【現地レポート】マン島TTレース2022 異例の開催日順延となった最終日「BMW M 1000 RR」のヒックマン選手がシニアTTを征す
バイクのニュース / 2022年6月20日 12時20分
2022年に3年ぶりの開催となった「マン島TTレース(Isle of Man TT Races)」。最終レース日は異例の順延となり、「スーパーバイクTT」のレース2となる「シニアTT」が6月11日(土)に開催されました。ライムグリーンの「BMW M 1000 RR」を駆るヒックマン選手が優勝し、今季4勝目を上げました。
■マン島TTレース閉幕、3年ぶり開催の2022年はいろいろ変わった
2022年に3年ぶりの開催となった「マン島TTレース(Isle of Man TT Races)」ですが、最終レースは本来、2週間の会期の中で最後の金曜日に行なわれるところ、今年は度重なる赤旗中断や天候の影響によって金曜日の実施がかなわず、翌6月11日(土)に延期して開催されることになりました。
2022年のマン島TTレースでハットトリックを達成しているピーター・ヒックマン選手。マシンは「BMW M 1000 RR」。ライムグリーンのカラーリングは、アメリカのTV番組でも有名な「ガス・モンキー・ガレージ」がスポンサードしているため。最終日の「シニアTT」で今季4勝目を挙げた(写真/小林ゆき)
これにより、木曜日開催なら他の延期されたレースとの兼ね合いで本来6周のところ4周で開催すると発表されていた「シニアTT」クラスですが、再び周回数はもとの6周に戻されました。
現在のシニアTTクラスとは、事実上「スーパーバイクTT」のレース2となりますが、予選を通過しなければならないだけでなく、2週間の会期を経てライダーもバイクも無事でなければスタートラインに付けません。さらには、疲労も溜まっているなかシニアTTは1周60キロのコースを6周、合計360キロもの長大な距離を走るレースであり、そこで完走するだけでも称賛に値するレースなのです。
栄光のシニアTTのスタートリストに載ったのは51台でした。プログラムに掲載されたエントリーリストの64台から13台減りました。
本来の最終日より1日延期したことで金曜日の晩に島を離れる人も多く、マーシャル(コース管理係)の確保が難しくなるなどの理由で開催が危ぶまれていました。当日は無事に天候は晴れとなりましたが、風が非常に強く、とくに木々のないマウンテン・エリアは走るのが難しいコンディションとなりました。
2022年のマン島TTレースでは、名物のスカウトの少年少女が運営していた手書きスコアボードが廃止され、仮設のビッグスクリーンでインターネット生配信の映像が流された。その向こう側はダグラス市営墓地(写真/小林ゆき)
注目は、プラクティスで連日トップタイムを叩き出し、レースではスーパーバイクTTレース1、スーパーストックTT、スーパーツインTTでハットトリックを達成したピーター・ヒックマン選手(Gas Monkey Garage by FHO Racing)です。シニアTTもスーパーバイクTTと同じBMW Motorrad「M 1000 RR」で出場。大きなウイングを装備し、最高速が出る約1マイル(約1,6キロ)の直線路があるサルビストレートなど直線加速で有利とされますが、ヒックマン選手はスーパーツインTTでも優勝しており(マシンはイタリアのPaton「S1-R」)、ライダーとしての実力もあって快進撃を続けていることがわかります。
レースは終始、ヒックマン選手がトップに立ち、2位のカワサキ「Ninja ZX-10RR」に乗るディーン・ハリソン選手(DAO Racing Kawasaki)との差を周回ごとに広げました。2周目、カモメに衝突したハリソン選手のマシンはフロントのスクリーンが大きく大破しましたが2番手を守ります。
シニアTTで2位となったディーン・ハリソン選手は、2周目でカモメにヒット。フロントスクリーンと左側カウルに大きな穴が開いた状態で走りきった。カモメの羽を手にとる息子さん(写真/小林ゆき)
2周目で6番手に上がっていたヤマハ「YZF-R1M」に乗るジェームズ・ヒリアー選手(RICH Energy OMG Racing)は、給油場所を間違えて通り過ぎるというアクシデントで時間をロスしましたが、順位に影響は出ませんでした。
1周目を19番手に付けた「BMW S 1000 RR」を駆るギャリー・ジョンソン選手(Specsavers/North Lincolnshire M/Cs)は3周を走り終えたところでピットイン。風が強くフロントのウイリー・コントロールがうまく制御できなくなったということで、リタイヤを判断したそうです。
ベテランのマイケル・ルター選手は、最初の給油とタイヤ交換の作業で組み付けミスが出て時間をロス。その影響かどうかはわかりませんが、3周を終えピットでリタイヤしました。
給油やタイヤ交換のためピットに向かう#1ジョン・マクギネス選手と#4イアン・ハッチンソン選手。現在は一時停止しなくてもよくなったが、ピットレーンの速度は時速60キロに制限されている。このレースでマクギネス選手は速度違反で30秒加算のペナルティを受けた(写真/小林ゆき)
そのほかにもリタイヤするライダーが相次ぎました。シニアTTはグランドスタンド(スタート&ゴール地点)に戻ってきてリタイヤする選手が多く、それだけ過酷なレースであるとともに、自分の判断でマシンや体調によってリタイヤを選択する選手が多いということがわかります。
現役最多勝利を誇るベテラン、ジョン・マクギネス選手は、ピットロードの速度違反で30秒加算のペナルティとなりましたが、コンスタントにタイムを出しながら周回を重ね、9位でフィニッシュしました。
レースは結局、ヒックマン選手が今季4勝目を挙げ、強さを見せつけました。続いてハリソン選手、3位にはホンダ「CBR1000RR-R」に乗る地元マン島のコナー・カミンズ選手(Milenco by Padgett’s Motorcycles)が入り、3年ぶりに開催されたTTレースを締めくくりました。
完走は出走50台(スタートリスト51台)中、30台でした。
優勝したピーター・ヒックマン選手(Gas Monkey Garage by FHO Racing)の左にスポンサー「Gas Monkey Garage」のリチャード氏、右に「FHO RACING」のオーナーであるフェイ・ホー氏(写真/小林ゆき)
筆者(小林ゆき)的に、優勝した「FHO Racing」と2位の「DAO Racing Kawasaki」それぞれのチームオーナーが女性であるというのも、新しい時代を感じさせる出来事でした。
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