頃には、いわゆる「リターンライダー」が増え、経済的な余裕のあるライダーを中心に、リッタークラスのバイクが多く売れるようになった一方で、750ccクラスはその存在意義を失いつつあることで徐々にラインナップから外れるようになります。ただ、海外市場も含めれば、400cc以上1000cc未満のバイクの需要は少なくないため、海外需要を意識した600ccや800ccといったモデルへと変化していったと言えます。
つまり、かつて一世を風靡した「ナナハン」は、その源流こそ北米市場を意識したものですが、その後は自主規制の影響を受けた日本独自の規格という側面が強く、国内市場が落ち着いている昨今では、むしろ海外需要の高いそれ以外の排気量のモデルへと、各2輪メーカーの志向が変化しているものと考えられます。
※ ※ ※
いまでは珍しくなりつつある「ナナハン」ですが、余裕がありながらも扱いやすい排気量であることから、日本の道路事情に最も適していると評されることがあります。
もちろん、実用面では600ccや800ccのバイクでも大きな問題はないと思われますが、やはり750ccという排気量に特別感を覚えるのは、第一次バイクブーム時代に「ナナハン」が残した強烈な印象が色濃く残っているからなのかもしれません。
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