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アジアンラリー初挑戦の2輪系ジャーナリスト それが4輪しかも助手席って!? 【HILUX車両解説編】

バイクのニュース / 2023年2月23日 11時0分

主に2輪メディアでライダーやジャーナリストとして活躍中の松井勉さんが、2022年にアジア最大のラリーイベント『Asia Cross Country Rally』(通称:アジアンラリー)に初参加しました。それが2輪ではなく4輪で、しかも助手席に!? そんなお話【HILUX車両解説編】です。

■スゴイぞハイラックス! TRDで仕上げられたラリー仕様!!

 2022年11月、私(筆者:松井勉)はFIA公認クロスカントリーラリー『Asia Cross Country Rally(アジアクロスカントリーラリー、通称:アジアンラリー)』(以下、AXCR)に「WURTH TRD HILUX Tras 135」のナビゲーター(コ・ドライバー)として参加をしました。2輪ジャーナリストから見た4輪の世界、参加車両であるハイラックスについてQ&A形式でお伝えします。

「WURTH TRD HILUX MSB Tras 135」のトヨタハイラックスをベースにしたクロスカントリーラリー車両(写真/青山義明)「WURTH TRD HILUX MSB Tras 135」のトヨタハイラックスをベースにしたクロスカントリーラリー車両(写真/青山義明)

Q.AXCRを走ったハイラックスは、街を走っているハイラックスと何が違うの?

A.クロスカントリーラリーに必要なタフさ、安全性を高めた競技車両です。

 ピックアップトラックとして伝統のあるハイラックスは、以前は国内でも2WDと4WDがあり、業務用からプライベートカーとしてのグレード展開も多かった機種です。現在はパートタイム4WDの駆動系を持つ、最大積載量500kgの4ドアピックアップをラインナップ。アウトドアトランスポーターとして人気のクルマです。

 エンジンは2.4リッターターボディーゼルを搭載。悪路走破性の高いクロスカントリービークルでも、このクルマを株式会社トヨタカスタマイジング&ディベロップメントがAXCRに向け、競技用として必要な改造を施したのが、「WURTH TRD HILUX MSB Tras135」のクルマです。

 安全装備として、横転、側面衝突などの時、キャビン部分を護るロールケージ、競技用のバケットシート、6点式シートベルト、消火装置、電源のキルスイッチなどを装着。前席2座はあるものの、後席は取り外され、ロールバーがその空間を斜めに横切っています。シート座面があった部分にラリー中必要な工具、パーツを収納するボックスを設置。泥などにハマった時、タイヤの下に敷くスタックボード2枚がリアウインドウ下に装着されています。

Q.チューニングってしてあるの?

A.駆動系チューニング、足まわりはスゴイです。

クロスカントリーラリー用に特殊なチューニングが施された「WURTH TRD HILUX MSB Tras 135」のトヨタハイラックス(写真/青山義明)クロスカントリーラリー用に特殊なチューニングが施された「WURTH TRD HILUX MSB Tras 135」のトヨタハイラックス(写真/青山義明)

 エンジンは大型ターボユニットへの変更やECUのチューニングなどで、パワー、トルクともに大幅に増強。ノーマル車のスペックで言うと、最大トルク数値は50%アップ。加速は凄かったです。

 また、サスペンションは前後ともモータースポーツの知見を投入して同社が減衰圧、バネレートなどを設定、開発した足まわりになっています。もちろん、オフロードでの走破性を高めるため、車高も高めてあります。

 ホイールはTRDオリジナルで、タイヤはファルケンのワイルドピーク。235/80R17という大径細身なタイヤを装着。これもタイ人ワークスドライバー達の意見を取り入れ、泥濘路での走破性を優先したとのこと。大型マッドガードもラリー車らしい装備です。

 また、エンジン、駆動系が走行中に路面と接触してダメージを負わないように、アンダーガードも装着されています。

足まわりはアジアンラリー用にチューニング(写真/青山義明)足まわりはアジアンラリー用にチューニング(写真/青山義明)

 ほかにも、トランスミッションのシフトスケジュールは、クロスカントリーラリーで走破するダート路でのドライバビリティーを重視したシフトプログラムに設定変更されていて、まるでクラッチレスのMTミッションのような一体感を助手席でも味わえました。

Q.AXCRならではの装備ってありますか?

A.泥沼でのスタックを想定した装備がありました。

 AXCRは、本来であれば雨期の熱帯雨林を走破します。車体が路外に外れたり、泥にスタックしたときに使用するための電動ウインチも準備されています。

後部に突き出た四角いパイプ、これがウインチを差し込むためのもの。フロントにも同じサイズの角パイプが装備されている(写真/青山義明)後部に突き出た四角いパイプ、これがウインチを差し込むためのもの。フロントにも同じサイズの角パイプが装備されている(写真/青山義明)

 牽引フックや牽引ロープも積載しているのですが、引っ張ってくれる救護車が居るとは限りませんし、レース中には自力で対処する必要があります。そのため電動ウインチを荷台に搭載しています。

 通常、車体に固定された状態で装備されますが、このラリーでは車体の前後どちらでもウインチを活用できるよう、トレーラーヒッチを差し込む角パイプを車体前後に装着し、そこにウインチ本体を差し込み、電源ソケットを差し込めば、1台のウインチを前後で即使えるよう造られています。

フロントにもウインチを差し込むための後部と同サイズの角パイプが装備されている(写真/青山義明)フロントにもウインチを差し込むための後部と同サイズの角パイプが装備されている(写真/青山義明)

 もちろん、ウインチだけではなく、ウインチのロープを伸ばし、立木などをアンカーにして引っ張るわけですが、そのアンカーに巻き付ける太いベルトも必須。これはバンコクでの準備段階に工具ショップで購入。実際お世話になりました。泥などを掻き出すためのスコップも、荷台にラッシングベルトで着脱しやすいよう配置されています。

Q.ボディまわりはノーマルですか?

A.サステイナブルなコンポイジットパーツを使っています。これは「WURTH TRD HILUX MSB Tras 135」の大きな特徴です。

ボンネットフードを裏から見た写真。乾燥させた麻の繊維を使うので色は枯れ草色。編み目が強度を増すために使われている部分(写真/青山義明)ボンネットフードを裏から見た写真。乾燥させた麻の繊維を使うので色は枯れ草色。編み目が強度を増すために使われている部分(写真/青山義明)

 再生可能な天然素材を用いたコンポジット材をボンネットフード、フェンダーなどに使っています。これはドライバーであり、カーボンパーツのスペシャリストであるTras代表の新田さんが取り組む複合素材のひとつであり、カーボンのような成型の自由度で作れるなど、メリットがあるのです。

 それは麻の繊維を使ったコンポジット材で、マテリアルの製造段階からCO2排出量を大幅に抑えられるほか、廃棄処分する際にも再生可能である点で、環境面にも高い意識が必須となっているモータースポーツ界でも注目されています。

フェンダー、バンバー部分も新しいコンポジットで製作されている(写真/青山義明)フェンダー、バンバー部分も新しいコンポジットで製作されている(写真/青山義明)

 この素材を使ったボンネットフードはとても軽くてビックリします。強度を増すために葉の葉脈のようなリブを入れ、繊維強化プラスティック製品ですが、泥、雨、ルートの横から生える木々などがぶち当たる等々、過酷な環境のAXCRを見事にノントラブルで完走しています。

Q.実際の走りはどうなの?

A.シロートが助手席に乗っていても解る、スゴイ完成度に驚きです。

タイからカンボジアへ、6日間のラリーイベントをノントラブルで完走した「WURTH TRD HILUX MSB Tras 135」のハイラックスタイからカンボジアへ、6日間のラリーイベントをノントラブルで完走した「WURTH TRD HILUX MSB Tras 135」のハイラックス

 助手席インプレを紹介します。まずその完成度の高さから、乗っていても安心感に包まれます。これはAXCRのような長距離、長期間を走破するクロスカントリーラリーではとても重要なことです。

 なかでも走破性を高めるために設定されたサスペンションが良い。乗り心地が良いのです。ギャップが多く、深い路面を想定しているだけに、もっとハードでガチガチな足まわりを想像していましたが、一般道に出たとき、その乗り心地の良さ、サスペンションのビギニングからの動きの良さに驚きました。

 ストロークが長いため、減速時や旋回中はロールやピッチングもしますが、その動くスピードも適切で恐くない。その分、しっかりタイヤが路面を捉えるような印象です。

 トランスミッションは変則プログラムを変更して、スピード競技で走る時のドライバーとの一体感を作り込んでいます。マップを書き換え、ダイレクト感がマシマシでした。トルコンATの6速ミッションですが、変速時もマニュアル車のような印象です。

 ノーマルよりも変速ショックは出ますが、その分、助手席でも解るダイレクトな感覚は、加速・減速時の姿勢変化を作りやすそうな印象です。じつはATミッションだと駆動力が途切れにくく、難所でもスタックをし難いのです。

制作中のAXCR用ハイラックス。ボディを外しラダーフレームの状態にして必要な部分を製作(写真/青山義明)制作中のAXCR用ハイラックス。ボディを外しラダーフレームの状態にして必要な部分を製作(写真/青山義明)

 車両製作は、まさにレースカー製作のプロ集団が手がけたもの。AXCRという自分にとって未知の体験へと足を踏み入れるのに頼もしい次第です。あとは新田さんと力を合わせて走るだけ。

 そんな思い出は、また紹介します!

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